ブログ

映画「おじいちゃん、死んじゃったって」から、お葬式の意味、グリーフケアについて考えてみよう。【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ⑦】

映画「おじいちゃん、死んじゃったって」から、お葬式の意味、グリーフケアについて考えてみよう。【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ⑦】

 

  • 「おじいちゃん、死んじゃったって」の映画概要とあらすじについて
  • お葬式の意味、葬儀の役割とはなんだろう
  • グリーフケアという言葉をご存じですか
  • グリーフワークについて、J・W・ウォーデンの4つの課題をみてみよう

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

「おじいちゃん、死んじゃったって」の映画概要とあらすじについて

 

「おじいちゃん、死んじゃったって」は2017年制作の映画です。脚本家は山崎佐保子氏、監督は森ガキ侑大氏です。両名とも1980年代前半の生まれで、本作制作当時は30代前半でした。本作は「第21 回 タリン・ブラックアウト映画祭 NETPAC 賞(最優秀アジア映画賞)」、「第39 回ヨコハマ映画祭 森田芳光メモリアル新人監督賞 森ガキ侑大監督」「第39 回ヨコハマ映画祭 最優秀新人賞 岸井ゆきの」、第24 回ヴズール国際アジア映画祭にて、日本人初の快挙となる<国際審査員グランプリ>を受賞しました(引用:アネモHP)。

本作は、ある日突然祖父が亡くなり、岸井ゆきのさん演じる吉子(よしこ)が祖父の死を告げる電話を取り次ぎます。その電話を機に、病院へ駆けつけ、亡くなった祖父と面会し、日ごろ疎遠な親戚(伯父叔母いとこたち)に短いひと時再会します。限られた時間の中で悲しみよりも、葬儀の事務的な段取りを進める父親や伯父に違和感を抱きながらも、葬儀が進む時間の流れを日本の田舎の美しい風景をちりばめながら描かれます。またこの短い葬儀を行う時間の中で、個々人の抱える問題点や兄弟間の確執、不平不満などが赤裸々に露呈していきます。そんな家族同士のいざこざの中、無事に祖父を見送り、家族が祖父を見送る過程で、新しい日常へと変化していく姿が描かれています。

脚本家、監督の若くみずみずしい感性、岸井ゆきのさん初主演作での印象的な演技、個性的で確かな演技力を持つ俳優さんが多数出演されていて、独特で存在感のある映画となっています。認知症を発症し意思疎通が難しくなった祖母が時々に正気を取り戻す姿、孫たちが優しい祖父母の思い出を話し合う情景、葬祭の場では女性が裏方に徹し、見事に場を仕切る姿などが描かれ、自分の思い出と重なるリアルな瞬間もあります。

 

 

お葬式の意味、葬儀の役割とはなんだろう

 

ここではお葬式の役割を、全日本葬祭業協同組合連合会(令和5年7月現在、会員 全国56事業協同組合、所属員 1,235名、日本最大の葬祭事業者の組織)の「葬儀業界の現状」という資料を基に考えてみようと思います。

本資料の中で、葬儀の役割は大きく5つに挙げられています。

  1. 社会的役割(死を社会に知らせる)
  2. 心理的役割(死を受容する)
  3. 教育的役割(死を実感する)
  4. 物理的な役割(遺体を葬る)
  5. 宗教的役割(死者をあの世:彼岸へ送る)

地域差もあると思いますが、以前は会社員のお葬式は会社が葬儀を手伝っていました。また人が亡くなると回覧板が回り、地域社会(自治会や班)が葬儀を手伝うことが日常的にありました。お葬式は社会的行為の側面も大きかったのです。また大切な人を失うことで深い悲しみや喪失感を抱える人もいると思いますが、臨終、通夜、葬儀、告別式という葬送儀礼の中で、死を受容し、受け止める。家族にとっては葬送儀礼を執り行うことで、自分たちの心にも区切りをつけ、死を受け入れるという、心のケアのプロセスであるともいえます。

大事な人を亡くした方が、亡くなってから三回忌までに、葬送儀礼が複数あり、段取りを考え儀礼を執り行っていたら、あっという間に三回忌が過ぎていた。という声を幾度か聞いたことがあります。

 

 

グリーフケアという言葉をご存じですか

 

グリーフとは、喪失と立ち直りの思いとの間で揺れる時のことを言います。

死別を経験しますと、しらずしらずに亡くなった人を思い慕う気持ちを中心に湧き起こる感情・情緒に心が占有されそうな自分に気づきます(喪失に関係するさまざま思い:「喪失」としてまとめます)。また一方では死別という現実に対応して、この窮地をなんとかしようと努力を試みています(現実に対応しようとする思い:「立ち直りの思い」としてまとめます)。この共存する二つの間で揺れ動き、なんとも不安定な状態となります。同時に身体上にも不愉快な反応・違和感を経験します。これらを「グリーフ」と言います。グリーフの時期には「自分とは何か」「死とは…」「死者とは…」など実存への問いかけをも行っています。

このような状態にある人に、さりげなく寄り添い、援助することを「グリーフケア」と言います。(上記原文引用:)一般社団法人日本グリーフケア協会

悲嘆(グリーフ)は、「喪失に対する全人的な反応(精神的、行動的、社会的、 身体的、スピリチュアル)、その経験のプロセスである。」(テレーズAランド)

 

またグリーフ(悲嘆)の一般的な反応としては以下の表で表されています。

(出所)児医療機関スタッフのための子どもを亡くした家族への支援の手引き

大切な人を失った悲しみは大変深いものですが、非常に個人的な経験のため、指紋や声紋のようにその方唯一の悲しみであり、ご本人を取り巻く周りの人がご本人と同じように気持ちを理解するのは、困難です。しかし、大切な人を失った際に、人は大変悲しみ深い悲嘆を感じる、という事実に寄り添えることが周りの人たちに求められることかもしれません。

 

 

グリーフワークについて、J・W・ウォーデンの4つの課題をみてみよう

 

大切な人を失い、遺された人たちがグリーフ(悲しみ)に向き合い、折り合いをつけ、時間をかけて意味を見出していく作業をグリーフワーク(喪・悲嘆の仕事・作業)といいます。J・W・ウォーデンによると、グリーフワークの中で、遺された人たちが4つの課題に向き合い、遂行する中で、喪の作業を行うとされています。この作業は直線的に行われるのではなく、行きつ戻りつしながら、時間をかけて行われると考えられており、この4つの課題が全て遂行できた時に、喪失対象について苦悩なく思い出すといわれています。

(出所)児医療機関スタッフのための子どもを亡くした家族への支援の手引き

 

本映画で描かれていることは、グリーフワークとは違うかもしれませんが、祖父の死という現実が儀式の中で、徐々に思い出と交差しながら、個々の家族との軋轢の中で具体化し、最後遺影を持ちながら家族写真を撮り、親族が別れ、それぞれの新たな日常に戻ります。

もうすぐお盆ですね。お盆も、ご先祖様、故人と向き合うグリーフワークなのかもしれません。

認知症・成年後見制度に関しては、他にも記事があります。よければこちらまでご覧ください

関連記事

ページ上部へ戻る