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映画「エンディングノート」から「自分の人生のしまい方」と「大事にしたいもの」について考えてみよう。【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ⑤】

映画「エンディングノート」から「自分の人生のしまい方」と「大事にしたいもの」について考えてみよう。【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ⑤】

 

  • 「エンディングノート」の映画概要とあらすじについて
  • 宗派が異なる場合でも、お墓に埋葬できるのでしょうか
  • 「エンディングノート」は実際に後を託す人に引き継がれてこそ効果があります。
  • 「エンディングノート」には法の効力はありませんので注意が必要です

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

「エンディングノート」の映画概要とあらすじについて

 

「エンディングノート」は2011年制作の映画です。監督は砂田麻美さん、制作・プロデューサーは先月映画「怪物」がカンヌ国際映画祭で「クィア・パルム賞」を受賞した是枝裕和さんです。砂田麻美監督の父親砂田知昭氏が69歳でステージ4の胃がんと診断され、余命告知を受け、熱血昭和の営業マンとして猛烈に仕事に打ち込んできた仕事のスキル「段取り力」でご自身のエンディングノート作りを行い、自身の終わりに向け入念な準備を行います。その様子を次女の砂田麻美さんがビデオ撮影されており、父親の死後、ドキュメンタリー映画としてまとめられました。葬儀場の下見に予約と実際の終活の段取りを整えていき、体調が徐々に悪化していく緊張感の中、家族とのふれあいで気持ちが安らぎ、見送る家族自身も父親の最後に向け覚悟を整えていきます。客観的にみるとシリアスな状況ですが、主人公の父親の前向きな明るさ、ユーモアやウイットに富む発言、砂田麻美監督の明るいナレーション、斬新な構成でぐんぐんと周りを引き込んでいきます。終わりを迎えるシーンは、観ている側も辛いですが、主人公の父親を一緒に見送る気持ちになります。

私の感想としては「エンディングノート」という客観的なツールを使うことで、自分の「死」という大きな出来事を少しずつ整理し、実際の終活の段取りだけでなく、自分の人生を棚卸し、自分にとって大事なものが明らかになっていき、受入れ難きを受け入れていく過程を描いていると感じました。

 

 

宗教が異なるお墓に埋葬できるのでしょうか

 

主人公が5月末に余命宣告を受け、11月に東京四ツ谷にある「カトリック麹町聖イグナチオ教会」の神父に会いにいきます。そこでガンで余命宣告をされたこと、自分はカトリック信徒ではないが、この教会で葬儀を行いたいことを相談します。仏教徒だった父親と同じお墓に入りたいそうですが葬儀は教会で行いたいという希望がありました。最終的に主人公はカトリック教徒に改宗し、亡くなる直前に砂田麻美監督から洗礼を受け「パウロ」という名が与えられます。亡くなった後のお墓に関する描写はありませんでしたが、異なる宗教、宗派であっても墓地に埋葬できるかどうかに関しては、墓地、埋葬等に関する法律で以下のように定められています。

 

第十三条 墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。

 

昭和35年に厚生省公衆衛生局長あて内閣法制局第一部長が回答した内容が右記です。「宗教団体がその経営者である場合に、その経営する墓地に、他の宗教団体の信者が、埋葬又は埋蔵を求めたときに、依頼者が他の宗教団体の信者であることのみを理由としてこの求めを拒むことは、「正当の理由」によるものとはとうてい認められないであろう。」

しかし注意点としては埋葬又は埋蔵の施行に関する典礼の方式は経営者である宗教団体のやり方ですることに理があると述べています。

宗教・宗派が異なるお墓にスムーズに埋葬を進めるためには、事前に経営する宗教団体に確認した方が良いでしょう。

 

 

「エンディングノート」は実際に後を託す人に引き継がれてこそ効果があります。

 

明るく前向きに生きてきた主人公の体調に急変が訪れるシーンは、臨場感もあり観ている側も辛いです。あんなに元気に大きな声を出していたのに、声が徐々に小さくなり、意志の疎通ができなくなってきます。その際に、長男が非常に冷静に主人公の父親に対して、エンディングノートの内容を詳細に確認します。退職した会社への伝達方法、訃報を知らせる先、お香典の有無など、観ている側としては「そこまでするか」と思ったシーンもありましたが、息子としては、父親の思いを確実に実現するため、意思の継承を徹底します。そして父親のエンディングノートは長男に引き継がれ、家族にエンディングノートの内容と父親の思いが伝わります。

エンディングノートは、後を託す人に引き継がれ、継承されて初めて効果があります。せっかくエンディングノートを書いても、書いてあることを家族の誰も知らず、誰にもみつからず、誰にも内容を知られなかったから、ご本人の思いや気持ちの整理には役立ったかもしれませんが、残された家族には、故人の思いを知ることができず、また実際の亡くなった後のたくさんの実務も自己判断で進めなければいけず負担が重たくなるでしょう。

エンディングノートを書く場合には、必ずエンディングノートを書いてあることを家族に知らせ、保管場所についても信頼できる人に置き場所を伝え、必ず見つけてもらいましょう。

 

 

エンディングノートには法の効力はありませんので注意が必要です

 

本映画の主人公が、財産に関する希望もエンディングノートには書かれていました。大きな財産金額ではないので、主人公の妻に渡したい、また妻の人生もまだまだ長いので、子供たちも妻(子供たちの母親)の面倒をみて欲しいというお願いの文章が劇の中でナレーションとして流れていました。

実際の相続の場面では、まず、最初に確認する事は、被相続人(お亡くなりになった人)の遺言書の有無です。相続の効果としては遺言書の内容が被相続人の意思表示として最も尊重され、遺言書がなかった場合は、相続人全員で話し合い相続内容を明記し、相続人全員の署名捺印した遺産分割協議書が必要となります。

エンディングノートは、自分の希望を書き、それを家族に伝える事ができますが、しかしそれはあくまで希望でお願いです。法的な効力はありません。色んな事情や歴史を抱えたご家族もたくさんあるでしょう。性善説に基づいた被相続人の希望を、法定相続人が正しく継承してくれれば問題ありませんが、そういった継承が難しい、実行が明らかでない場合は、遺言書を書くことをお勧めします。遺言には自筆証書遺言と公正証書遺言のおよそ2種類があります。遺言書に関する記事もありますので、よろしければ参考にしてください。

 

本映画の主人公の強靭な精神力と見事な終活の段取りには頭が下がります。そして深い感動を覚えました。家族が主人公を支え、また主人公が家族を支え、家族の絆、孫たちの誕生と成長という新たな生命の始まりへの感動と憧れ。主人公の娘である砂田麻美監督が「死ぬってどういうこと、どんな感じ?」と聞きますが、主人公の答えは「それはちょっと言えない。」と答えます。それは私たちが自分の死の直前まできっとわからないことなのでしょう。

 

 

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