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映画「市子」から無国籍問題と結婚後300日問題について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ⑱】

映画「市子」から無国籍問題と結婚後300日問題について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ⑱】

 

  • 「市子」の映画概要とあらすじについて
  • 無国籍問題とはなんでしょうか
  • 離婚後300日問題とはなんでしょうか
  • 令和6年4月1日から嫡出推定規定の見直しされ、女性の再婚禁止期間の廃止されます

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

「市子」の映画概要とあらすじについて

 

「市子」は、2023年12月8日に公開された日本映画です。主演は杉咲花。原作は、監督の戸田彬弘が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品でもあり、サンモールスタジオ選定賞2015では最優秀脚本賞を受賞した「川辺市⼦のために」。先日の第47回日本アカデミー賞で杉咲花が優秀主演女優賞、第78回毎日映画コンクールでは女優主演賞、杉咲花の母親役で出演した中村ゆりが第37回高崎映画祭で最優秀助演俳優賞を受賞しています。

あらすじは、杉咲花演じる「市子」が恋人の長谷川義則に3年間の同棲生活を経てプロポーズされた翌日、白骨死体が発見されたというニュースがテレビから流れる中、姿を消します。長谷川義則が刑事と共に、消えた市子を探します。しかし捜査の途中で、刑事から「川辺市子」が世の中に存在しないという衝撃の事実を告げられます。数少ない写真、手掛かりから「市子」の知人、友人、そして最終的には母親にいきつき、市子の壮絶な人生が明らかになっていきます。離婚後300日問題のため、母親は出生届を出せず、市子は戸籍を持たない無国籍のまま大きくなります。戸籍のある難病の妹の月子として市子は生きていきます。病気を抱えた妹を介護し、母親と同居していた男性に虐待を受けながらもなんとか生き延びてきましたが、ある事件をきっかけに過去を捨てることを決意し、そんな中長谷川義則と出会い、ひと時の幸せを手にします。離婚後300日問題、無国籍問題、ヤングケアラーなど、現在の社会問題が映画の核となり、恋人の長谷川に見せる顔と、市子に惹かれ、市子にすべてを捧げてしまう高校の同級生の男子、北に見せる顔が対照的で、多面的で刹那的でもあり、戦略的でもある市子、どれが本当の市子なのか観ている方もわからなくなります。淡々とした描写で、市子が自ら告白するシーンがないので、解釈は観客側に委ねられます。杉咲花の憑依的な演技と柔らかい声、大きくて磁力のある瞳が印象的です。脇を固める俳優の演技も見事です。しかし決して気持ち良い終わり方ではなく、人間とはどんな生き物なのか、なぜ生きるのか、どうして生きたいのか、普通に生きるとはどういうことか、など深く考えるきっかけとなる映画です。

(出生)Wikipedia映画「市子」HP

 

 

無国籍問題とはなんでしょうか

 

無戸籍問題とは、子の出生の届出をしなければならない方が、何らかの理由によって出生の届出をしないために、戸籍に記載されない子が存在するという問題です。 戸籍がないと、住民票やパスポートは、原則としてつくられません(一定の要件を満たしていれば、つくられる場合があります。)行政のサービス受けることができず、社会的に不利益を受けることが多々あります。また、資格を取得するために必要な戸籍の証明をすることができないことや、親の遺産を相続する場合に、親子の証明ができないことがあります。

またこの無国籍問題に大きく関与しているのが、次の章で説明する、離婚後300日問題と言われる、嫡出推定制度の問題があります。

無国籍問題は、世界中で起きている問題です。世界には1200万人の無国籍者がいるともいわれています。日本在住の外国人の子供に最近無国籍者が増えてきているという新聞記事もあります。(出所)朝日新聞デジタル

区役所などでも、無国籍者の人たちを支援するポスターなども貼られています。法務省のホームページでは、無国籍の状況を解消するための支援の方法や問い合わせ先などが記載されています。わかりやすい動画もアップされています。

もし、この問題で悩まれている方は、ぜひ法務省の相談窓口にご相談ください。

(出所)法務省HP無国籍問題パンフレット無戸籍の方の戸籍をつくるための手引書から一部抜粋

 

 

離婚後300日問題とはなんでしょうか

 

「離婚後300日問題」とは、母が、元夫との離婚後300日以内に子を出産した場合には、その子は民法上元夫の子と推定されるため、子の血縁上の父と元夫とが異なるときであっても、原則として、元夫を父とする出生の届出以外受理されず、戸籍上も元夫の子として扱われることになるという問題、あるいは、このような戸籍上の扱いを避けるために、母が子の出生の届出をしないことによって、子が戸籍に記載されず無戸籍になっているという問題のことです。

嫡出推定制度においては、このような推定が及んでいる子は、実際の血縁関係の有無にかか わらず、法律上も母の夫(夫婦が離婚した場合には、元夫)の子として扱い、(元)夫の子であることを否定するためには、原則として、裁判手続によらなければならないとされています。この裁判手続は、嫡出否認の訴えと呼ばれており、申立てをすることができるのは、(元)夫のみで、申立てをすることができる期間は、(元)夫が子の出生を知った時から1年以内に限定されています。

(出所)無戸籍の方の戸籍をつくるための手引書から一部抜粋

このため、離婚後300日以内に生まれた元夫の子ではない、別の男性の子供を出産した母親は、この嫡出否認の裁判手続きを行う物理的、心理的ハードルが高いとされ、出生届を提出せず、無国籍者となってしまうケースがあるそうです。そのため、無国籍問題と離婚後300日問題は、とても関連が深いとされています。

 

 

令和6年4月1日から嫡出推定規定の見直しされ、女性の再婚禁止期間の廃止されます

 

以前より、無国籍問題、離婚後300日問題は議論されてきていましたが、令和6年4月1日、今月より嫡出推定の規定が見直しされます。とても大きな変更となります。

 

1 嫡出推定制度の見直しのポイント
 ○ 婚姻の解消等の日から300日以内に子が生まれた場合であっても、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた子は、再婚後の夫の子と推定することとしました。

 ○ 女性の再婚禁止期間を廃止しました。
 ○ これまでは夫のみに認められていた嫡出否認権を、子及び母にも認めました。
 ○ 嫡出否認の訴えの出訴期間を1年から3年に伸長しました。

 

また、非常に重要なお知らせも法務省のHPに記載されています。

 

【重要なお知らせ】無戸籍でお困りの方へ
 嫡出推定制度に関する改正後の規定は、原則として、本法律の施行日(令和6年4月1日)以後に生まれる子に適用されますが、本法律の施行日前に生まれた方やその母も、本法律の施行の日(令和6年4月1日)から1年間に限り、嫡出否認の訴えを提起して、血縁上の父ではない者が子の父と推定されている状態を解消することが可能です。対象となる方は、訴えを提起できる期間が限定されていますので御注意ください。御不明の点があれば、全国の法務局・地方法務局又はお住まいの市区町村の戸籍窓口に御連絡ください。

(出所)法務省HP

もし、離婚後300日問題で悩まれ無国籍となってしまっているお子さんをお抱えの方は、ぜひこの機会に、法務局に相談に行かれてはどうでしょうか。令和6年4月1日から一年に限り、特別措置期間となっています。

 

無国籍の問題は、おそらく多くの人にとっては身近な問題ではないかもしれません。しかし、本人が選択できる以前、生まれた時点で無国籍となり、心理的・社会的に不利益を被っている人がいるということを知っていただき、無国籍の子を持つ母親や親族は敷居は高いかもしれませんが、自治体に窓口がありますので、ぜひ相談に行っていただければと思います。

 

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