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4.102025
映画「春に散る」から老いと若さ、さくらのイメージについて考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ49】

映画「春に散る」から老いと若さ、さくらのイメージについて考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ49】
- 映画「春に散る」の映画概要とあらすじについて
- 原作者、沢木耕太郎さんのこれまでの作品をみてみよう
- 映画全体を通してみる、ほとばしる若さと若さを受けとめる老い
- さくらにどんなイメージを持っているでしょうか
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
映画「春に散る」の映画概要とあらすじについて
映画『春に散る』は、沢木耕太郎による日本の小説で2015年4月1日から2016年8月31日まで、朝日新聞紙上にて連載されました。本作品は瀬々敬久監督により映画化され、2023年8月25日に公開されました。主演は佐藤浩市、今年のNHK大河ドラマべらぼうの主人公を演じるなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで今最も旬な俳優、横浜流星が演じています。共演には、橋本環奈、山口智子、片岡鶴太郎、哀川翔、窪田正孝、坂東龍汰が配されています。
原作者の沢木耕太郎が、タイトルと主人公広岡という名前以外改変することを許諾し、瀬々敬久監督はいくつか部分を小説から変更しています。
広岡仁一(佐藤浩市)は元ボクサーで判定負けした後、単身アメリカに渡りそこでホテル業で財を成し成功しますが、40年ぶりに単身日本に戻ってきます。当時のボクシングジムのメンバー、佐瀬健三(片岡鶴太郎)と藤原次郎(哀川翔)を探し出し二人にボクシングジムの仲間との共同生活を提案します。そんな折、判定負けで引退を考えている若手ボクサー黒木翔吾(横浜流星)と知り合い、広岡は黒木から指導を懇願されますが、頑なに申し出を断り続けます。しかし黒木のひたむきな努力、筋の良さを見込み、佐瀬も巻き込み世界一のチャンピオンを目指すことに黒木も広岡も佐瀬も情熱を燃やし、命をかけて戦いに挑みます。
迎えた世界戦、チャンピオンの中西利男(窪田正孝)と熾烈な試合を繰り広げ、最終的に黒木が勝利し、チャンピオンベルトを勝ち取りますが、試合の衝撃で手術を受けた目は異常をきたし、二度とボクシングができなくなってしまいます。また同日、持病を抱えていた広岡の心臓は止まり、桜の下で息を引き取ります。まさに桜吹雪が舞い散る中、春に散ります。
黒木はボクシングを諦め、社会人として第二の職業人生を始めるシーンで映画は終わります。
黒木の「今しかねえ、今しかないんだ。」という言葉が印象的です。先のことなどわからない、今この瞬間に全てをかける、命を燃やす。人生100年時代の今、短期の合理より長期の合理を目指す必要性は誰もが実感していることでしょう。しかし、「今、この瞬間」にこそすべてを賭け命を燃やす。その結果を後悔しないと言い切る、その一瞬こそが生まれてきた意味、意義、という瞬間があるのかもしれません。
数々のボクシングの試合シーンがありますが、そのどれもが生々しくまさしくドキュメンタリー映画のようなリアルさで素晴らしく圧倒的です。瀬々敬久監督も「ボクシングの試合ではこれが一番」と言っています。鍛え抜かれ、絞り込まれた横山流星、窪田正孝の肉体が戦いあうシーンは、圧巻です。
映画を観る年代で様々な思いが交差すると思いますが、この一瞬の生を生き切る人たち、特にボクシングの試合は一見以上の価値があると思います。日頃パソコンの前ばかりにいる身としては、肉体の美しさ、身体能力の高さに強い憧れを抱きます。瀬々敬久監督もインタビューでおっしゃっていましたが、この映画はまさに身体の映画であると言えるでしょう。
(出所、参考)Wikipedia、映画公式HP、映画ランドインタビュー記事
原作者、沢木耕太郎さんのこれまでの作品をみてみよう
