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11.202025
映画「チョコレートドーナツ」から子の利益と未成年後見人について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ52】

映画「チョコレートドーナツ」から子の利益と未成年後見人について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ52】
- 映画「チョコレートドーナツ」の映画概要とあらすじについて
- 子の利益とはなんでしょうか
- 未成年後見人をしっていますか
- 家族とはなんでしょうか
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
映画「チョコレートドーナツ」の映画概要とあらすじについて
映画『チョコレートドーナツ』は、2012年に公開されたアメリカのドラマ映画です。1970年代のアメリカを舞台に、育児放棄されたダウン症の少年と、彼を愛情深く育てようとするゲイカップルの奮闘を描いた感動作です。
主人公のルディ(アラン・カミング)はショーパブで働くパフォーマーで、ある日、検事局のポール(ギャレット・ディラハント)と出会い、恋に落ちます。そんな中、ルディは隣人のダウン症の少年マルコ(アイザック・レイヴァ)が母親の逮捕によって施設に送られたことを知り、何度か施設から抜け出してアパートに戻ってくるマルコを不憫に思い、ポールと共に彼を引き取ることを決意します。弁護士のポールは母親不在の間、裁判所からマルコの監護権を得ます。しばらくポールの家で三人は心を通わせ、ハロウィン、クリスマスを過ごし、幸せに生活します。しかしポールの上司に二人がゲイのカップルであることがばれ、同性愛者であることが障害となり、二人はマルコの養育権を巡って長い法的な戦いを強いられることになります。最終的に母親が早めに仮出所しマルコの親権は母親に戻ります。しかし出所後も母のマルコに対する育児放棄は変わることなく、マルコはルディとポールと三人で暮らした家を三日三晩探し、最終的に亡くなってしまいます。ポールは裁判に関わった人たちにマルコが亡くなったことが書いてある新聞記事とマルコの写真を送り、マルコがどんな人物だったかを伝えます。ルディは、才能が認められ歌手デビューしますが、その歌声は美しく悲しく胸に迫るルディの心の葛藤と悲痛が垣間見えます。
この映画は、社会の偏見や制度の壁に直面しながらも、愛と家族の絆を守ろうとする姿を描いており、多くの映画祭で観客賞を受賞するなど高い評価を得ています。日本では2014年に劇場公開され、感動的なストーリーが話題となりました。
しかし、LiLiCoが王様のブランチで本作品を紹介した時は1劇場しか上映していなかったそうですが、紹介後は140館を超える映画館で上映されました。
また2020年には宮本亜門により世界で初めて舞台化され、主演を東山紀之が演じました。
主人公ルディの演技も歌も素晴らしく圧巻です。挑発的でありながら、深い慈愛の心を持ち、自分に正直であろうと懸命に戦います。映画の途中から二人がゲイカップルであることが気にならなくなります。ルディが途中からマルコの本当の母親にみえてきます。
たまたまアパートの隣人だったマルコがいつしかルディの人生になくてはならない愛おしい守るべき存在に変わります。愛の物語です。
子の利益とはなんでしょうか
ルディとポールは、マルコの血縁関係者ではありません。たまたま知り合った他人です。しかしマルコは母親が逮捕され、未成年でダウン症という障害を持って生まれ、大人の監護が必要です。そのためルディとポールはマルコの監護権を裁判所に強く求めます。
そこで重要になる考え方が、「子の利益」です。裁判シーンでも、二人がマルコを育てることがマルコの利益になるのか問われるシーンがあります。
子の利益に直接触れている民法の条文があります。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
■民法766条
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
(監護及び教育の権利義務)
■民法822条
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
「子の利益」の判断に当たっては,「従前の監護状況,現在の監護状況や父母の監護能力(健康状態,経済状況,居住・教育環境,監護意欲や子への愛情の程度,監護補助者による 援助の可能性等),子の年齢,心身の発育状況,従来の環境への適応状況,環境の変化 18 への適応性,父又は母との親和性,子の意思等,父母の事情や子の事情を実質的に比較考量して父母のいずれが監護者として適格であるかが検討される。」
「家事事件・人事訴訟事件の実務」234頁から238頁
「子の利益」とは、子どもの健全な成長や幸福を最優先に考える概念です。特に法律や家庭裁判所の判断において、親権や養育環境を決定する際の重要な基準となります。
映画ではゲイカップルという点にばかり焦点があたり、ルディとポールのマルコへの愛情、住居や食事、教育などの総合的な子の利益には、映画では焦点が当たらず最終的には悲劇的な結末を迎えてしまいます。
未成年後見人をしっていますか
未成年後見人とは、親権者がいない未成年者の法定代理人のことです。例えば、両親が亡くなったり、親権を喪失した場合に、未成年者の監護養育や財産管理を行う役割を担います。
未成年後見人は、家庭裁判所によって選任されることが多く、未成年者の生活や財産の状況、候補者の職業や経歴などが考慮されます。また、親権者が遺言で未成年後見人を指定することも可能です。
未成年後見人の職務には、未成年者の身上監護(教育や生活の管理)や財産管理が含まれます。
原則として、親権者になれるのは父母ですが、特定の条件下では両親以外の人が親権を持つことも可能です。
例えば、以下のようなケースでは、親権が両親以外に移ることがあります:
- 養子縁組:祖父母や親族が子どもを養子として迎え入れることで、親権者になることができます。
- 未成年後見人制度:親が死亡したり、親権を喪失した場合、家庭裁判所が未成年後見人を選任し、その人が子どもの監護や財産管理を行います。
- 親権喪失・停止:親が虐待や育児放棄をしている場合、家庭裁判所が親権を喪失・停止させ、別の親族や後見人が子どもの養育を担うことがあります。
(参考)裁判所HP
家族とはなんでしょうか
社会の一番最小単位が家族です。生まれてから自立するまで、人は家族の中で生まれ成長します。そこで両親や兄弟姉妹から愛情を受け守られ監護され、衣食住を与えられ教育を受け、大人になっていきます。子供にとって家族を選ぶことはできません。物心がついた時には既にあるものとして存在するからです。今は様々な家族の形態がありますが、もし自分を生んで育ててくれた親以外に、自分に関心と愛情を向けてくれる人が現れたら、その人たちとの交流こそが自分の居場所、家族だと感じる人もいるのではないでしょうか。
このブログでもたびたび「家族とはなんでしょうか」と問いかけてきました。血がつながらなくても家族なのか。長い時間と思い出を共有したら家族になるのか。
またこの映画の趣旨とはずれますが、現在日本では子供の幸福度が著しく低下していることがわかっています。悲しいことですが子供の自殺率も上昇しています。子供にとって、第三の居場所の確保が急務だという提言も出ています。
この映画は愛の映画です。激動の時代に生きる私たちですが、誰かを思いやる強さや優しさを大事にしたいと思える映画でした。
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