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【遺留分】という制度をご存じでしょうか。【遺言書初めの一歩⑥】

【遺言書初めの一歩⑥】では財産の分け方について決める方法についてみてきました。遺言書は、自分の財産を誰に何をどのぐらい残すのかを法的効力のある書面に残す意思表示になるため、遺言書があれば、遺言書が財産分けについて最も効力のあるものになります。しかし遺言書がない場合は、相続人全員で財産の分け方を話し合い、合意をとることになり、この話し合いを遺産分割協議といいます。また被相続人に一人に対し、法定相続人は民法により規定されており、誰もが相続人になれるわけではありません。財産の分け方の基準として、法定相続分という考え方があり、財産の分け方の参考になります。

遺言書を作成する上で注意が必要となる制度があります。「遺留分」です。今回は「遺留分」という制度について民法の条文と共にみていきましょう。

 

 

  • 遺留分とは

  • 遺留分とは誰に与えられた権利なのか

  • それぞれの遺留分の割合は

  • 具体的なケースをみていきましょう

  • 遺留分の権利も時効で消滅する?

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

遺留分とは

 

遺言書がある場合には、そこに書かれた分け方が優先されますが、例えば一人に全財産を相続させるなどの内容では他の遺族が困ることがあります。そこで法律では、一定の相続人が最低限相続できる相続分として遺留分を定めています。

複数の法定相続人がいる中、仮に遺言書で一名のみに全財産を相続させる、と明記しても法定相続人が自分の遺留分を請求すれば、遺留分は相続できます。

 

 

遺留分とは誰に与えられた権利なのか

 

遺留分は、配偶者と子(孫)、そして父母(祖父母)の直系尊属に保証されています。

兄弟姉妹には遺留分の権利はありません。

子供のいない夫婦のどちらかが先に亡くなった場合、法定相続であれば、妻(夫)に3/4、被相続人の兄弟姉妹に1/4と規定されていますが、遺言書で、「全財産を妻(夫)に相続させる」という遺言書があれば、兄弟姉妹は遺留分がないので、妻(夫)が全財産を相続できます。

 

 

民法1042条(遺留分の帰属及びその割合)

兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。

一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一

二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一

 

 

それぞれの遺留分の割合は

配偶者と子(孫)の場合は、相続財産の1/2です。

父母(祖父母)の直系尊属の場合は、相続財産の1/3です。

以下の図で確認してみてください。

 

 

 

具体的なケースをみていきましょう

 

例えば相続人が妻と二人の子である場合、被相続人の夫が第三者へ全遺産を相続させる遺言書を残したとしても、

遺留分請求を法定相続人である、妻と子供たちが行えば、妻の遺留分は遺産全体の1/4、子一人当たりの遺留分は1/8を

相続することができます。

この場合、1/4+1/8+1/8=1/2となり、遺留分を行使すると、配偶者と子で被相続人の半分の遺産を請求し相続することができます

 

 

遺留分の権利も時効で消滅する?

 

遺留分の権利は一定期間内に請求しないと有効になりません。

1年、もしくは10年

 

民法第1048条 (遺留分侵害額請求権の期間の制限)

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

 

 

以上、遺留分についてみてきました。

遺言書で自分が好きなように財産分与の割合を決められますが、法定相続人には遺留分という権利が与えられています。そのため遺留分に留意・配慮し、自由意志で決める事のできるものではありますが、自分の思いだけでなく残された人のその後の人生にも想像力がもてる遺言書であれば、尚素晴らしいのではないでしょうか。

当事務所では遺言に関する業務も行っています。お困りごとなどありましたらお気軽にご相談ください。

 

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