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6.302025
映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」から日本の神話と黄泉の国について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ34】

映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」から日本の神話と黄泉の国について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ34】
- 映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」の映画概要とあらすじについて
- 妻を黄泉の国から迎えにいく物語は、古くは古事記のイザナギとイザナミの物語
- 黄泉の国とはどこにあるのでしょうか
- 映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」を取り巻く多様な登場人物ついてみてみよう
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」の映画概要とあらすじについて
映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」は、「三丁目の夕日」作品で知られる西岸良平による日本の漫画作品です。本作品は第38回日本漫画家協会賞大賞を受賞し、山崎貴監督により、2017年12月に実写映画化されました。山崎貴監督は、以前にも西岸良平氏の作品を映画化し、『ALWAYS 三丁目の夕日』で日本アカデミー賞の監督賞を受賞しています。
主人公の鎌倉市在住のミステリー作家、一色正和(いっしき まさかず)に堺雅人、そして年若い妻、一色亜紀子(いっしき あきこ)を演じるのは高畑充希、安藤サクラ、田中泯、中村珠緒、薬師丸ひろ子、堤真一など実力派俳優が脇を固めています。
魔物、妖怪、幽霊など、人ならざるものと人間が共存し共に生きる街、鎌倉に居を構えるミステリー作家の一色正和は、年若い妻亜紀子と結婚し、夫婦仲良好で新婚生活を楽しく過ごしています。河童が家の前を通り過ぎるなど、摩訶不思議な生活に最初は戸惑う亜紀子でしたが、徐々に鎌倉での新生活に慣れていきます。正和は鎌倉警察署の心霊課と呼ばれる魔物がらみの事件を取り扱う部署の事件の調査に協力もしています。ストーリーの前半は鎌倉での新生活を中心に進んでいきますが、劇中後半亜紀子が不慮の事故で亜紀子は亡くなってしまい、黄泉の国に行くことになります。正和は妻亜紀子の居ない生活に耐えられず、黄泉の国に亜紀子を迎えに行きます。丑の刻に江ノ電の一車両が現世から黄泉行きとなっており、江ノ電に乗り黄泉の国に行き時代を超えた因縁と戦い、亜紀子を無事救出し、鎌倉で再び二人で暮らし始めます。
本作品はファンタジー作品で、コメディーの要素を多く、とてもほのぼのとして明るい映画です。鎌倉の一色家の家具や調度品、正和の電車コレクションなどの美術も素晴らしく、美術作品の質の高さにも驚かされます。黄泉の国に江ノ電で向かうシーンは、奇怪な岩の上を江ノ電が走り、独特な景観の黄泉に着きます。まだ誰も観たことのない黄泉です。インタビュー記事で奇岩が並ぶ光景は中国の武陵源、温泉街のような古い建物が立ち並ぶ様子は鳳凰古城を参考にしているとありました。実際監督は足を運んで景観を眺めたそうです。本作品は「夫が亡き妻を黄泉の国から取り戻す」物語でもあり、古事記の神話を題材にしている部分もあります。そのためでしょうか、常に死と隣り合わせでありながら、死を扱う悲壮感や苦しみなどより、魔物や幽霊、妖怪など、多様な登場人物が出てきますが、どこか懐かしく温かく、今現在の生きるスピードより間合いが遅い大らかな世界観で、安心してみることができます。何度も観たくなる映画でした。
妻を黄泉の国から迎えにいく物語は、古くは古事記のイザナギとイザナミの物語
本作品の後半部分は不慮の事故で死んでしまった妻を取り戻しに、夫が黄泉の国に妻を迎えに行きます。このストーリーは、日本の最も古い神話である古事記に、同様の物語があります。
※注1 古事記とは
