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【身寄りのない遺体の実態調査】厚労省、身寄りない遺体の実態調査へ 年度内に報告書 日経新聞の記事から最近の国の『終活』に関わる調査についてまとめてみよう【気になる記事ブログ30】

【身寄りのない遺体の実態調査】厚労省、身寄りない遺体の実態調査へ 年度内に報告書 日本経済新聞の記事から最近の国の『終活』に関わる調査についてまとめてみよう【気になる記事ブログ30】

 

2023年に総務省から、「身寄りの居ない人、もしくは親族と関係が断絶し、死後引き取り手のないご遺体と遺留金に関する調査」、「身寄りのない高齢者の方が入院時や介護施設入居時に支援を行う身元保証等高齢者サポート事業」、「墓地行政および継承者が不在もしくは不明のまま管理されなくなってしまった無縁墳墓」など、これから誰もが高齢期になり直面する可能性のある、「身元保証」、「無縁仏」、「無縁墳墓」などについて、実態調査が行われ報告書が発表されました。そして「身寄りのない遺体の実態調査」がこの度厚生労働省で行われることになりました。これらの「高齢期終末期の医療、身元保証」、「お葬式」、「お墓」は「終活」の項目とも重なり、エンディングノートで自分の意思や希望を書く内容でもあります。今回、上記の調査を時系列で、どのような調査だったのかみていきたいと思います。またなぜ今この時期に終活に関わる実態調査が行われているのか、考察していきたいと思います。

※「無縁墳墓」とは市町村が自ら経営許可を受けた墓地・納骨堂 における死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂と定義します。

 

  • なぜ、今、終活に関わる調査が立て続けに行われているのでしょうか
  • 「引き取り手のない遺体、遺留金等に関する実態調査」の概要を振り返ってみよう
  • 「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」の概要を振り返ってみよう
  • 「墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として-」の概要を振り返ってみよう

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

なぜ、今、終活に関わる調査が立て続けに行われているのでしょうか

 

今回の問題点を語るには、少子高齢化による生産年齢人口の減少と、家族観、家族形態の変化が理由としてあげられるのではないでしょうか。

現在少子高齢化が急速に進み、超高齢社会となり、多死社会を迎えています。多死社会のピークは2040年で死者168万人と予想されていますが、2060年ぐらいまでは高水準で亡くなる人が多い推計です。そして2070年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は39%の水準になると推計されています。実際生まれる人と亡くなる人が逆転し、人口の自然減となったのは、2007年です。

15歳から64歳までの生産年齢人口が著しく減る中で、高齢者の終末期から旅立ち後にかかる行政手続きを行うマンパワーが現実的に不足し、今後生じる問題を事前に解消しようという狙いもあると思います。先日2040年に介護士が57万人不足というニュースもありました。

また次に家族観、家族形態の変化ですが、都市部への人口流出、地縁血縁が希薄化し、地域で助け合うという文化も機能しなくなってきています。家族の繋がりも薄くなり、家族を形成する人数も減ってきています。2040年には単独世帯化4割を超えるデータもあります。そんな社会では誰もが高齢期に一人になる可能性があり、家族に頼ることができない状況も生まれるかもしれません。

今の日本では、身元保証、死後事務、相続などは全て家族や血縁親族が前提条件となっており、今の社会状況と規定する法律があわず、また法令なども未整備な部分もあり、各自治体に対応を委ねている部分もあり、国として指針を出す必要があると報告書では述べられています。

(出所)令和2年版 厚生労働者白書

 

 

「引き取り手のない遺体、遺留金等に関する実態調査」の概要を振り返ってみよう

 

■報告書発表日

令和5年3月28日

 

■実施省庁

総務省行政評価局

 

■調査概要

総務省は、引き取り手のない死亡人の葬祭等を行う地方自治体の事務や費用が増大している状況化で、引き取り手のない死亡人(105,773人)の遺留金の有無、葬祭の有無、葬祭費用への 遺留金品の充当(預貯金の引き出しの実施状況)、充当後に残った 遺留金品の処理などを調査しました。状況としては、預貯金の引き出しに関しては、金融機関で対応が異なり、基本相続人のみの引き出しという判断のところが多く、相続人以外の預貯金引出の法的根拠が不明で、引き出しは困難という結果も多数報告されています。また、身寄りが居ても関係断絶により、遺骨の引き取り拒否、葬祭費用の請求も難しく、葬祭費用が相続人から回収できず自治体が対応に苦慮していることがわかりました。

 

行旅死亡人、墓埋法適用死亡人の場合、葬祭費用は、市区町村が一時繰替支弁し、死亡人の遺留金、相続人等による弁償、 遺留物品の売却の順で負担し、なお不足の場合は都道府県が弁償等行う法律があり、市区町村が葬祭費用を一時負担するものの、相続人から費用負担を断れられ、都道府県が弁償などを行い、費用負担となっています。

