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耳の遠くなった高齢の親に補聴器を贈った、オリラジ藤森さんの記事から考えてみよう【気になる記事ブログ⑬】

耳の遠くなった高齢の親に補聴器を贈った、オリラジ藤森さんの記事から考えてみよう【気になる記事ブログ⑬】

 

  • 親の「耳が遠くなった」問題に補聴器という解決法を提示したことの意義
  • 認知症と難聴に関係があることをご存じですか
  • 難聴を意識している人が実際に病院に検査に行った割合は40%弱。実際に補聴器を購入した人は15%
  • 「案ずるより産むが易し」のことも

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

親の「耳が遠くなった」問題に補聴器という解決法を提示したことの意義

 

オリエンタルラジオの藤森さんが、耳が遠くなった母親に補聴器をプレゼントし、親子の会話が増えたことをインスタグラムに投稿した記事が、ニュースになっていました。離れて暮らす母親と電話する際に、会話がかみ合わなくなったことが増え、母の日に補聴器をプレゼントしたそうです。

70代から80代の高齢の両親を持つ、子世代には両親の「耳が遠くなり、会話がかみ合わない」問題に直面している人は多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人です。

両親の「耳が遠くなった」ことを、老いの一つとして現状を受け入れている人も多いと思いますが、補聴器で聴力を回復するという解決策を、著名人がインスタグラムに載せたのには、大きな意味があると思います。

 

 

認知症と難聴に関係があることをご存じですか

 

ランセットというイギリスの医学誌によると、認知症の40%は修正可能な危険因子によるものであり、それら12の危険因子を改善することで理論上は認知症のおよそ40%が予防可能だという発表がありました。

 

<ランセット委員会発表の12の危険因子>

  1. 幼少期教育
  2. 高血圧
  3. 聴力低下
  4. 喫煙
  5. 肥満
  6. うつ病
  7. 運動不足
  8. 糖尿病
  9. 社会的孤立
  10. アルコール摂取
  11. 頭部外傷
  12. 大気汚染

この12の危険因子の中に「聴力低下」という項目があります。難聴が認知症に影響するメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、以下のような仮説があります。(参考資料)東京逓信病院耳鼻咽喉科HP一般社団法人全国地域生活支援機構HP

 

  • 難聴によって脳への刺激が減り、脳の萎縮や神経伝達物質の減少などが起こる。
  • 難聴によって会話や社会活動が困難になり、社会的孤立やうつ病などを引き起こす。
  • 難聴によって脳が音声処理に多くのエネルギーを使い、記憶や判断など他の認知機能に回せるエネルギーが減る。

 

耳が遠くなると、コミュニケーションの量が減り、脳の刺激が減ってしまい、脳の機能が低下してしまう恐れがあります。使わないと機能が低下してしまうのは、脳だけでなく、基本的には人間の全ての身体的機能がそうです。

もし、補聴器でコミュニケーションンの量が増え、脳の機能を保つことができたら、認知症への危険因子を一つ減らすことができます。

 

 

難聴を意識している人が実際に病院に検査に行った割合は40%弱。実際に補聴器を購入した人は15%

 

一般社団法人日本補聴器工業会と公益財団法人テクノエイド協会は、EHIMA(欧州補聴器工業会)の協力を得て、日本における難聴や補聴器装用の実情調査「JapanTrak(ジャパントラック)」を2012年、2015年、2018年、2022年に実施しました。この調査は補聴器ユーザーと難聴者の大規模調査で、実際「難聴」と自己申告している人が実際に病院に検査に行った割合は4割弱となっており、6割の難聴を自覚している人は、病院に行っておらず、現状の耳が遠い状態で、何の手立ても打たず、日々を過ごしていると推察されます。また最終的に補聴器を購入した人は15%とで、病院の検査から補聴器購入する人は、病院に行った中の4割以下で、実際の補聴器購入への敷居は高いと言わざるを得ません。

しかし、補聴器を購入しなかった人は、かかりつけ医や専門医から「不要」と診断された8割を超えていたというデータもあります。

藤森さんが、「半ば強引にプレゼントした」とありますが、背景にはこのような補聴器購入率の低さがあり、「本人に任す」より、ある程度家族が介入した方が、補聴器購入率はあがる可能性があります。

 

(出所)APAC Trak JapanTrak 2022 調査報告

調査主体:一般社団法人 日本補聴器工業会 後援 :公益財団法人 テクノエイド協会 協力 :EHIMA 欧州補聴器工業会

 

 

「案ずるより産むが易し」のことも

 

「耳が遠くなった」ことと認知症に因果関係がある可能性を、ランセット委員会で指摘されています。「耳が遠くなった」ことで脳への刺激が減り機能が使用されなくなることによる可能性もあげられています。しかし、実際耳が遠くなったと認識する人が、かかりつけ医や耳鼻咽喉科に行く人は40%弱、実際に補聴器を購入する人は15%と、補聴器購入への敷居は高いものがあります。しかしこの記事にあるように藤森さんが、母親に補聴器をプレゼントしたところ、実際使ってみたら、以前より音が聞こえるようになり、親子の会話が増え、生活が楽しくなったと母親に喜ばれたそうです。また私の場合は、母親に集音器をプレゼントしたところ、目の前で何の抵抗もなく集音器を耳にセッティングし、やはり音が聞こえるようになったそうです。喜んだのは母親より父親で、「これでキッチンで会話ができるようになるね」と言っていました。父親にとっても家庭内での唯一の話し相手である母親の耳が遠いことは、コミュニケーションがとれず寂しい事だったようです。

しかし、実際に集音器を装着すると、うまく耳に入らないとか、雑音が入るとか、充電の仕方がわからないなど、慣れるまでには時間が必要です。私自身も母親が集音器に慣れ、途中でやめてしまわないように見守り、何がネックになるかコミュニケーションを図りながら見極めていきたいと思っています。今は順調のようです。

 

まずは、「耳の遠くなった両親」にはかかりつけ医や耳鼻咽喉科で聴力検査をして現状を把握してから、次のアクションをどうするのか決めてみるのが良いのかもしれません。

認知症・成年後見制度に関しては、他にも記事があります。よければこちらまでご覧ください。

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