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5.102025
映画「破墓パミョ」からお墓における風水の役割と土葬と火葬の違いについて考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ50】

映画「破墓パミョ」からお墓における風水の役割と土葬と火葬の違いについて考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ50】
- 映画「破墓パミョ」の映画概要とあらすじについて
- 破墓、巫堂(ムーダン)、巫俗(ムソク)、明堂(ミョンダン)、地官とはなんでしょうか
- 韓国のお墓における風水の役割とは
- 土葬と火葬における宗教的な意味合いとはなんでしょうか
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
映画「破墓パミョ」の映画概要とあらすじについて
映画『破墓パミョ』は、2024年に公開された大韓民国のオカルト・ミステリ映画です。チャン・ジェヒョン(張宰賢)(朝鮮語版)が脚本と監督を務め、大韓民国の名優、映画シュリのチェ・ミンシク、ドラマ、シスターズが印象的なキム・ゴウン、ユ・ヘジン、イ・ドヒョンが主演しています。本作は、2025年2月22日の土曜日に、観客通算1000万人を迎え、韓国の映画祭で数々の賞を受賞しています。
巫堂ファリム(キム・ゴウン)と弟子ボンギル(イ・ドヒョン)は、跡継ぎが代々謎の病気にかかるという奇妙な家族から、桁違いの報酬で依頼を受けます。すぐに、先祖の墓が原因だと気づき、お金の臭いを嗅ぎつけた風水師サンドク(チェ・ミンシク)と葬儀師ヨングン(ユ・ヘジン)も合流します。やがて、4人はお祓いと改葬を同時に行ないますが、掘り返した墓には恐ろしい秘密が隠されていました。(映画公式HPからそのまま抜粋)
本作では、韓国の風水思想や巫俗文化が色濃く反映されており、墓の位置が家族の運命に影響を与えるという考え方が重要な要素となっています。また、映画の中では日本の武将の霊が登場し、韓国の歴史的背景とも絡んだストーリーが展開されています。
チャン・ジェヒョン監督は幼少期に改葬の現場を目撃したことがあり、その際に「棺の中には何があるのか?」という強い好奇心を抱いたそうです。この経験がきっかけとなり、棺や墓に関する映画を作りたいという思いが芽生えたそうです。さらに、監督は改葬に関する取材を5年間にわたって行い、実際に15か所以上の改葬現場に立ち会ったそうです。その過程で、墓の位置が家族の運命に影響を与えるという風水的な考え方にも触れ、映画のテーマとして取り入れたとのことです。
チャン・ジェヒョン監督は『プリースト』『サバハ』などオカルトホラーのジャンル作品などを作っていますが、インタビュー記事で、オカルトホラーのジャンル作品ばかり作る理由に「なぜこんな映画ばかり作るんだろうと自問自答してみたんですが、おそらく合理主義や科学信奉によって非常に発展した現代社会に、ちょっと疲れているようなところがあるんじゃないかと思うんですよ。それで対極にある宗教的なもの、霊的なもの、魂のようなものを考えてしまう。目に見えない世界には現代社会が失ってしまった価値観があり、だからこそ夢中になっているんじゃないかと。」
四人の主演俳優たちの演技が素晴らしく、それぞれが自分の役割を見事に果たしており、非常に見応えのある作品となっています。特に巫堂キム・ゴウンが祈禱しながら踊るシーンは美しく激しく圧巻です。前半と後半では若干テーマが異なり、監督の言う熱いそばと冷たいそばを一つの映画の中で二度味わえます。
社会が高度化し複雑化し加速化する中で、韓国の歴史的な土着信仰やお墓をテーマにしている作品で、韓国の土着信仰や儀礼を知ることができます。もっと韓国のことを知りたくなりました。
(出所)映画公式HP、渥美志保インタビュー記事、ホラー通信、エンタメOVO、
破墓(パミョ)、巫堂(ムーダン)、巫俗(ムソク)、明堂(ミョンダン)、地官とはなんでしょうか
本作品を見るうえで、上記の言葉を理解することは必須です。また上記の言葉は、韓国の歴史や文化、信仰などを理解する上でとても大切な用語になります。
映画公式HPにも言葉の説明がありますが、そちらを抜粋しながら、説明していきたいと思います。
■「破墓(パミョ)」とは、韓国の伝統的な風習である墓の移動や改葬を指します。風水において、墓の位置は非常に重要であり、適切な場所に埋葬されることで子孫の運勢に影響を与えると考えられています。そのため、風水師が墓の位置を診断し、より良い場所へ移動することが行われることがあります。
■巫堂(ムーダン)は、韓国のシャーマン(霊媒師)であり、神霊と交信して占いや祈祷を行う存在です。巫堂は、病気の治癒、厄払い、運勢向上などを目的とした儀式「クッ(굿)」を執り行い、韓国の伝統的な民間信仰の一部として根付いています
