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5.302025
ドラマ「晩餐ブルース」から誰かと食事を共にする豊かさと幸福度との関係性について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ53】

ドラマ「晩餐ブルース」から誰かと食事を共にする豊かさと幸福度との関係性について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ53】
- ドラマ「晩餐ブルース」のドラマ概要とあらすじについて
- 若い世代の幸福度が下がっている
- 味の素とギャラップ社が行った「調理の楽しさ」「共食」とWell-beingとの関係を示すグローバルな調査の結果をみてみよう
- 食事を作る事でも、誰かと食事を共にすることでも幸福度はあがる
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
ドラマ「晩餐ブルース」のドラマ概要とあらすじについて
ドラマ『晩餐ブルース』は、2025年1月22日からテレビ東京系列で放送された深夜ドラマです。井之脇海さんと金子大地さんがダブル主演を務め、夢を叶えたものの仕事に忙殺されるドラマディレクターと、料理人を辞めて自宅に引きこもる生活を送る旧友が再会し、晩ご飯を共にすることで心を回復させていく物語です。テレビ東京の深夜ドラマ枠では今までも「孤独のグルメ」、「きのう何食べた?」など「食」をテーマにしたユニークで心に染み入る番組を作り続けています。本作品のプロデューサーは「すきやき」の本間かなみ、『晩餐ブルース』の制作スタッフには、実力派の脚本家や監督が集結しています。非常に丁寧に作られた作品で、作品の随所に細かいところにまでこだわって作られており、制作スタッフの心意気を感じました。
田窪優太(井之脇海)はテレビ局で働きながらも、日々の仕事に忙殺され、食事をとることも忘れてしまうことがあります。あまりにも多忙な生活を送り続け、かつての仕事への情熱を失っていました。一方、佐藤耕助(金子大地)は料理人として順調だったものの、熾烈な料理人同士の競争の中で同期を見捨ててしまい、その罪悪感から突然その道を離れ、無気力な日々を過ごしていました。そんな二人が高校時代の旧友、蒔田葵(草川拓弥)の離婚をきっかけに再会し、晩ご飯を共にする「晩餐活動(晩活)」を始めることで、少しずつ自分らしさを取り戻していきます。また三人がそれぞれ抱える課題にも向き合っていくことになります。当初優太は食事を燃料補給と考えていましたが、耕助が作ってくれたカレーライスを初めて食べた時、その温かさに驚き、次に美味しさに驚き、知らずに涙が頬を伝わります。食事を三人で作り食卓を囲む中で優太は自らの身体性を取り戻していきます。自分がとても疲れていて体調に変調をきたしていることに気が付き、最終話では休職することを決意します。
どの食事も本当においしそうで、観ているとお腹が空いてきます。また食を通じて、色んな人がつながっていきます。最終的には休職を選ぶという非常にデリケートな内容を扱ってもいますが主人公の身体性を取り戻す中で最善の流れとなっています。優太の同期のプロデューサー、上野ゆいを取り巻く環境も描き方もリアルです。今の現代社会の過酷さ、その社会で消費されてしまう若者たち、そして再生への道が描かれています。意欲的な作品となっています。テレ東のドラマはどの作品も大好きですが、特に音楽のセンスが好きです。
(出所)番組公式HP、Wikipedia、あしたメディアインタビュー記事
若い世代の幸福度が下がっている
日本でも若い世代の幸福度が下がっていることが話題になることが増えてきましたが、この傾向は全世界的に起きている現象のようです。特に日本の子供たちの幸福度が下がっており、自殺率があがり危機的問題として捉えられています。30歳未満の幸福度も下がってきていることがわかっています。
そして特に日本の子ども・若者の「精神的幸福度」が、世界各国と比べると著しく低いということがわかってきました。
(出所)NHK記事から日本ユニセフ財団
世界幸福度2025年のランキングでは、日本は55位で、前年の51位から4ランク下がりました。
2025年の世界幸福度調査では、「思いやりと分かち合いが人々の幸福に与える影響に焦点を当て」ています。また互いに思いやり、分かち合う普遍的な方法が「食事」であり、一人で食事をすることが健康に良くないことが記されています。
