- Home
- 話題の映画・ドラマ・アニメブログ
- 映画「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」から大人の役割と偶然の出会いが人生に与える影響について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ46】
ブログ
5.202025
映画「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」から大人の役割と偶然の出会いが人生に与える影響について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ46】

映画「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」から大人の役割と偶然の出会いが人生に与える影響について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ46】
- 映画「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」の映画概要とあらすじについて
- 大人=成年年齢なのでしょうか?
- 誰かを助けたいという気持ちが孤独感を和らげる
- 人生万事塞翁が馬
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
映画「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」の映画概要とあらすじについて
『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は、2023年のアメリカ合衆国のコメディドラマ映画で2024年6月21日に日本で公開されました。監督は日本でもなじみ深い映画、『アバウト・シュミット』、『サイドウェイ』、『ファミリー・ツリー』、『ダウンサイズ』などアメリカ社会の家族・夫婦関係をテーマにし、風刺やブラック・ユーモアを混ぜる作風が特徴である脚本家、監督でもあるアレクサンダー・ペイン。
舞台は1970年のアメリカ。寄宿制のバートン校ではクリスマス休暇を前に生徒たちは気もそぞろ。各自それぞれの家族が待つ家に帰りますが、生徒のアンガスは、再婚した母親が新婚旅行に出かけるため、急遽クリスマス休暇を寄宿学校で過ごすことになります。偏屈で生徒からも同僚の教師からも嫌われている古代史の教師・ハナムがクリスマス休暇中、学校に居残るように校長に命じられます。この二人にベトナム戦争で愛する息子を亡くしたばかりの料理長のメアリーも、息子の母校である学校にいたいという思いもあって残ることになり、思いがけず三人でクリスマス休暇を過ごすことになります。休暇を過ごす中で、最初は険悪だったハナムとアンガスですが、休暇中の様々な出来事を経て、ハナムは生意気で口の悪いアンガスが、聡明でナイーブな内面を持つ、才能と可能性を秘めた原石であることに徐々に気が付き始めます。几帳面で偏屈なハナムの誠実さ、大事な息子を亡くしたメアリーの優しさと深い悲しみに触れ、アンガスは徐々に今までの生活で得られなかった家族に似た温かさを感じていきます。共通点の全くない三人の間に、疑似家族的な心のつながりが生まれます。アンガスが父親の療養所を訪問したことが問題を引き起こし、士官学校に入れられそうになりますが、ハナムが問題は自分の責任であり、アンガスの抱える悲しみ、そしてそれ以上の聡明さや可能性を両親に真正面から伝え、アンガスの退学の代わりに自分がバートン校を去ることを決めます。人生の大半をバートン校に捧げ、その敷地を出たことがなかったハナムですが、バートン校を飛び出し新しい人生を始めるシーンで映画は終わります。
人生は、いつ、誰に出会うかわかりません。しかし、例えそれが数日であろうと数週間であろうと、その一瞬の出会いが人生を決めてしまうことがあるのでしょう。アレクサンダー・ペインはインタビュー記事の中で以下のように話しています。
「人生のすべてはキャスティングだと思っています。友人もキャスティング、仕事もキャスティング。でも、家族は神であるプロデューサーが雇えと言われて押し付けられる人の集合体です(笑)。だから、家族よりも友人のほうが自分の気持ちが近いと感じる人も多いんじゃないかと思います。そして、普遍的な愛とは家族の間にのみあるわけではありません。」
観ていて心が温かくなり、希望を感じる良作です。
(出所、参考)Wikipedia、映画.comインタビュー記事、映画.com
大人=成年年齢なのでしょうか?
