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映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」から、デジタル・デバイドと地域包括ケアシステムの構成要素、自助・共助・公助・互助について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ28】

映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」から、デジタル・デバイドと地域包括ケアシステムの構成要素、自助・共助・公助・互助について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ28】

 

  • 「わたしは、ダニエル・ブレイク」の映画概要とあらすじについて
  • デジタル・ディバイドとはなんでしょうか
  • 地域包括ケアシステムの構成要素、自助・共助・公助・互助とはなんでしょうか
  • ダニエル・ブレイクの最後のメモから、「人間の尊厳」について考えてみましょう

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

「わたしは、ダニエル・ブレイク」の映画概要とあらすじについて

 

『わたしは、ダニエル・ブレイク』はイギリスを代表する巨匠ケン・ローチ監督の2016年の作品で第69回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞しました。「そして、父になる」、「万引き家族」、「怪物」と数々の傑作を生みだした日本の巨匠、是枝裕和監督が、最も影響を受け、尊敬している人物はケン・ローチ監督と公言しています。ケン・ローチ監督は政治活動に熱心で、労働者階級や移民、貧困などの社会問題に焦点を当て、社会を炙り出す鋭い視点と日常生活をリアルに描く監督として知られています。

主人公のダニエル・ブレイクは真面目で実直な59歳のベテラン大工です。妻を看取ったあと、自身も心臓病を発症し、医者から就労を禁止されています。働くことができないため、国の制度「雇用支援手当」を受給しようとします。しかし、給付金マニュアルの質問項目ではダニエルは就業可能と判断され、雇用支援手当が受給されず、直接行政機関に足を運び、今度は「求職手当」の受給申請を行おうとしますが、インターネットからしか申し込めず、また別のインターネットを無料で使える施設で、何とか周りに助けてもらいながら申請を行おうとしますが、最後の申請ボタンを押そうとするたび、エラーが表示され申請できません。このあたりの複雑な手続きや難解な制度、デジタル化の加速する今日、インターネットが使えず苦労したことがある人は、たくさん居るのではないでしょうか。

また、自身の問題で行政機関に足を運んだダニエルですが、偶然二人の幼い子供を支えた若いシングルマザーのケイティが、引っ越したばかりで街に慣れず予約時間に遅刻していまい、給付金が減額されてしまう場面に遭遇し、ダニエルは憤り「少しは融通を利かせろ!」と声を荒げます。しかしそのせいで、ダニエルはケイティとともに役所から退去させられてしまいます。それがきっかけとなり、ダニエルとケイティ、ケイティの二人の子供と交流が始まります。ケイティも若いシングルマザーで生活が厳しく、ロンドンでは生活ができず、ニューキャッスルの古い家を借りて生活を始めたばかりでした。ダニエルは得意な大工仕事と今までの経験を駆使し、ケイティと子供たちの家を快適な家にリフォームしていきます。

しかし、二人とも生活状況は悪化するばかりで、とうとうケイティは自分の身体を売る事を決意し、ダニエルは求職手当も受給できず、自分の家具を売り、自暴自棄になり、役所の壁に「私はダニエル・ブレイク、飢える前に申し立て日を決めろ!」と、落書きし、警察に捕まります。ケイティの売春を止められず交流を絶っていたダニエルですが、ケイティの娘のデイジーが訪ねてきて、「前、助けてくれた?」「今度は助けさせて」とダニエルに訴えかけます。ダニエルの窮状を知ったケイティが代理人を探し、ダニエルの支援手当回復の申し立てを行う日がやってきました。しかし直前にダニエルは心臓発作で亡くなってしまいます。

非常にリアルな描写で、映画ではなく現実の世界を一時的に垣間見ている気がしました。実直で真面目な人たちが、複雑で難解な社会制度や仕組みに対応できず、やり方がわからず追い詰められていきます。突然で悲しい結末を迎えますが、実直に懸命に、困っている隣人に声をかけ、温かで優しい関係を作っていく過程、ダニエルの死を深く悲しむ人たちがいます。ダニエルは最後まで真面目で実直で誠実な人でした。

一つの過酷な現実の形だとは思いますが、私は、ダニエルやケイティのような行政手続きで困っている人の助けになりたくて、行政書士になりました。自分ができることを私もダニエルのように真面目で実直で誠実にやり切りたいと思いました。

(出所)Wikipedia有限会社ロングライド

 

 

デジタル・デバイドとはなんでしょうか

 