また、特に若者の幸福度に影響を与えているものとして、「孤独感」もあげられています。「孤独感の増加傾向は、若者の間で最も顕著です。2023年には、世界中の若者の19%が、頼れる社会的支援者がいないと回答しており、これは2006年と比較して39%増加しています。」(レポートから一部そのまま抜粋)
従来、幸福度はU字型を描くとされてきました。10代から20代にかけて幸福度はあがり、30代から50歳にかけ幸福度は低下し、その後幸福度は上昇していくとされていました。そのため、孤独の問題は主に高齢期の問題と認識していましたが、今は孤独の問題は、全世代共通の問題で、現代では特に若い世代で大きな問題になっています。
(出所、参考)2025年世界幸福度調査結果、NHK記事、BBCニュース
味の素とギャラップ社が行った「調理の楽しさ」「共食」とWell-beingとの関係を示すグローバルな調査の結果をみてみよう
今回の晩餐ブルースでは、高校の同級生の三人が、「晩活」食事を一緒に食べる活動を行い、ただ、友人と食事を共にすることが目的で、その中で三人それぞれの問題や置き去りにしてきた問題に向き合うことになります。ドラマの中では、三人で特売デーに買い物をし、食事を作る風景も描かれ、おいしそうで温かい湯気があがる食事風景も、観る楽しみの一つでした。
味の素とギャラップ社が連携して行った調査では、「共食」誰かと共に食事をすることが、幸福度に大きな影響を与え、それは収入や失業と並んで、主観的幸福感の非常に強力な指標であることが証明されています。
味の元の調査結果レポートでは、食事を誰かと共にするだけでなく、料理を楽しんでいる人の方がウェルビーイングは向上することがわかっています。
(出所)味の素HP
ドラマの中で、優太は先輩社員の木山に「見栄も嘘もいらない。食パン一斤もらったら分け合えるような相手、木山さんにもいませんか?」と問いかける場面があります。まさに幸せとは、パン一斤をもらった時に、分け合いたい人の顔がすぐに瞼に浮かび、オーブントースターでただ厚切りに切ったパンにバターをのせて一緒に食べる瞬間なのかもしれません。
世界幸福度調査結果の中で、アメリカ人が一人で食事をする時間がますます増えているという明確な証拠が見つかったそうです。2023年には、アメリカ人の約4人に1人が前日にすべての食事を一人で済ませたと回答しており、これは2003年から53%の増加です。一人食はあらゆる年齢層で増加していますが、特に若者の間で顕著です(世界幸福度調査から一部そのまま抜粋)
ラテンアメリカなどの大家族で、家族の絆が強い人たちの幸福度が非常に高いそうで、共に食事を行い、信頼できる家族と絆を深めていることが幸福度の要因だそうです。
日本では単独世帯が増加し、1世帯の人数が減少し、家族も小規模化しています。
血縁、地縁のコミュニティが衰退してしまった日本では、どのように地域や趣味のつながりを再構築していくのか、コミュニティの復活が必要だと思いました。
(出所、参考)World Happiness Report、味の素HP、Forbesブランドボイス
食事を作る事でも、誰かと食事を共にすることでも幸福度はあがる
きっと誰もが、自炊をして、誰かと一緒に毎食を囲めることができれば、これ以上幸せなことはない。しかし、限りある時間の中で様々なことをする必要があり、仕方なく、自分の食事を一番後回しにせざるを得ない人が大半ではないかと思います。
ドラマの中で上野さんが、「噛むと疲れるから」というのは、食事にかける注意もエネルギーも最小にして、他の優先度が高い課題に全力で取り組む必要のある。そんな日々は現代人であればみな思い当たるのではないでしょうか。
「きのう何食べた」の中でシロさんが、「食事というのは、一日三度、自分で自分の幸せを最大化できるイベントだ」というようなセリフがありましたが、週に一度でもいいので、自分が好きなもので、美味しいものを、自分の大切な誰かと一緒に食べる。そして食事の間は目の前の食べ物と食事相手と自分の五感に集中してみる。
なおざりになりがちな食事ですが、私自身も「晩活」意識してみたいと思います。
晩餐ブルース、とても好きで大事な作品になりました。
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