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【後編:身元保証等高齢者サポート事業】総務省の初の実態調査の結果からサービス内容と問題点についてそれぞれ考えてみよう【データから考えてみよう⑯】

【後編:身元保証等高齢者サポート事業】総務省の初の実態調査の結果からサービス内容と問題点についてそれぞれ考えてみよう【データから考えてみよう⑯】

 

「身元保証等高齢者サポート事業」と聞いて、すぐにどんな事業内容か思い浮かべる人は少ないと思います。しかし、高齢になり、頼れる親族などがいないときの入院時の保証人や、亡くなった後の死後の事務をお願いするサービスなどは、聞いたことのある人もいるのではないでしょうか。

今回は、総務省が今月行った初の「身元保証等高齢者サポート事業」の実態調査から前編と後編にわけ、前編では、「身元保証等高齢者サポート事業」が具体的にはどんなサービスなのか、後編では「身元保証等高齢者サポート事業」の現状を整理したいと思います。

 

  • 「身元保証等高齢者サポート事業」を直接規律する法律はあるのでしょうか
  • 「身元保証等高齢者サポート事業」の重要事項説明書の現状についてみてみよう
  • 「身元保証等高齢者サポート事業」の判断能力が不十分になった場合の財産管理の取扱いの現状についてみてみよう
  • 「身元保証等高齢者サポート事業」の相談者の相談内容についてみてみよう

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

「身元保証等高齢者サポート事業」を直接規律する法律はあるのでしょうか

 

例えば古民家カフェを開業したい!場合、お店の場所と人材を確保し、内装を整えたら、即営業が開始できるかと言えばできません。飲食店を開業するためには、まずは、「営業許可証」を取得しなければなりません。「営業許可証」とは食品衛生法に基づいて、食品に関する営業を始める際に必要な証明証となります。この「営業許可証」を取得するためには、「営業許可申請書」の必要項目を記載し、必要書類を添付し、保健所に提出します。保健所は、飲食店の提出された書類や必要書類が、営業許可要件(審査基準)をクリアしているか調査し、あわせて施設調査を経て、審査基準をクリアできていれば、保健所から「営業許可」がおります。

このように「なにか新しい事業」を行おうとする場合、その事業に監督庁があり、規律する法律があるときは、担当監督庁の許認可を取得しないと事業ができない仕組みになっています。

しかし、現在「身元保証等高齢者サポート事業」には担当監督庁も、直接規律する法律もありません。比較的新しいけれど、将来的な需要が高いサービスで、担当監督庁も規律法律もなく参入障壁が低いため、事業規模・提供サービス・契約事項など事業者ごとに差が生じていると指摘されています。

「身元保証等高齢者サポート事業」について自治体や地域包括支援センターにも身元保証サービスを検討している方から相談がくるようですが、担当監督庁や法律がなく相談者も相談を受ける側も困惑してる様子が報告書から伺えました。

 

 

「身元保証等高齢者サポート事業」の重要事項説明書の現状についてみてみよう

 

「身元保証等高齢者サポート事業」は①身元保証サービス、②日常生活支援サービス、③死後事務サービスと大きく多岐に分かれており、またそれぞれの事業が細分化されています。また③の死後事務サービスとは、自分が亡くなってから行われるサービスのため、契約者本人は、契約通りに死後事務サービスが滞りなく実施されたかを確認する術がありません。このような複雑な期間の長いサービスの場合、丁寧で、繰り返しの説明が必要となります。契約手続き時での重要事項説明に関しては、「重要事項説明書」を作成している割合が21.2%となっており、全体の約8割の事業者は重要事項説明書を作成しておりません。「公正な契約手続きの確保」という意味では、まだまだ課題の残る状況となっています。

(出所)身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査

 

 

「身元保証等高齢者サポート事業」の判断能力が不十分になった場合の財産管理の取扱いの現状についてみてみよう

 

高齢になれば、誰もが加齢により、判断の能力が不十分になることもあるでしょう。例えば財産管理等委任契約を締結した後に、判断能力が低下するするケースも想定されます。認知症の発症や判断能力が低下し、「意思能力」が失われると、契約行為が単独ではできなくなります。判断能力が将来的に低下する時の事を想定して、財産管理委任契約から任意後見契約などに移管する規定を置くことが望まれます。しかし、実際事業者などからの報告を整理したところ、財産管理等委任契約書において、利用者の判断能力が不十分になった場合には任意後見契約へ移行する旨の 規定を置いていないものが 27 事業者(44.3%)みられたそうです。高齢者事業の観点から、また判断能力が低下していく可能性を鑑みると、財産管理等委任契約書に利用者の判断 能力が不十分になった場合の法定後見制度又は任意後見契約への移行を明記する必要があると考えられます。

出所)身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査

 

 

「身元保証等高齢者サポート事業」に関する相談者の相談内容についてみてみよう

 

自治体・地域包括センターに寄せられた相談内容を類型化した結果、「身元保証等高齢者サポート事業」に関する一番多い質問は、「事業者の評判・信頼性」で全体の約4となっています。現在、「身元保証等高齢者サポート事業」の監督庁も、規律法律もないため、相談を受けた自治体の職員、地域包括センターでも、情報が少ないため、的確な回答をするのが難しい状況がうかがえます。

事業者側もガイドラインの基準の設定や、行政による監督を求めています。

相談者側も、事業者の評判や信頼性が、選ぶ際の基準として大きいですし、事業者側も、行政から、一定基準のクリアなどお墨付きをもらうことで、事業者としての信頼が増すと考えているのではないでしょうか。

出所)身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査

 

今回は「身元保証等高齢者サポート事業」について、前編・後編に分けて総務省の発表資料を分析してきました。潜在的なニーズの高いサービスではありますが、行政側の建付けが追い付いていないのが現状のようです。行政の枠組み作成、行政と事業者の連携が急務な課題となっています。

 

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