劇中で描かれていたダニエルが、雇用支援手当の申請で一番大変でストレスが高かったのは、インターネットの使い方です。ダニエルは映画の中で、「インターネットは使えないが、大工仕事はできる」というフレーズがありましたが、行政手続きのデジタル化は、日本でも大きな課題の一つであり、少子高齢化で生産人口がますます減っていく未来では、人手不足解消にますますデジタル化が進んでいくでしょう。それに伴い、利用者のITリテラシー(ITに関する知識を適切に理解して活用する能力)も求められていくことになるでしょう。

上記のような高いITリテラシーが求められる社会では、デジタル・デバイドが喫緊の課題となっています。

デジタル・ディバイドとは、「インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差のこと」を言います。この言葉は、国内法令上用いられている概念ではありませんが、一般に、情報通信技術(IT)(特にインターネット)の恩恵を受けることのできる人とできない人の間に生じる経済格差を指し、通常「情報格差」と訳されます。

(出所)総務省資料外務省HP

日本でもコロナ禍でのワクチン接種の予約がインターネットを通じての接種予約がメインとなり、同居家族や親族が高齢者の代わりにインターネットから接種予約ができるケースなどを別にして、インターネットが使用できないお年寄りが電話予約に殺到したというニュースがありました。

内閣府が実施実施する「利用動向調査」によると、個人の年齢階層別にインターネット利用率をみてみると、13歳から59歳までの各階層で9割を超えている一方、60歳以降年齢階層があがるにつれて利用率が低下する傾向にあることがわかります。70代以降は57.8%前後の利用率となっています。1995年にWindows95が発表され、パソコンの普及率が一気にあがったのが今から30年前です。その頃40代から50代を迎えている現在70代を迎えている世代にとってはインターネットの使用は非常にハードルが高いツールなのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

令和4年 情報通信に関する現状報告の概要

地域包括ケアシステムの構成要素、自助・共助・公助・互助とはなんでしょうか

 

今回映画では複雑で難解な社会制度、支援システムに翻弄され、次第に自分の尊厳を削がれていく厳しい現実が描かれていましたが、もう一方でダニエルとケイティと二人の子供との心の交流が描かれていきました。またそれ以外にもフードバンクで食品が支給されるシーンが描かれており、これはボランティア活動の一つで互助と言えるでしょう。またダニエルの隣人のチャイナは、ダニエルに「大丈夫か、なんでも言ってくれ。」と声をかけます。また別の知人からビールに誘われるシーンもあります。ダニエルの周りには困ったときはお互い様という人間関係があり、それぞれが誰かが困った時には手を差し伸べます。しかし、自分が困った時に助けを求めるのは、本当にとても難しいことです。

日本では、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で生活を継続することができるような包括的な支援・サービス提供体制の 構築を目指す「地域包括ケアシステム」という考え方があります。

高齢になっても自立した生活を継続し、住み慣れた地域で暮らしていくためには、「自助=自分」、「互助=家族・地域」、「共助=社会保険(介護保険など)」、「公助=福祉」といった、支援体制が重要となります。介護保険制度に依存したサービス体系に偏らず、「自助」「互助」の組み合わせが重要視されています。まさにダニエル・ブレイクで描かれていたのはこの互助のつながりです。地縁血縁のつながりが希薄化するこの現代で、どのように互助のつながりを作り、深めていくかが今後の日本の課題でもあるでしょう。

(出所)厚生労働省HPマイナビHP

 

 

 

ダニエル・ブレイクの最後のメモから、「人間の尊厳」について考えてみましょう

 

ダニエル・ブレイクは言います。「尊厳を失ったら人間はおしまいだ。」

そして最後、ダニエルが読むはずだった、メモをケイティが葬儀で読み上げます。

ダニエルの心の叫びであり、ダニエルと同じような思いを持っている方もいらっしゃるかもしれません。

 

『私は依頼人でも顧客でもユーザーでもない。怠け者でもたかり屋でも物乞いでも泥棒でもない。国民保険番号でもなく、エラー音でもない。きちんと税金も払ってきた。それを誇りに思っている。地位の高いものには媚びないが、隣人には手を貸す。施しは要らない。私は、ダニエル・ブレイク。人間だ、犬ではない。当たり前の権利を要求する。敬意ある態度というものを。私はダニエル・ブレイク、1人の市民だ。それ以上でもそれ以下でもない』

 

もし、行政手続きでお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所でも対応いたしますので、お気軽にお問合せください。

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