平成30年4月1日から令和3年10月末日までの引取者のない 死亡人件数は、合計で約10万6千件、令和3年10月末日時点の市区町村における遺留金の保管額は、 約21億5千万円と報告されています。

 

■本ブログでの紹介記事

引き取り手のない死者、3年半で10万6千人【気になる記事ブログ⑥】

「無縁遺骨」、全国に6万柱 引き取り手ない人の葬祭費、自治体圧迫【気になる記事ブログ⑦】

 

(出所)総務省 「遺留金等に関する実態調査」の結果に基づく勧告総務省

 

 

「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」の概要を振り返ってみよう

 

■報告書発表日

令和5年8月7日

 

■実施省庁

総務省行政評価局

 

■調査概要

少子高齢化、家族観・家族形態の変化に伴い、身寄りのない、頼れる親族がいない高齢者の入退院時や介護施設の入居の際に必要な身元保証サービスが、年々需要を増しています。しかし現状身元保証サービス事業を管轄する省庁も法律もない状況で、利用者と事業者の間の法的トラブルも問題になっています。その状況に対応すべく、調査に協力の得られた204事業者※を対象に調査を実施しました(実地調査: 88事業者、書面調査:116事業者)

調査の結果、以下7点の問題があげられ、(1.契約手続、手順、2.預託金の管理状況、3.判断能力が不十分になった場合の財産管理の取り扱い、4.契約履行の確認、担保、5.契約の解約と返金ルール、6.寄附・遺贈の取扱い、7.地方公共団体等における住民への情報提供(事業者やサービス内容を選ぶ上で注意すべきポイント)

本調査では、契約時の重要事項説明書の作成状況が全体の2割強であること、契約条件に寄付や遺贈が組み込まれているケース、死後の事務手続きの履行状況については契約者が確認できないことなど、そもそも身元保証サービス事業者を管轄する省庁や法律がない点などが問題点としてあげられました。

しかし、本提言については、高齢者等終身サポート事業に関する事業者ガイドラインが令和6年6月に発表され、問題的について回答を示しています。しかし高齢者等身元保証サービス事業についてはまだまだ整理が必要な分野で、これから調整が進むと予想されます。

 

■本ブログでの紹介記事

身元保証の記事はこちらです。よければご覧ください。

 

(出所)総務省 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査

(出所)内閣官房等 高齢者等終身サポート事業に関する事業者ガイドライン

 

 

墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として-

 

■報告書発表日

令和5年9月13日

 

■実施省庁

総務省行政評価局

 

■調査概要

墓じまいを検討、もしくは実施する墓守世代が増えてきました。自分の子供の世代には、自分たちと同じ苦労をさせたくないと思う親世代が継承者不要のお墓を選ぶようになってきました。鎌倉新書の統計でも、一般墓を選ぶ人が減り、樹木葬や納骨堂など、継承者不要のお墓が人気という調査結果もあり以前ブログに記載しました。

今回の調査では、継承者=墓守がおらず、長期間管理されず、墓石が倒伏、不法時の温床の恐れになる可能性がある無縁墳墓について書面調査:全市町村<1,231市町村が回答>、実地調査:88市町村で調査を行いました。

結果、公営墓地・納骨堂で無縁墳墓等が発生しているのは58.2%(445/765市町村)と約6割の市町村で無縁墳墓が発生していることがわかりました。

また無縁墳墓等の発生抑制に重要である縁故者情報を把握している市町村は少数 (把握率2割未満が80.7%)ということがわかりました。無縁遺骨問題も同様ですが、相続人、縁故者を探すのが、非常に大変です。特に無縁墳墓は、倒壊の恐れ、墓石の問題などもあり、また無縁改葬するにあたっても縁故者に関わる情報を事前に把握する具体的な方法や無縁改葬後の墓石の取り扱い、保管期間の提示などが必要と報告書では提言されています。

■本ブログでの紹介記事

【墓地行政に関する調査】総務省の公営墓地における無縁墳墓を中心とした実態調査の結果から現状の課題について考えてみよう【データから考えてみよう⑰】

(出所)墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として-

 

以上、昨年に総務省から発表された主に終活に関わる「引き取り手のない遺体と遺留金の調査」、「身元保証サービス事業調査」、「無縁墳墓調査」について概要をみてきました。少子化対策も喫緊の課題と認識していますが、これから2060年に向け、確実に多死社会を迎えます。変化する世界、社会、家族構成、価値観に対応すべく、現状の問題点に向き合い、これからの新しい、「自分の死」にまつわるさまざまな慣習、老い方、弔い方、事務手続きなど、問題点が整理され、提言が行われています。行政や地方自治体だけでなく、私たちひとりひとりもこれからどうやって自分たちは高齢期を迎えるのか、終末期を迎えるのか、どのように弔って欲しいのか、主体的に自立的に考える時期に来ているのではないかと思います。

 

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