恥ずかしながら、映画を観終わるまで、この映画の原作者が沢木耕太郎さんだということをしりませんでした。そして、鑑賞後、原作者が沢木耕太郎だと知り、合点がいきました。
私が30年以上前に初めて読んだ沢木耕太郎さんの作品は「一瞬の夏」でこちらもボクシングに関するノンフィクション作品です。面白く夢中で一瞬で読み切りましたし、この一瞬にかけて戦う姿勢が春に散ると似た熱さを感じました。沢木さんは今までボクシングをテーマに「生きること」を掘り下げてきた作家です。
また沢木耕太郎さんの「深夜特急」は沢木さん自身が20代の時、香港からユーラシア大陸を横断し、ポルトガルのロカ岬までバックパックで横断した実話で、当時多くの若者に影響を与えました。沢木さんの深夜特急をバイブルにバックパックの旅に出た人たちがたくさんいました。
チェーンスモーキング、彼らの流儀などのエッセイも人生の深い視差を感じられる作品です。私の20代、30代に沢木耕太郎さんから多大な影響を受けました。
瀬々敬久監督も沢木さんのことを映画の公式HPで以下のように述べています。
「十代後半から二十代前半にかけて沢木耕太郎さんのノンフィクションの幾つかを夢中になって読んだ経験があります。それらは、「老人と青年」が主人公として描かれ、「命と使命」についての葛藤の物語であり、「永遠と一日」の感受性が、常に描かれていました。老齢に差し掛かってしまった今、もう一度あの時間を『春に散る』を通して生き直してみたいと思っています。」(抜粋 映画公式HP)
(出所、参考)Wikipedia、映画公式HP、映画ランドインタビュー記事
映画全体を通してみる、ほとばしる若さと若さを受けとめる老い
横浜流星、坂東龍汰、窪田正孝演じる若者達のボクシングの試合のシーンでは、それぞれの鍛え抜かれた肉体がぶつかりあい、命がぶつかり合います。一本気なひたむきさと情熱と自信にあふれ、周りの大人はその情熱に巻き込まれつつも、大人は全体を俯瞰し、彼らをどのように勝利に導いていけばいいかを考えます。
黒木は広岡の技術に憧れ、どんどん成長していきますが、広岡のリスクに対して最善の策をとろうとするそのまどろっこしさを責めます。若さとはむこうみずで、老いとは、そのむこうみずを受け止め、前途ある未来がある若者の可能性をつぶしたくないと親心から若者の挑戦に保守的になります。
広岡は黒木の将来を考え、チャンピオンチャレンジを延期するよう説得しますが、黒木の本能が受け入れません。若さとは経験ではなく直観なのでしょう。
しかし広岡は黒木の夢を追う中で、自分の中途半端になっていたボクシングの夢を40年ぶりに再度追うことができました。佐瀬も新しい生きがいをみつけることができました。黒木を育てることが、自分たちを逆に再生させたのです。そして自分の命は尽きても、若い黒木の中で生き続けられる。託せる相手をもし見つけられたら、それはとても幸せな事なのでしょう。
さくらにどんなイメージを持っているのでしょうか
広岡は桜の木の下で命が尽きました。まさに春に散りました。
平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての日本の武士であり、僧侶、歌人であった西行は、今から900年ほど前「願はくは花の下にて春死なむ その如月の望月のころ」という和歌を残しました。「桜の下で死にたい」という願望は今から900年前以上前からありました。桜の花は開花から満開までが数日で、満開になってもすぐに散ってします。その儚さと潔さに日本人は古来から憧れていたのでしょう。
クロスマーケティング「桜に関する調査(2024年)」では、桜が咲く時期の意識・行動TOP10では4位に「日本に生まれてよかったと感じる」、「すぐ散ってしまうが、儚さが美しいと思う」が6位に入っています。
桜の持つ特別感は未だ多くの日本人の心をつかんでいると言えるでしょう。
(出所)クロスマーケティング「桜に関する調査(2024年)」
本映画を観て、春に散る幸せを感じました。そして広岡はきっと満足して眠りにつけたのではないでしょうか。まさに老いと若さを感じる素晴らしい映画でした。
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