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【2021年度の葬祭扶助費が初の100億円超】お葬式、親族が施行拒むケース増加 ~読売新聞の記事から考えてみよう【気になる記事ブログ22】

【2021年度の葬祭扶助費が初の100億円超】お葬式、親族が施行拒むケース増加 ~読売新聞の記事から考えてみよう【気になる記事ブログ22】

 

「葬祭扶助費」という言葉をご存じでしょうか。これは生活保護の扶助の一つです。

以前、「無縁遺骨」、全国に6万柱 引き取り手ない人の葬祭費、自治体圧迫

引き取り手のない死者、3年半で10万6千人

両記事で無縁遺骨、引き取り手のない死者が増えていることについて書きました。

血縁、地縁など地域共同体のつながりが弱まり、同時に家族の形が大きく変化する昨今、死後の手続きを、家族や親族に任せることができず、自治体が対応せざるを得ないケースが増えてきています。今回、生活保護の「葬祭扶助費」にフォーカスを当てながら、この記事について考えてみたいと思います。

 

  • 記事の概要をみてみよう
  • 葬祭扶助費を知っていますか
  • 葬祭扶助費受給のためには、必要な要件があります
  • 死後の手続きを心配せず、安心して一人で旅立てるために

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

記事の概要についてみてみよう

 

生活保護制度の保護の種類の一つに「葬祭扶助」という保護の制度があります。厚生労働省によると、2021年度の葬祭扶助は、統計を始めてから初めて100億円を超えたそうです。葬祭扶助費は事前申請が前提で、支給されるためには、いくつか要件があります。

特に指摘されているのが、身寄りのない高齢者が増加したこと、また親族であっても葬儀を行うことを疎遠などが理由で拒否され、自治体が代わりに葬儀を行うケースが増えてきています。「家族や親族が葬祭を行う」という価値観が近年の急速な家族形態の変化もあり、葬儀を家族や親族に任せるやり方が破綻しつつあり、公的な仕組みを作る必要性を指摘しています。

2021年度の葬祭扶助の年間申請は4万8748件でした。葬祭扶助の支給額は市区町村により異なりますが、大体21万前後となっています。

(出所)厚生労働省 被保護者調査

(出所)2023(令和5)年4月1日施行 生活保護実施要領等

 

 

葬祭扶助費を知っていますか

 

生活保護制度は、生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、併せてその自立を助長する制度です。

保護の種類は、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助及び葬祭扶助の8種類があります。

葬祭扶助は、生活保護の一つです。また生活保護法18条に規定されています。

2021年度の日本の生活保護費の総額は3兆5285億円でした。生活保護費は国が3/4、地方が1/4の負担となります。そのため、国の負担額はおよそ2兆6464億円になります。葬祭扶助費の100億円は確かに大きな金額ですが、生活保護費全体でみると0.0038%となります。

(出所)厚生労働省令和3年度予算案の概要

(出所)社会・援護局関係主管課長会議資料 令和5年3月

 

葬祭扶助費受給のためには、必要な要件があります

 

葬祭扶助は、生活保護法18条に詳細が規定されています。以下18条の条文となります。

(葬祭扶助)

  • 第十八条 葬祭扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
  • 一 検案
  • 二 死体の運搬
  • 三 火葬又は埋葬
  • 四 納骨その他葬祭のために必要なもの
  • 2 左に掲げる場合において、その葬祭を行う者があるときは、その者に対して、前項各号の葬祭扶助を行うことができる。
  • 一 被保護者が死亡した場合において、その者の葬祭を行う扶養義務者がないとき。
  • 二 死者に対しその葬祭を行う扶養義務者がない場合において、その遺留した金品で、葬祭を行うに必要な費用を満たすことのできないとき。

■葬祭扶助受給要件

  • 故人の葬儀を行う人(故人ではありません)が、生活に困窮しており、葬儀を執り行うだけの財産がない人
  • 亡くなった人が生活保護を受給しており、扶養義務者(親、子、兄弟、3親等内の親族)などが居ない身寄りのない人で、葬儀を行うお金を持たずに亡くなった場合、もしくは親族が居ても拒まれ、家族や親族に代わり、葬儀を執り行った第三者
  • 身寄りのいない、生活保護を受給していない人が亡くなり、その人の遺留金だけで葬祭費用が支払えなかったとき、葬儀を行った第三者

亡くなった人が生活保護受給者であっても、葬儀を執り行う親族家族(扶養義務者)に、葬儀を行うだけの資金があった場合は、葬祭扶助の対象とはなりません。葬儀を執り行う側に葬儀を行うだけの財産がないことが条件となっています。しかし、故人が被保護者であってもなくても、家族親族(扶養義務者)ではない第三者、自治体や葬儀社が代わりに葬儀を執り行った場合は、葬祭扶助を申請することができます。

鹿児島県姶良市の「身寄りがない方への支援の在り方ガイドライン」が葬祭扶助の考え方がわかりやすくまとめられていますので、図を一部添付します。

(出所)鹿児島県姶良市の「身寄りがない方への支援の在り方ガイドライン」

 

 

死後の手続きを心配せず、安心して一人で旅立てるために

 

日本の世帯構造は今までは「夫婦と未婚の子供」という世帯が多く、長い間標準世帯と考えられてきました。しかし少子高齢化、未婚化により、日本の世帯構造は大きく変化し、単独世帯の増加が著しく、2040年には単独世帯が、日本の世帯構造の主流になると予測されています。このように社会構造が変化していく中で、元々の世帯構造の人数も血縁者も少なく、このような責任と負担が重い、死後の事務を委任できる、自分より若い血縁者を見つけるのは、非常に困難な時代です。また長寿化により、良好な人間関係を長期間維持し続けられるかもわかりません。これからは家族や親族だけに頼らず、公的な誰もが使用できるサービスが求められる時代です。家族が居てもいなくても、安心して旅立てる世の中であれば、老後の不安の一つが解消されるのではないでしょうか。

 

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