本作品の中で、教師の役割、大人の役割について考えさせられます。ハムスとアンガスは、教師と生徒ですが、徐々に人間同士の対話へと変化していきます。当初ハムスは生徒を管理し保護する義務で向き合っていましたが、後半は、一人の人間として大人として、前途ある有望な青年を導くような言動に変わっていきます。そして最終的には、アンガスの未来のために自分の職を失する覚悟を決めます。「大人」とは何かが法律で一律には決められているわけではありませんが、それでも子供を保護し、見守り、未来を守ることは大人の役割ではないかと思いました。
先ほども触れましたが、民法では大人の定義などは決められていませんが、それぞれの法律でどんなことを何歳でできるかという年齢要件を決めるに当たって、民法の「成年年齢」がそのまま使われていることも多いです。そのため、民法が定めた成年年齢である20歳に達すると「大人」になるというイメージが社会で広く共有されています。(大人への道しるべからそのまま抜粋)。成年年齢は、2022年4月1日から18歳に引き下げられました。
民法の成年年齢には,一人で有効な契約をすることができる年齢という意味と,父母の親権に服さなくなる年齢という意味があります。
成年年齢の引下げによって,18歳,19歳の方は,親の同意を得ずに,様々な契約をすることができるようになります。例えば,携帯電話を購入する,一人暮らしのためのアパートを借りる,クレジットカードを作成する(支払能力の審査の結果,クレジットカードの作成ができないことがあります。),ローンを組んで自動車を購入する(返済能力を超えるローン契約と認められる場合,契約できないこともあります。),といったことができるようになります。
なお,2022年4月1日より前に18歳,19歳の方が親の同意を得ずに締結した契約は,施行後も引き続き,取り消すことができます。また,親権に服することがなくなる結果、自分の住む場所(居所)を自分の意思で決めたり、進学や就職などの進路決定についても、自分の意思で決めることができるようになります。もっとも、進路決定について,親や学校の先生の理解を得ることが大切なことに変わりはありません。 そのほか、10年有効パスポートの取得や公認会計士や司法書士などの国家資格に基づく職業に就くこと(資格試験への合格等が必要です。)性別の取扱いの変更審判を受けることなどについても18歳でできるようになります。(法務省 民法(成年年齢関係)改正 Q&Aからそのまま抜粋)
(出所)法務省 民法(成年年齢関係)改正 Q&A、法務省 大人への道しるべ
以下に18歳でできること、20歳以上でできることの図を添付します。
誰かを助けたいという気持ちが孤独感を和らげる
ハムスは家族とも疎遠で、人生の大半を誰かと深く関わることなく、古代史の教師として生きてきました。他者にも人生にも期待することもなく、誰かと愛情関係を築くこともなく過ごしてきました。しかし、アンガスとはからずも行動を共にするようになり、アンガスの持つ聡明さが未来を切り開くことに気が付いた時から、アンガスに何かしらのサポートをしたいという気持ちになったのではないでしょうか。また誰かを応援したり、サポートする行為は、結果的にその当人の孤独感を和らげる効果もあります。
人々のつながりに関する基礎調査では、他者へのサポート意識がある人は、直接質問でも間接質問でも、他者へのサポート意識がない人に比べ孤独感スコアが低くなっています。
(出所)令和6年3月 内閣官房孤独・孤立対策担当室 人々のつながりに関する基礎調査(令和5年) 調査結果の概要
人生万事塞翁が馬
映画、ホールドオーバーズは、当初は思いがけずクリスマス休暇を自宅で過ごすことができず寄宿学校で過ごすことになった、置いてきぼりになってしまった不運な教師と生徒が、共に時間を過ごすうちに、互いを理解し思いやるようになり、絆を育み、自分の療養中の父親を見舞いに行った事が、後にトラブルとなり、ハムスに教師の職を辞することにつながります。しかし、ハムスの半生をある意味縛っていたバートン校から思いがけず離れ、ハムスは新しい人生を始めることができます。まさに人生万事塞翁が馬と言える展開です。
「人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま)」は、人生の吉凶や運不運は予測できないという意味のことわざです。
最悪な出来事が最高な出来事をもたらす場合もあれば、逆の場合もあります。そのため、一つの出来事だけにフォーカスしすぎず、その出来事が次に何を引き起こすのか。人生は一つの出来事では決まらない、変えることができるのです。
登場人物の気持ちの繊細な変化が感じられる、とても丁寧に作られた作品です。
子供や青年にとって、信頼でき、自分の存在を肯定してくれる大人に出会う事が、どれだけ大切なことか。また大人にとっても、子供を見守りサポートすることの社会的な意義について考える必要があると思いました。
Views: 2