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11.102025
映画「ミステリと言う勿れ」から代襲相続と停止条件付遺贈について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ38】

映画「ミステリと言う勿れ」から代襲相続と停止条件付遺言について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ38】
- 映画「ミステリと言う勿れ」の映画概要とあらすじについて
- 映画の中の4人の相続人、代襲相続についてみてみよう
- 「お題を解いたら相続できる」停止条件付遺贈について考えてみよう
- 血は水より濃いのでしょうか
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
映画「ミステリと言う勿れ」の映画概要とあらすじについて
映画「ミステリと言う勿れ」は、2023年に田村由美さんの漫画作品が映画化された作品です。小学館の月刊フラワーズで現在も掲載されています。発行部数は2023年9月時点で1,800万部を突破しています。2021年に第67回小学館漫画賞一般向け部門を受賞しています。
2022年1月期にフジテレビ系「月9」枠にて菅田将暉主演でテレビドラマ化され、2023年9月15日に上記テレビドラマのキャスト、制作陣による映画版が公開されました。
「ミステリと言う勿れ」は、天然パーマがトレードマークで友達も彼女もいない、カレーをこよなく愛する大学生の主人公・久能整(菅田将暉)が抜群の洞察力と、独自の価値観に基づき、様々な事件を解決していく物語です。主人公の大学生・久能整と共に、大隣署の風呂光聖子巡査(伊藤沙莉)、池本優人巡査(尾上松也)、青砥成昭警部(筒井道隆)、謎の成年犬童我路(永山瑛太)などがドラマ版では登場します。
今回の舞台は広島、通称広島編の物語です。久能整は市内で狩集汐路と知り合い、汐路の祖父・狩集幸長の遺産相続会議に無理やり出席させられ遺言を聞きます。狩集家は昔から遺産を当主となる1人にのみ相続するのですが、実子4人はすでに亡くなっており、孫の代にあたる狩集汐路、狩集理紀之助、波々壁新音、赤峰ゆらの4人から選ばれることになります。昔から相続の際に死人が出るといわれており、それらは事故や病気であると言われているが汐路は警察の捜査不備を疑っていました。久能は狩集家に泊まりこむことになり、遺言の「それぞれの蔵において あるべきものをあるべき所へ 過不足なくせよ」という言葉や不審な出来事そして「狩田という麻農家に雇われた鬼と二人の従者がその家の若妻に懸想し一家を殺して狩集家を乗っ取ったがその際に家主夫婦の幼い一人娘を取り逃がしてしまった」という伝説に出会い、汐路の父親たち4兄弟の自動車転落事故死の真相に近づいていきます。(Wikipediaからそのまま抜粋)
本作品の魅力は久能整の数々の名言、「僕は常々思っているんですが。。」で始まる人や世の中を独自の目線で分析し、考え、発する言葉です。またこの言葉が犯人や関係者に深く寄り添うことにもつながり、事件を解決するだけでなく、ある種の人間関係、その人の凝り固まったしまった心をときほぐしていくヒューマンドラマでもあります。菅田将暉がはまり役で、漫画の原作者、田村由美さんのインタビューでも、菅田将暉さんの誠実な解釈と演技を絶賛されていました。舞台や、小物にまつわるセットなど現場の熱い姿勢に田村由美さんも信頼をおきリスペクトしている印象を受けました。漫画の映像化がとてもうまくいった作品だと推察されます。
地方の名家の遺産相続の話と言えば、横溝正史の「犬神家の一族」を連想する人もいるかもしれません。実際劇中久能整が思わず「犬神家」とつぶやきます。物語は江戸時代までさかのぼり、先祖の行った行為が現在まで尾を引くという、負の継承が物語後半のテーマです。豪華な俳優たちに、舞台セットも素晴らしく、見ごたえのあるエンターテインメント作品となっています。
映画の中の4人の相続人、代襲相続についてみてみよう
映画の中で、弁護士が自筆証書遺言を読み上げるシーンがあります。その中で、「祖父狩集幸長の実子4人が既に亡くなり、その配偶者は相続人とならないため、孫4名が相続人の資格がある」というくだりがあります。本来であれば祖父→実子→孫という順番で相続が行われ資産が継承されますが、実子が亡くなり、祖父→孫への相続が行われることを「代襲相続」と言います。
