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【話題の映画】映画「お元気ですか?」から孤立・孤独の原因とゆるやかなつながりについて考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ⑫】

【話題の映画】映画「お元気ですか?」から孤立・孤独の原因とゆるやかなつながりについて考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ⑫】

 

「お元気ですか?」という題名をみたとき、自分が最後に「お元気ですか?」と問いかけたのはいつだったのか思い出せず、その事実に驚愕しました。若い時分は絵葉書を出したり、電話をかけたり。「お元気ですか?」という言葉が発する響きが好きで、遠い相手を慮る優しさが好きでした。

今回は、「お元気ですか?」のもたらす「ゆるやかな社会的につながり」について考えてみたいと思います。

 

  • 「お元気ですか?」の映画概要とあらすじについて
  • 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年実施)から、孤独や孤立を引き起こす原因をみてみよう
  • 「ゆるやかなつながり」が大事です
  • 地縁・血縁にかわる「ゆるいつながり」をどう構築したらよいのでしょうか

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

「お元気ですか?」の映画概要とあらすじについて

 

「お元気ですか?」は室賀厚さん脚本監督の2016年に公開された映画です。主演を演じられているのは宮澤美保さんです。本作品はロサンゼルス・インデペンデント・フィルム・フェスティバル・アワードにて審査員特別賞(JURY MENTION)および、最優秀主演女優賞(外国映画部門)を受賞しました。

この作品は、夫と娘を事故で失った女性が、未来に希望を見出せず自分で生命を終わらすことを決意し、生前夫がもし明日自分が死ぬとわかったとき、10人に電話をかけるという当時話した内容を忠実に再現していくストーリーとなっています。死を決意し森に入り、10人目の相手に電話をかけたところで、想定外の事が起こります。ラスト10分で10人目の相手の素性が明らかになり、この女性は生きていくことを再度選択することとなります。

物語に意外性があり、主人公の人生とは全く接点のなかった医大生のカップル、10人目の電話の相手が、キーパーソンとなり、主人公の人生の選択を変えていく役目を担います。

この映画を通して、死を決意したときに、感謝も謝罪もきちんと言葉に、自分の人生の相手に伝える大切さを教えてくれます。また、人は人生の暗渠に迷い込んでしまった時、その時その暗渠から出るきっかけを与えてくれるのは、家族や友人など自分と関係性の強い人たちではなく、見ず知らずの偶然その場に居合わせた人たちなのかもしれないとも。

個人的には物語のラスト20分の10人目の電話の相手とのリアルな会話の内容に見ごたえを感じました。

 

 

孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年実施)から、孤独や孤立を引き起こす原因をみてみよう

 

主人公の藤木冴子さんが自らの命を終わりにする決意のきっかけは、車の事故で夫と娘を亡くしたことです。裁判でも相手の過失が認められず、夫の両親からは「息子はあなたに殺された、あなたが死ぬべきだった」と激しく罵倒され、未来に希望を見出せず、夫と娘の側に行こうと決めます。

孤独・孤立の実態把握に関する全国調査では、孤独・孤立の原因としては、「家族の死別」が最も多い原因としてあげられています。また、「人間関係による重大なトラブル」も孤独・孤立を深める原因としてあげられています。

孤独・孤立の実態把握に関する全国調査では、30代の女性と50代の男性が最も孤独を感じやすいことがわかっています。劇中で藤木冴子さんは、30代後半の女性として描かれていました。

孤独・孤立を抱えている人は、実際行政やNPOに支援を受けているかどうかについては、88,2%の人が支援を受けていないことも明らかとなっています。

特に家族との死別というとてもデリケートで個人的な喪失の場合、他者と共有するのはハードルが高いと推測されます。行政もNPOも様々な窓口を用意していますが、なかなか当事者に伝わりづらいという現状があるのかもしれません。

(出所)孤独・孤立の実態把握に関する全国調査

 

「ゆるやかなつながり」が大事です

 

アメリカの社会学者、マーク・グラノヴェッターがハーバード大学博士課程に在籍の際に行った調査から、「弱い紐帯の強み」という結果が出ました。

共同体での情報の伝播に関しては、よく知っている人より、どちらかといえば繋がりの薄い人から聞いた情報を元にしていたことが判ったのです。これは「よく知っている」人同志は同一の情報を共有することが多く、そこから新しい情報が得られる可能性は少ないが、「あまり知らない」人は自分の知らない新情報をもたらしてくれる可能性が高いからだと考えられています。(出所:Wikipedia

今から50年ほど前の研究ですが、今でも弱い紐帯=ゆるやかなつながりが大事、という考え方が提唱されています。

家族や友人など、同じ社会的な立場や階層に所属している人同士ですと、情報に偏り、世界が広がらないということなのでしょう。

今回の映画でも、主人公は10人目の電話の相手をランダムの電話番号の発信で偶然にみつけます。樹海の森から主人公を見つけたくれた医大生のカップルも、その日に何度か旅先で遭遇したにすぎない人たちです。結果的に心ある医大生であったり、10人目の相手が自身も生きることに制限がかけられていたというのは偶然です。

しかし、行動しなければ偶然にも出会うことはできないのかもしれません。

 

 

地縁・血縁にかわる「ゆるいつながり」をどう構築したらよいのでしょうか

 

2018年に行われた「社会意識に関する世論調査」で、地域での付き合いをどの程度していますか。という設問に対し、付き合っていないが32%、付き合っているが68%という数字でした。一見するとまだ近所付き合いがある人は7割弱もいるのかとも思いますが、これは年齢により数値が大きく異なっており、年齢が高い層がご近所付き合いの割合が高く、30代は5割弱、40代でも4割弱に近所付き合いがないことがわかります。

単独世代と夫婦のみの世代が増え、夫婦と子供の世帯か減っており、世帯人数も減り、地縁のみならず血縁のつながりも薄くなってきています。

ライフデザイン研究所の小谷みどりさんの「地域の緩やかなつながりをどう作るか」にも記載されていましたが、地縁に関わる人間関係も血縁に関わる人間関係も、一朝一夕にできるものではなく、人間関係の構築には互いの努力と歩み寄り、時間も必要です。

このように考えると、即席で「目の前の必要なサービスを買う」というやり方もありますが、まずは自分から趣味やボランティア、自治会などのコミュニティーに参加し、雰囲気のあるコミュニティーをみつけ、自分で居心地よくしていくしかないのかもしれません。

以前このブログでも書いた認知症基本法でも、共生社会の実現が大きなテーマになっています。

自戒をこめて、ゆるやかなつながりについて積極的に取り組んでいきたいと思います。

(出所)「社会意識に関する世論調査」

 

 

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