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12.102025
映画「親のお金は誰のもの 法定相続人」から成年後見制度と法定相続人について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ40】

映画「親のお金は誰のもの 法定相続人」から成年後見制度と法定相続人について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ40】
- 映画「親のお金は誰のもの 法定相続人」の映画概要とあらすじについて
- 成年後見制度を知っていますか
- 法定相続人とはどんな人なのでしょうか
- 相続は早めに対策をしましょう
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
映画「親のお金は誰のもの 法定相続人」の映画概要とあらすじについて
『親のお金は誰のもの 法定相続人』は、田中光敏監督のオリジナル作品で、2023年に全国映画館で上映されました。比嘉愛未と三浦翔平のダブル主演です。脇を固める俳優には、三浦友和、石野真子、浅利陽介、小手伸也。比嘉愛未と血縁関係のない二人の姉役に、南海キャンディーズの静ちゃん、松岡依都美が悪意なくコミカルに演じています。物語の舞台は三重県志摩市です。本作品は第14回ロケーションジャパン大賞にノミネートされています。伊勢志摩の美しい映像がドローンで映し出され、物語を盛り上げます。特に夕焼けのシーンは圧巻です。
三重県志摩市で真珠の養殖を営んでいた母、満代(石野真子)が死去したことを知り、東京のIT系外資企業に勤める大亀遥海(比嘉愛未)は十数年ぶりに故郷の志摩市に帰ります。満代は遥海が幼い頃に仙太郎(三浦友和)と再婚しました。遥海は満代の連れ子です。自分から母親を奪い、身体の弱い母親に無理に家業を手伝わせたため、早死にしたのだと思い、遥海は仙太郎を深く恨んでいます。お通やの夜に、突然、仙太郎の成年後見人だと名乗る弁護士、城島龍之介(三浦翔平)が現れ、財産管理のためと仙太郎名義の通帳や家の権利書など、全てを持ち帰ってしまいます。実は遥海と血縁関係のない二人の姉、大亀家の長女・珠子(松岡依都美)、次女の浜子(山﨑静代)が、仙太郎の財産管理を自分たちで行いたいと、仙太郎を認知症と偽り、裁判所に成年後見の申し立てを行っていました。しかし後見人には姉妹ではなく、弁護士が選任されてしまったのです。また仙太郎が時価6億円の真珠を育て上げたことを弁護士の城島龍之介と大亀家の長女・珠子、次女の浜子も知り、我が先にと真珠を巡り大騒動が繰り広げられます。最終的に遥海は母、満代の夢、仙太郎と共に世界一の真珠を作る夢を二人で成し遂げたことを知り、自身も仙太郎への恨みを捨て、自分らしい夢、生き方を見つけることを決意します。二人の姉たちも、真珠を探す中で家族の思い出のアルバムを見つけ、生前、血の繋がらない満代に大事に育ててもらったことを思い出します。弁護士の龍之介も複雑な生い立ちを抱えていますが、自分の母親と向き合うことを選びます。
田中光敏監督はインタビュー記事の中で、この映画のテーマを以下のように説明しています。【「愛」と「許し」です。大好きな人を守るために、そして大好きだからこそ、どこかで許せる。そういうものを親も子も持っていないと、相続という問題を乗り越えられない。】
現在の少子高齢化を鑑みても、社会的な意味を持つ映画です。しかし、全体的にはシリアスな内容の中、コミカルで、笑いの要素もあります。フラメンコショーに登場人物が入り込むシーンもあり、エンターテインメント作品ともなっています。
家族の数だけ相続があり、家族の数だけ、相続の形があります。
成年後見制度の問題点にも映画の中で指摘されており、考えさせられるシーンもありました。これから相続が控えていらっしゃる方はぜひ自分たちの行く末に何が待ち構えているかご覧いただければと思います。
(参考)親のお金は誰のもの 法定相続人HP、相続会議インタビュー記事
成年後見制度を知っていますか
劇中、長女・珠子と次女の浜子が、「成年後見人になれば、親のお金を自由に使える」と思い、二人で仙太郎を認知症と偽り、気軽な気持ちで裁判所に成年後見の申し立てを行います。
ここでは成年後見制度がどのような制度なのか、全体像をみてきたいと思います。
成年後見制度とは、判断能力が不十分な人々を法的に保護し、生活全般を支援するための制度です。日本では、介護保険と同時期、2000年4月に施行されました。根拠法律としては「民法」で、868条は成年後見制度の重要条文として知られています。この制度の主な対象は、高齢者、知的障害者、精神障害者など、判断能力が低下したり、不足している人々です。
成年後見制度の仕組み
成年後見制度は、以下の3つの類型に分かれています。それぞれ、支援の必要性や判断能力の程度に応じて適用されます。
- 後見
判断能力がほとんどない場合に適用されます。後見人が選ばれ、財産管理や契約締結などを全面的に支援します。 - 保佐
判断能力が著しく不十分な場合に適用されます。保佐人が選ばれ、特定の重要な行為について支援を行います(例:不動産の売買や高額な借入れ契約など)。 - 補助
判断能力が不十分であるものの、軽度な場合に適用されます。補助人が選ばれ、本人の同意を得ながら特定の行為を支援します。
利用の流れ