『古事記』とは和銅五年(712年)にできあがった現存最古の歴史書であり、上中下の三巻からなっています。その序によれば、和銅5年に太安万侶が編纂し、元明天皇に献上されたことで成立しました。内容は天地のはじまりから推古天皇の記事です。『古事記』で記されている歴史とはあくまで天皇を中心としたものです。特に同時期にできあがった『日本書紀』が多くの異伝を含んで記されているのに対して、『古事記』では個々の神話や歌謡が一貫した文脈をなすよう配列されています。(出所)國學院大學 古典文化学事業HP
※注2 夫が妻を黄泉の国から迎えにいく、古事記のイザナギとイザナミの物語の詳細とは
天地開闢(てんちかいびゃく)の時代に国生みを行った夫婦神の二人、イザナキと、その妻イザナミの間から八つの島が生まれ、日本が誕生したとされます。
イザナミは火の神であるカグツチを生んだために死んでしまい、黄泉の国(根の国、死者の国)へ去ってしまいます。イザナミを愛しく思うイザナキはカグツチを殺し、イザナミを追って黄泉の国を訪れ、もう一度この世に戻ってくれるよう、イザナミに懇願します。
それに対して、イザナミはこう答えました。
「私はすでに黄泉の国の食物を口にしてしまったので、もとには戻れないのです。でも、愛しいあなたのために黄泉の国の神に相談してみるので、しばらく待ってください。その間は私の姿を決して覗き見しないでほしいのです」。
決して覗かないと約束したイザナキですが、あまりに話し合いが長いので、つい覗き見してしまいます。すると、そこには死者の形相をした恐ろしいイザナミがおり、衝撃を受けたイザナキは恐ろしさでイザナミを置いて逃げだします。怒ったイザナミが追いかけてきますが、黄泉の国とこの世との境界である黄泉平坂(よもつひらさか)までやって来ると、千人がかりでやっと動かせるような大きな岩でふさぎ、無事現世まで逃げ切りました。(島根観光 古事記の神話HPからそのまま抜粋)
黄泉の国とはどこにあるのでしょうか
黄泉の国は、古事記の神話に登場する死者の国で、その入り口は出雲の西部とされています。また、黄泉の国と現世の境目として黄泉比良坂が挙げられます。黄泉比良坂は松江市東出雲町にあります。
『出雲国風土記』によると、黄泉の国の入り口は出雲の西部とされています。一説には島根半島の西部の猪ノ目洞窟(出雲市猪目町)がそれであるといわれています。古事記・日本書紀と『出雲国風土記』とではこのように黄泉の国の入り口が正反対ということになります。(出所 島根県観光HP)
島根県の出雲大社も大変有名な神社です。全国の神々は旧暦10月11日から17日まで7日間、出雲の地で神事(幽業、かみごと)、すなわち人には予めそれとは知ることのできない人生諸般の事などを神議り(かむはかり)にかけて決められるといわれています。
そのため、出雲では旧暦10月は神在月と呼ばれていますが、その他の地域では神様がみな出雲に出払って留守にしているため、「神無月」と呼ばれています。
映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」を取り巻く多様な登場人物ついてみてみよう
鎌倉ものがたりには魔物、妖怪、幽霊など、人ならざるものが人間と共に共存しています。正和行きつけの居酒屋では、女将が商売のため、お客に魔物も呼び込んでいるというシーンがありました。またそれ以外にも、貧乏神、死神なども登場します。無邪気で優しい亜紀子がみんなに嫌われる貧乏神に朝ごはんを用意するシーンがあります。他者を知りたい気持ちが強い亜紀子は貧乏神に偏見を持たず心を通わせていきます。また死者を黄泉に連れていく死神も、死者の心に寄り添う、憎めない人物として描かれています。ファンタジー映画ではありますが、二元論で語られる世界観ではなく、混沌とした光も影も生も死もある世界の中で、みんながそれぞれの存在を認め共存している社会が描かれています。もともと神話の要素が強い映画ではありますが、自分以外の異質な存在を排除せず共存する、見ないふりをせず、気が付くけどそっとしておく、そんなどこか懐かしさと優しさを感じる映画です。
私も鎌倉に住んでみたくなりました。
以前、映画、熊本県阿蘇地方が舞台となっている「黄泉がえり」の記事を記載しました。良ければご覧ください。
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