- Home
- 話題の映画・ドラマ・アニメブログ
- 映画「658km、陽子の旅」から、就職氷河期世代の厳しい現実と中高年のひきこもりの実態について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ29】
ブログ
12.102024
映画「658km、陽子の旅」から、就職氷河期世代の厳しい現実と中高年のひきこもりの実態について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ29】
映画「658km、陽子の旅」から、就職氷河期世代の厳しい現実と中高年のひきこもりの実態について考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ29】
- 「658km、陽子の旅」の映画概要とあらすじについて
- 就職氷河期とはなんでしょうか
- ひきこもりとはどういう状態を指すのでしょうか。
- 就職氷河期世代支援、ひきこもり支援を知っていますか
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
「658km、陽子の旅」の映画概要とあらすじについて
『658km、陽子の旅』は、夢に破れ傷つき長らく引きこもっていた就職氷河期世代の独身女性が、東京から故郷の青森県弘前市へ向かう途中で不意にヒッチハイクを強いられ、これまで避けてきた他人との向き合いを余儀なくされるうちに、心を癒していく様を描いたロードムービーです。「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2019」脚本部門で審査員特別賞を受賞した室井孝介の脚本をベースに、『海炭市叙景』、『私の男』の熊切和嘉監督が映画を仕上げました。主役の孤独な女性・陽子役には、日本国外で多数の出演歴がある菊地凛子が起用され、その他の役には、竹原ピストル、風吹ジュン、オダギリジョーらが配されました。2023年、第25回上海国際映画祭にて、最優秀作品賞、最優秀脚本賞(室井孝介・浪子想)、最優秀女優賞(菊地凛子)の3賞を受賞した作品です。(Wikipediaからそのまま抜粋)2023年に上映された映画です。
OA機器のカスタマーサービスとしてメール対応の仕事を在宅で行う陽子は42歳。夢を追いかけ20年前に故郷の父と絶縁し、薄暗い部屋の中で他者と関係を持たず、冷凍食品とネットショッピングで、誰とも話さず生活が完結する暮らしを長くしています。ある日、故郷の父の訃報の知らせを従兄の茂(竹原ピストル)から受け、一気に外界へ引きずり出されます。茂一家と車で弘前へ向かう途中、アクシデントで陽子はサービスエリアに置いてきぼりになり、所持金2000円ちょっとしか手元にないため、翌日の父親のお葬式に参列するため、ヒッチハイクを決意します。様々な人たちと出会い、助けられたり、怖い思いをしながらもなんとか弘前にたどり着きます。長期間誰とも話していなかった陽子は、顔の筋肉を動かすことができません。そのため表情も変わらず(厳密には変えられず)常に一定です。言葉も急にはしゃべれません。消え入りそうな小さな声でささやくように話します。そして夜の海辺で、波が陽子の身体を包むシーンはとても美しく圧巻なのですが、ひどく孤独で残酷なシーンです。その後、高速沿いを一人でとぼとぼ歩くシーンは、陽子がひとりぼっちであることが切々と伝わってくるシーンでもあります。東北横断の福島のシーンには、東日本大震災の傷跡が残っています。福島で人の好い夫婦に車に乗せてもらい、二人が陽子に寄せる無条件の温かい優しさに、陽子は初めて心を開き、「握手してください」と申し出ます。長くひきこもり孤立していた陽子が、人の温かさ触れた時、距離感や表現の仕方がわからず、「握手」という手が触れ合う直接的な表現を求めたこともリアルだと思いました。弘前に着く前に自らの生い立ちを話すシーンがありますが、「もう間に合わない、取り返しがつかない、私には何もない」など、後悔を口にするシーンがあります。熊切和嘉監督はこの陽子の現在を「自分にもありえた人生だと思う」とインタビューで答えています。陽子の発した言葉は、就職氷河期世代の人たちに深く刺さります。そして就職氷河期世代だけではなく、陽子と同じ孤独や絶望は、誰しもが生きていく上でどこかしら身に覚えのある辛さではないでしょうか。上海国際映画祭で賞を受賞した作品ですが、上海という大都会に夢や希望を持ち、地方からたくさんの人が集まってくる。そしてみんながみんな夢をかなえられるわけではない。だからこそ、この映画が上海国際映画祭で評価されたのかもしれません。
菊地凛子さんの演技が迫真で自然体で何しろ素晴らしかったです。佇まいも独特で、狂気や熱量をどことなく秘め、唯一無二の存在感でした。東京から弘前までの風景も素晴らしかったです。
就職氷河期とはなんでしょうか