■代襲相続とは
代襲相続とは、相続人となるはずであった人が相続開始以前に死亡や欠格事由に該当、廃除などにより相続権を失った場合に、被相続人の直系卑属(子や孫)や傍系卑属(甥や姪)が代わりに相続する制度です。
代襲相続人になれるのは、被相続人の直系の卑属(子や孫)と傍系卑属の甥や姪に限られています。直系卑属の場合であれば代襲は無限に続けられますが、兄弟姉妹の場合はその子(甥・姪)までしか代襲が認められていません。
※代襲相続を規定している、民法の条文は以下となります。
887条2項→孫が代襲相続
889条2項→甥・姪が代襲相続
代襲相続は直系卑属に相続権が継承されていきますので、二世帯同居で夫の両親の介護を妻が行い世話をしていたとしても、実子の配偶者は相続権がありません。相続では直系の血縁が何より重要視されています。
「お題を解いたら相続できる」停止条件付遺贈について考えてみよう
劇中、遺言の中で相続人の4人は、それぞれに蔵の鍵を渡されます。そして、「それぞれの蔵において あるべきものをあるべき所へ過不足なくせよ」というお題が与えられます。
そして、このお題を解いたただ一人に狩集家の全財産を相続させるとしています。
このような、相続するために、ある特定の条件が課される遺言のことを、停止条件付遺贈と言います。
■停止条件付遺言
停止条件付遺言とは、遺言者の死亡後に特定の条件が成就した場合に効力が発生する遺言です。たとえば、「孫が結婚したら土地を遺贈する」などの遺言が該当します。
停止条件付遺言の効力について、民法985条2項では次のように規定されています。
- 遺言に停止条件を付した場合、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は条件が成就した時からその効力を生ずる。
遺言は被相続人が自分の財産をどのように配分するか個人の裁量で決めることができます。
また参考までに、負担付遺贈あについてもみてみましょう。
■負担付遺贈
負担付遺贈とは、遺言者が遺贈を受ける人(受遺者)に財産を与える代わりに、一定の義務を負わせる遺言です。遺言者の一方的な意思表示によって行うもので、受遺者との合意は必要ありません。
負担付遺贈の例としては、次のようなものがあります。
- 子どもに不動産を遺贈する代わりに、妻を扶養してもらう
- 障害がある次男の養育を長男にしてもらう代わりに、長男に財産を遺贈する
- 長男に預貯金を遺贈するが、その条件として、長男は遺言者の死亡後、遺言者の愛犬の世話をする
負担付遺贈を受けた受遺者は、遺贈された財産の価格を超えない限度で負担した義務を果たせばよいとされています。
停止付条件遺贈と負担付遺贈の違いは、停止付条件遺贈が特定の条件が成就しなければ遺贈されませんが、負担付遺贈は遺贈と共に遺贈されるための条件を請け負うことになります。
血は水より濃いのでしょうか
本作品は、江戸時代にさかのぼり、自分たちの先祖が犯した犯罪に代々怯えながら、原初の先祖の容姿の面影を残す子孫を殺し続け罪を何世代にわたって隠ぺいしてきたことが最終的にわかります。血縁の意味、深さ、社会的な意味合いについて考えさせられる一面もあります。
「血は水より濃い」という慣用句があります。「血は水よりも濃い」は、同じ血を分けた血縁は他人よりも強い絆で結ばれており、いざというときに頼りになることを意味する慣用句です。また、人間の性質は環境よりも遺伝によって決まることが大きいということ、窮地におちいったときに頼りになるのは、他人よりも血をわけた肉親であることを意味することもあります。実際、最近では遺伝を論じた書籍も多いです。
他にも類似語として「血は争えない」などがあり、親しい間柄なのに他人行儀なことを「水くさい」と言います。
現在は家族が小規模化し、単独世帯が増えています。血縁、地縁、社縁などの共同体が希薄化し、家族が前提で成り立っている数々の仕組みを変えざるを得ない状況です。「血は水より濃い」という言葉もいずれ使われなくなる日がやってくるかもしれません。
しかし、現状、人が亡くなってからの死後事務や相続には、血縁が前提条件となっているものが多々あります。しばらくはまだ「血は水より濃い」のかもしれません。
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