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【成年後見制度】利用しやすく見直し検討へ 小泉法相 ~NHKニュースの記事から考えてみよう【気になる記事ブログ26】

【成年後見制度】利用しやすく見直し検討へ 小泉法相 ~NHKニュースの記事から考えてみよう【気になる記事ブログ26】

 

  • 記事の概要をみてみよう
  • 現在の成年後見制度の利用者数など、現状をデータでみてみよう
  • 第二期成年後見制度利用促進基本計画をみてみよう
  • 超高齢社会に向けて、社会制度改革が加速しています

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

記事の概要についてみてみよう

 

小泉法務大臣は、認知症や精神障害、知的障害の等の人に代わって財産の管理などを行う「成年後見制度」について、今後高齢化が一層進み、それに伴い必要性が高まるとして、より利用しやすい制度への見直しを検討するよう、法制審議会に諮問することを明らかにしました。

成年後見制度は、一度制度を利用すると、成年被後見人の方が亡くなるまで、利用し続ける必要があり、途中で終わりにしたり、担当を他の人に交代することができません。交代可能な場合としては、後見人が被後見人の財産を不正に利用した等のケースに限定されています。利用者からは「使いづらい」という声があがっており、小泉法務大臣も、記者会見で「制度の利便性を考えた時に改善の余地があると考えられる。世の中の変化に応じた制度になるよう議論してほしい」と述べ、より利用しやすい制度への見直しを検討するよう、法制審議会に諮問することを明らかにしました。

また、同時に今は自筆証書遺言では、全文(財産の明細を記載する財産目録は除く)自筆で書く必要がありますが、高齢者の負担を考え、遺言書の作成について、デジタル化も含め負担軽減に必要な見直しを検討するよう諮問する考えを示しました。

(出所)NHKニュースから一部抜粋、加筆

 

 

現在の成年後見制度の利用者数など、現状をデータでみてみよう

 

まずは日本の高齢者の全体像からみてみましょう。令和4年の65歳以上の高齢者数は3623万人です。平成29年版高齢社会白書では平成24(2012)年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)でしたが、37(2025)年には約5人に1人、700万人になるとの推計もあります。次に成年後見制度は介護保険制度と共に2000年に始まりました。介護保険サービスの令和4年の年間受給者数をみてみましょう。令和4年5月審査分から令和5年4月審査分(以下「1年間」という。)における介護予防 サービス及び介護サービスの年間累計受給者数をみると 65,857.7 千人(685万人)となっており、そのうち介護予防サービス受給者数は 10,352.0 千人(10万人)、介護サービス受給者数は 55,528.2 千人(55万人)となっています。最後に成年後見制度の利用者数をみてみましょう。令和4年12月末時点での成年後見制度の利用者数は245,087人です。2025年度に推定される認知症患者数が700万人という数字と比べると、成年後見制度の利用者数の24万人という数字は、1割にも満たない数値になります。また単純比較はできませんが、介護サービスの利用者数と比較しても、敷居の高い制度と人々から認識されている可能性があります。

(出所)最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況 ―令和4年1月~12月―

(出所)厚生労働省 高齢社会白書

(出所)厚生労働省 令和4年度 介護給付費等実態統計の概況

 

 

第二期成年後見制度利用促進基本計画をみてみよう

 

成年後見制度が、同時期に始まった介護保険サービスと比べてもなかなか利用が進まない原因が、「制度の使いづらさ」と言われています。私がお会いした高齢者の方たちからも、成年後見制度の使い勝手がよくないこと、実際成年後見制度を利用している家族やご本人からも、途中で後見人が変更できず対応に苦慮していることなどを、耳にします。そういう周りの声を聞いているせいか、成年後見制度に対する高齢者の方の反応も消極的です。このよう状況を打破しようと、成年後見制度を世の中に促進しようとする計画が、第二期成年後見制度利用促進基本計画です。基本計画の中で現状と成年後見制度の問題点があげられています。

第二期成年後見制度利用促進基本計画で尊厳のある本人らしい生活を継続するための成年後見制度の運用改善等が以下4点で述べられています。

(1)本人の特性に応じた意思決定支援とその浸透

(2)適切な後見人等の選任・交代の推進等

(3)不正防止の徹底と利用しやすさの調和

(4)各種手続における後見業務の円滑化

 

※成年後見制度利用促進基本計画とは

成年後見制度利用促進基本計画(以下「基本計画」という。)は、成年後見 制度の利用の促進に関する法律(平成 28 年法律第 29 号。以下「促進法」と いう。)第 12 条第1項に基づき、成年後見制度の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定するものであり、政府が講ずる成年後見制度利用促進策の基本的な計画として位置付けられています。

(引用)厚生労働省ワーキング・グループにおける委員意見等を踏まえた検討の視点

 

今回の小泉法相の成年後見制度の法制審議会に諮問を提言した記事は、この第二期成年後見制度利用促進基本計画の改善点を具体化する計画です。超高齢社会、2025年に認知症患者数が700万人前後と推計される中、成年後見制度の促進が僅々の課題と言えるでしょう。

(出所)厚生労働省 第二期成年後見制度利用促進基本計画・施策の実施状況等

 

超高齢社会に向けて、社会制度改革が加速しています

 

超高齢社会、多死社会による人口減少社会に突入しつつある昨今、相続の円滑化、人口減少による空き家などの管理不全住宅の増加の抑制施策、また継承者の居ない、一定の条件を満たした土地を国庫に帰属させる制度など、人口減少社会のための社会制度改革が加速しています。成年後見制度の改善も、その一つだと考えられます。以下最近行われた施工法等です。

 

  1. 令和4年3月25日  第二期成年後見制度利用促進基本計画
  2. 令和5年4月27日    相続土地国庫帰属制度
  3. 令和5年12月13日   空家等対策の推進に関する特別措置法
  4. 令和6年4月1日   相続登記の申請が義務化

これからは遺言相続問題、成年後見制度問題、空き家問題などを別々の問題として取り組むのではなく、人口減少社会の中では相互連携する問題として、トータルでお客様の問題に取り組める専門家として、私自身も知識と経験の研鑽に努めていきたいと考えています。

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