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11.302024
【認知症強化月間2024】映画「ロストケア」から、介護の現状と映画「PLAN75」で描かれた75歳以上の高齢者に安楽死する権利について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ32】
【認知症強化月間2024】映画「ロストケア」から、介護の現状と映画「PLAN75」で描かれた75歳以上の高齢者に安楽死する権利について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ32】
- 「ロストケア」の映画概要とあらすじについて
- 介護の現状についてみてみよう
- 介護者のストレスについて考えてみよう
- 映画「PLAN75」で描かれた75歳以上の高齢者に安楽死する権利について考えてみよう
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
「ロストケア」の映画概要とあらすじについて
『ロストケア』はは、葉真中顕による日本のサスペンス小説です。2013年2月20日に光文社から刊行され、第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品を受賞しました。(Wikipediaからそのまま引用)2023年に前田哲監督(「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」、「そしてバトンは渡された」)によって映画化されました。主演の介護士の斯波宗典には演技派俳優の松山ケンイチ、相対する検事、大友秀美には俳優としてのキャリアを積み重ね演技に厚みと磨きをかける長澤まさみ。斯波宗典の父親、斯波正作には独特な存在感の柄本明が起用されています。
物語は、諏訪湖の見える町で斯波宗典はケアセンター八賀の職員として、利用者の高齢者の人たちに献身的なサポートを行う介護士です。職場内でも同僚や後輩から尊敬されており、高齢者の人たち、その家族からも感謝され信頼されています。ある日ケアセンター利用者の一人暮らしの高齢者とセンター長の遺体がみつかるという事件が起こります。この事件をきっかけに、斯波宗典がケアセンター八賀の高齢者、41人を毒殺していたことがわかります。検事の大友秀美は、斯波宗典の取り調べを担当し、斯波宗典が「これは殺人ではない、私は本人と介護で疲弊し追い詰められていた家族を救った。」と反論します。それに対し検事の大友秀美は、「他人の人生を勝手に終わらせるのは自分勝手な判断だ、これは殺人だ。例えどれだけつらい介護の中でも家族でしか共有できない絆がある。」と正論で反論します。しかし、斯波宗典は「家族は絆であり、呪縛だ。」と主張します。激しい思想の対立の中で、斯波宗典の最初の高齢者の殺害は自分の父親、斯波正作であることに気が付きます。激しく強い愛情の中で、斯波宗典は一人で育ててくれた父親への恩返しもあり、当初は懸命に献身的に介護します。しかし徐々に認知症の症状が激しくなり、排泄物の調整ができなくなり、徘徊し、仕事を辞めざるをえなくなります。一日三食を食べることができなくなり、感情的になり暴力や暴言を吐く父親に、手を挙げることも増えてきました。最終手段として生活保護の申請を行いましたが、「あなたは働けるでしょ。」と申請を却下され、地獄のような暮らしの中で、父親から自分を殺して欲しいと依頼され、父親を毒殺します。
結果的に斯波宗典は死刑を言い渡されます。最終シーンで検事の大友秀美は刑務所に斯波宗典に面会に行き、自分の母親の介護に悩み、また長く会ってなかった父親のSOSを無視し続け、孤独死に追い込んだ後悔を話します。
映画の中で、何度も何度も斯波宗典は検事の大友秀美に「安全地帯にいるあなたには、穴の底で苦しむ人たちの気持ちは分からない」と繰り返し伝えます。検事の大友秀美の母親のように手厚い高齢者福祉サービスを享受できる人が居る一方で、終わらない介護の中で穴の底で上を向く余裕も持てない人もいる。これもまた事実でしょう。作者の葉真中顕はインタビュー記事で、「斯波宗典の行為を正当化するつもりもないし、人の命を奪う殺人は罪だと認識している。しかし、検事の大友秀美の正論が、響かないのだとしたらそれはなぜだろう。斯波宗典に共感してしまうのはなぜだろう、「どうして私たちは共感してしまうのだろう」を考えて欲しいといっていました。介護がこれほどまでに追い詰められてしまうものだという事を知ることができる映画です。斯波宗典と大友秀美の対峙には緊張感があり迫真の演技です。