■巫俗(ふぞく、ムソク)は、朝鮮半島のシャーマニズムを指す言葉で、韓国の伝統的な民間信仰の一つです。仏教やキリスト教(プロテスタント/カトリック)といった外来宗教が伝播する遥か遠い昔から韓国の民衆の生活に根を下ろし、たとえば家や村を守る神、山や海の神に捧げられる굿(グッ)と、これらを行う巫堂によって形成された伝統宗教と言えます。今も多くの韓国人は個人の宗教に関係なく、結婚や引っ越し、受験など人生の大事な日を迎えるときに、その吉凶を巫俗に頼っています。
■明堂(めいどう)は、風水や中国の伝統的な建築に関連する概念です。
風水では、明堂は「気が集まる場所」とされ、家や墓の前に広がる開けた空間を指します。良い明堂があると、気の流れが安定し、繁栄や幸福をもたらすと考えられています。例えば、家の玄関前に適度な広さの庭や空間があると、良い気を取り込みやすくなるとされています。
風水の観点から見ると、明堂は家や墓の運勢に影響を与える重要な要素です。
■地官(ちかん)は、中国の古代制度における役職の一つで、特に周代の「六官」の中の一つとして知られています。地官は地方行政や教育、人事などを担当し、社会の秩序を維持する役割を果たしていました。
また、陰陽道においては地官は地上や冥界を司る神とされ、道教の信仰の中で重要な存在とされています。さらに、風水の考え方では、墓の位置や方角を決定する際に地官(風水師)が関与することもあります。
(出所)ムービーウオーカー、映画公式HP、渥美志保インタビュー記事、ホラー通信、エンタメOVO、
韓国のお墓における風水の役割とは
日本では、お墓を購入する際に重視する内容としては、「利便性」を重視する人が63%を超えていました。次に56.8%で「環境」、三番目に49.3%の「価格」という回答が得られました。日本では、お墓の購入時に風水を利用するという話を聞くことは少ないようです。
しかしながら、風水において、墓の位置は非常に重要であり、適切な場所に埋葬されることで子孫の運勢に影響を与えると考えられています。そのため、風水師が墓の位置を診断し、より良い場所へ移動することが行われることがあります。墓の位置が不適切であることが原因で家族に災いが降りかかることもあるとされています。
風水における墓の位置の選定は、「明堂」と呼ばれる良い土地を見つけることが重要とされ、適切な場所に埋葬することで家族の繁栄や健康を守るとされています。逆に、不適切な場所に墓があると、災いを招くと考えられています。
土葬と火葬における宗教的な意味合いとはなんでしょうか
日本では火葬率が99.9%と非常に高く、世界でもトップクラスの火葬国です。近代以前は土葬が一般的でしたが、都市化や衛生面の問題から火葬が主流になりました。現在、土葬が行われる地域はごく限られています。
韓国では火葬が主流となっており、2023年時点で火葬率は95%以上に達しています。かつては土葬が一般的でしたが、土地の不足や維持管理の負担から、1990年代以降急速に火葬へと移行しました。
ただし、地方では今でも土葬が行われることがあり、特に済州島では約20%が土葬とされています。また、儒教の影響を受けた伝統的な名家では、土葬を続けるケースもあります。
本作でも依頼人は大変な名家で資産家で、一山をお墓として利用していました。
儒教は、伝統的に土葬を重視する傾向があります。これは、儒教の祖先崇拝の思想に基づいており、遺体を火葬することは「先祖への不敬」と考えられることが多かったためです。特に中国や韓国では、儒教の影響を受けた社会では長い間土葬が主流でした。
土葬と火葬は、宗教によって異なる意味を持ちます。一般的に、土葬は「自然への回帰」や「復活」を象徴し、火葬は「浄化」や「輪廻転生」と関連付けられることが多いです。
土葬の宗教的な意味
- キリスト教(特にカトリックや正教会)では、土葬が伝統的な埋葬方法です。これは「死者の復活」を信じる教義に基づいており、遺体をそのまま埋葬することで、終末の日に復活できると考えられています。
- イスラム教では、土葬が厳格に守られています。イスラム教の教義では、遺体はできるだけ早く埋葬されるべきであり、火葬は禁じられています。これは「神が人間を土から創造したため、死後も土に帰るべき」という考えに基づいています。
- ユダヤ教も土葬を重視し、火葬を避ける傾向があります。これは「土から生まれ、土へ帰る」という聖書の教えに基づいています。
火葬の宗教的な意味
- 仏教では、火葬が一般的です。これは「輪廻転生」の考え方と結びついており、遺体を焼くことで魂が解放され、次の生へと進むと考えられています。
- ヒンドゥー教では、火葬が重要な儀式とされています。遺体を火で浄化し、遺灰を聖なる川(ガンジス川など)に流すことで、魂が解脱へと導かれると信じられています。
とても興味深い映画でした。お隣の韓国でも少子高齢化で急速に社会の構造が変化しているようで、日本と同様継承者不要のお墓に人気が集まっているようです。このような韓国土着の民間信仰も変化していくのでしょうか。行く末が気になります。
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