就職氷河期とは、バブル崩壊後の1993年から2005年頃にかけて就職が難しかった時期を指し、当時大学などを卒業した世代を「就職氷河期世代」と呼びます。
バブル崩壊により景気が悪化すると、企業は従業員を解雇する代わりに新卒採用者数を削減し、有効求人倍率も1を割り始めました。また、世界情勢の変動による経済の衰退や大手金融機関の破綻などによる株価や地価の暴落も影響し、業績が悪化した企業は人件費削減のために新規採用を制限しました。
就職氷河期世代支援に関する行動計画 2024では以下のような記述があります。
「平成のバブル景気の崩壊以降、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った、いわゆる就職氷河期世代は、希望する就職ができず、不本意ながら不安定な仕事に就いている方、あるいは、無業の状態にある方など、様々な課題に直面してきた 方々が多く含まれる。これは、個々人やその家族だけの問題ではなく、社会全体で受け止めるべきものであり、我が国の将来に関わる重要な課題である」
(出所)就職氷河期世代支援に関する行動計画 2024 就職氷河期世代支援に関する行動計画 2024
就職氷河期は個々人の問題ではなく、社会の問題であり社会の課題であると明言されています。また、この就職氷河期世代は、1971年から1974年生まれの団塊ジュニア(第二次ベビーブーム世代)と呼ばれ、1700万人と人口規模も大きいのが特徴です。
不安定な雇用、経済状況のため、結婚や出産を控えたのではないかとも推測されています。
また、就職氷河期の厳しい就職状況のデータがあります。劇中の陽子がどのような夢を持っていたかは詳しく述べられていませんが、1993年から2005年に就職活動をした世代は他の年代に比べて10%程低い就職率となっていました。
ひきこもりとはどういう状態を指すのでしょうか。
映画の中で、陽子も他者と極力接点をもたず、買い物はネットショッピング行うなどの生活を行っていました。では具体的にひきこもりの定義や実態把握の調査についてみていきましょう。
■ひきこもりの定義
様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」(平成22年5月)
つまり、(1)他者とのつながりが消失し、コミュニケーションが欠如し、社会の中で孤立していること、(2)一定期間それが続いていることです。
ひきこもりは、39歳までの若年層で生じている問題とされてきましたが、2018年に実施された内閣府の「生活状況に関する調査」で40歳から64歳まで無作為に5000人が抽出された結果、全国で推定61万人のひきこもりの人が推定されると発表され、当時大きな話題になりました。
(出所)厚生労働省資料
内閣府が令和5年3月に行った「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)」では40歳から64歳までの広義のひきこもりは2.0%です。
2018年(平成30年)の40歳から64歳までの広義のひきこもりは1.45%だったので、0.5%増えたことになります。
今回、映画ではなぜ陽子がこのようなひきこもりがちの生活になったのか、具体的な説明はありませんでしたが、夢を追いかけてうまくいかなかったと告白するシーンがあります。就職氷河期の就職は大変厳しいものがあり、新卒後の就職がうまくゆかず、無業を続けている人たちもいます。しかし誰かに相談するということのハードルが高いこともわかります。
就職氷河期世代支援、ひきこもり支援を知っていますか
「もう間に合わない、取り返しがつかない、私には何もない」陽子は劇中で、告白します。この告白は同じ就職世代としては身につまされる、とても悲痛な心の声に聞こえました。
就職氷河期世代は、雇用や社会の不安定化などの受け、結婚や出産まで手が回らなかった人も多いと想定されます。また就職がうまくゆかず、ひきこもりがちになった人もいるかもしれません。8050問題が昨今注目を浴びています。80代の親が50代のひきこもりの子供たちを経済的にも社会的にも支えてきましたが、親亡きあと、子供たちが立ち行かず餓死したり、親子共々共倒れになる痛ましい事件が発生しています。
確かに間に合わないことも、取り返しのつかないこともあるでしょう。
しかし、今からでも間に合うこともあります。今から取り返せるものもあるかもしれません。
就職氷河期世代の支援や、ひきこもりの支援を国が積極的に行っています。
下記にリンク先を添付しますので、良ければ参考にしてください。まだ間に合います。
■厚生労働省の就職氷河期世代への支援の取り組み→リンク先
■厚生労働省のひきこもり支援ほホームページ→リンク先
もし、行政手続きでお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所でも対応いたしますので、お気軽にお問合せください。