成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に申し立てを行い、裁判所が後見人・保佐人・補助人を選任します。この後見人等は、家族、専門職(弁護士や司法書士)、市民後見人などが選ばれることが多いです。
主な役割
成年後見人等は、以下のような役割を果たします:
- 財産管理:預貯金の管理、不動産の処分など。
- 契約の締結:必要な契約(介護サービス契約など)の代理や同意。
- 生活支援:日常生活のサポートや福祉サービスの利用手続き。
※生活支援に関しては、事実行為(食事や排泄等の介助や清掃、送迎、病院への付き添い等の行為(身の回りの世話)のことを指し、これら事実行為については、成年後見人等自身が行うことはできないことになっています。
映画の中では、老母名義の家に同居し一緒に生活をし、世話をしていた夫婦が、母親の施設入居の費用を賄うため家を売り、夫婦は住んでいた家から放りだされてしまうシーンなどもありました。
成年後見制度は、後見人は被成年後見人のために財産管理を行うのであり、「親のお金は親のもの」なのです。
また成年後見制度は、家族が申し立てをし、後見人を希望しても家族が受任できるとは限りません。後見人を誰にするかは裁判所の判断となります。そして現状では、成年後見制度は有期契約ではなく、被後見人が亡くなるまで続きます。また後見人を変更することはできますが、その場合、後見人が適切に職務を遂行できない場合や、本人の利益が損なわれている場合に、家庭裁判所が後見人を変更することを認めることがあります。しかし後見人の変更は非常にまれなケースです。
このように成年後見制度は、高齢化が進む日本において重要性を増している制度ですが、利用者や支援者にとって使いやすい仕組みをさらに改善することが求められており、現在制度を見直ししている最中です。
成年後見制度に関しては、本ブログでも扱っています。よければこちらをご覧ください。
法定相続人とはどんな人なのでしょうか
本作品では母満代が亡くなり、相続人としては、配偶者の仙太郎と娘の遥海となります。満代と仙太郎の先妻の二人の子、長女・珠子と次女の浜子が満代と養子縁組をしていれば相続人となりますが、養子縁組をしていなければ相続人にはなりません。
法定相続人とは、被相続人(亡くなった人)の財産を法律の定めに従って相続する権利を持つ人のことです。法定相続人の範囲と優先順位は、日本の民法で規定されています。
法定相続人の範囲と順位
法定相続人は、以下の2つのグループに分かれます。
- 相続順位が定められている「血族相続人」
- 第一順位: 子(直系卑属)
- 被相続人の子が最優先で相続人になります。
- 子がすでに死亡している場合は、その子(孫)が代わりに相続人となります(これを代襲相続といいます)。
- 第二順位: 直系尊属(両親や祖父母)
- 子がいない場合に、被相続人の両親や祖父母が相続人となります。
- 両親が健在であれば両親が相続人となり、両親が死亡している場合は祖父母が相続人になります。
- 第三順位: 兄弟姉妹
- 子も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人となります。
- 兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、その子(甥や姪)が代襲相続します。
- 配偶者(常に相続人となる)
- 被相続人に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人になります。
- 配偶者は血族相続人とともに相続し、相続割合は相手の順位によって異なります。
相続順位による配分割合
以下は、被相続人に配偶者がいる場合の相続割合です:
- 配偶者と子が相続人の場合
- 配偶者:1/2、子:1/2(複数の子がいる場合は均等に分配)。
- 配偶者と直系尊属が相続人の場合
- 配偶者:2/3、直系尊属:1/3。
- 配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
- 配偶者:3/4、兄弟姉妹:1/4。
法定相続人に該当しない人
以下の人は原則として法定相続人にはなりません:
- 事実婚の配偶者(法律上の婚姻関係がない場合)。
- 被相続人の養子縁組をしていない親族(例:内縁関係の子)。
- 被相続人が遺言書で「相続人から除外する」と指定した場合(廃除手続きが必要)。
相続に関しては本ブログでも用語説明などしております。良ければこちらを参考にしてください。
相続は早めに対策をしましょう
どんなに仲の良い家族でも相続の話をするのには勇気が必要です。相続だけでなく、例えば、親に介護が必要になった時に、誰にどこで介護されたいか。終末医療の際、延命治療をするのかしないのか。そのような難しい決断を残された家族が判断するのは負担が大きいでしょう。終活に関しては、エンディングノートを書くのがおすすめです。ただしエンディングノートはあくまで本人の希望であり、法的な効力を持ちませんので、相続などの財産分与に関しては、遺言を事前に書くことをおすすめします。当事務所でも遺言をメイン業務として取り扱っています。どうぞお気軽にお問合せください。
相続対策は早めに行いましょう。
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