前田哲監督は小説が刊行された10年前から映画化を希望していたそうで、主演は松山ケンイチにしようと考えていたそうです。それほどの作品ですし、見ごたえのある作品です。
介護の現状についてみてみよう
劇中では、きれいごとではない、非常に厳しい介護の現実が描かれていました。介護の最初は育ててくれた親に対し、今までの感謝の気持ちと優しい気持ちで献身的にお世話をしますが、終わりがみえない、そして徐々に症状が悪化していき過酷になっていく介護に疲れて息切れしていまう人も多いと思われます。介護の期間も人によって異なります。半年未満の人から10年以上の介護が続いている人までさまざまです。
ここでは、介護期間、要介護度別の介護時間をみていきたいと思います。
(出所)<生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度
介護期間は平均5年1カ月です。介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1カ月(5年1カ月)。4年を超えて介護した人も約5割となっています。介護期間が1年未満の人は20.5%です。介護期間は人によって異なりますが、自分が想定するより長い期間を要すると考えた方が良いでしょう。
また要介護度別にみた「同居の主な介護者」の介護時間の構成割合では、要介護5の人の介護になると、6割以上の人が「ほとんど終日」、「半日以上」をあわせると8割以上となります。介護の負担がどれだけ高いか想像できる数字かと思います。排せつや入浴、食事など身体の負担の高いケアが求められます。介護者の負担は相当大きいと推察されます。
介護者のストレスについて考えてみよう
介護疲れとは、介護をすることで心身ともに疲労やストレスを抱える状態を指します。介護疲れが原因でうつ症状が出ている状態を「介護うつ」といいます。
■介護疲れの特徴としては、次のようなものがあります。
- 疲労感や慢性的な怠さ、肩こり、頭痛など
- 何をするにも億劫になり、倦怠感や無気力になる
- 原因不明の焦りや不安な気持ちが現れ、気持ちが落ち着かず神経質になる
- いつもなら楽しめることも楽しめなくなる
- 何をしていても憂うつな気分を感じてしまう
- 自分の身の回りで良いことが起きても、気分が晴れない状態が続く
■介護疲れを予防・緩和するには、次のような対策が考えられます。
- ストレスの根本原因を把握する
- 食事と睡眠をたっぷりとる
- 在宅サービスや便利グッズを利用して介護負担を減らす
- 介護施設に入居するという選択肢も検討する
- 自分で自分を認めてあげる
- 週に1回デイサービスを利用してみる
- 誰かに心の中にあるモヤモヤを話してみる
では、具体的に介護を行っている人がストレスや悩みを抱えている割合をみてみましょう。平成28年の国民生活基礎調査の概況調査では、介護を行っている男性6割、女性7割が介護に関して悩みやストレスを抱いています。同居家族の介護者に関しては女性が7割を占めていますので、ストレスを抱えている人が非常に多いと言えるでしょう。またそのストレスの内訳の8割弱が「家族の病気や介護」となっています。愛情も感謝もあるでしょうが、介護は非常にストレスの高い大変なものだと言えるでしょう。
老いも若きもいつかは自分事となってくる問題です。自分事として考えてみましょう。
映画「PLAN75」で描かれた75歳以上の高齢者に安楽死する権利について考えてみよう
以前、映画「PLAN75」のブログを書きました。この映画は近未来の日本が舞台です。少子高齢化が進み、75歳以上の高齢者に「PLAN75」という自分で生と死を選ぶ権利が与えられます。78歳の主人公は失職をきっかけに生活保護より「PLAN75」を選択します。しかし選択した死を前に、心が揺れていきます。一度このプランを選択すると半強制的に安楽死のコースに乗せられてしまいます。この映画では、自分の自由意思という名目で、半強制的に国家の施策として75歳以上の高齢者が安楽死を選択させられる姿に、「生きる」ということの意味を問うた映画ともいえます。
日本では尊厳死に関しては、消極的な死として、公正証書で尊厳死宣言を証書として残すやり方などはありますが、積極的な死、安楽死は認められていません。安楽死に手を貸した家族や医師や罪に問われます。
今回の映画は、安楽死が認められていない日本で、「救い」として安楽死を斯波宗典が「ロストケア」を実施します。しかし斯波宗典は依頼されていないのに、本人の意思確認もとらずに勝手に自分の正義で他人の命を奪ってしまいます。
この認知症強化月間の中で、自分なりに認知症、介護、死と生について考えてみてはいかがでしょうか。
認知症・成年後見制度について当ブログ内、こちらにも記載がありますので、良ければお目通しください。