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2020年時点での高齢者認知症患者数は推定600万人に対し、成年後見制度の利用者は2022年時点で25万人【データから考えてみよう⑬】

2020年時点での高齢者認知症患者数は推定600万人に対し、成年後見制度の利用者は2022年時点で25万人

最高裁判所事務総局家庭局公開資料「後見関係事件の概況令和4年1月から12月」【データから考えてみよう⑬】

 

 

  • 2020年の高齢者認知症の推定数と成年後見制度利用者には大幅乖離があります
  • 成年後見制度への申立は家族親族からが半数を占めている
  • 成年後見制度の開始原因は認知症が63、2%。加齢と認知症の関係
  • 成年後見制度への申立理由は「財産管理ができなくなったこと」が最多の31%

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

2020年の高齢者認知症の推定数と成年後見制度利用者には大幅乖離があります

 

少し古いデータにはなりますが、内閣府の平成29年版高齢社会白書の65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率では2020年には65歳以上の認知症高齢者の数が600万人を超えるという試算があります。また2025年には675万人の認知症患者が想定されています。しかし実際の成年後見関係事件の概況令和4年1月から12月では成年後見制度の利用者は25万人です。成年後見利用者の合計を600万人の認知症高齢者の数とで割ると、粗い単純計算ではありますが、認知症患者の4、2%が成年後見制度を使っているという試算になります。ということは残りの95%の方は成年後見制度を利用していないことになります。

 

(出典)内閣府平成29年版高齢社会白書

 

(出典)成年後見関係事件の概況 ―令和4年1月~12月― 最高裁判所事務総局家庭局

 

 

成年後見制度への申立は家族親族からが半数を占めている

 

成年後見制度への申立は、本人がする場合が21%、家族親族(配偶者、親、子、兄弟など)が申立てを行うケースが51%、そして自治体の市区町村が行うケースが23.3%と、申し立ての半数以上が家族親族からの申立となっています。ご本人が申立てするケースは全体の2割となっており、周りが申立てするケースが8割となっています。特に家族親族(配偶者、親、子、兄弟など)が申立てを行うケースが51%と半数を超えています。現在家族の構成形態も急速に変化しており、世帯の人数が減少しており、高齢化に伴い配偶者と死別などを含む単独世帯の増加や身寄りのいない高齢者が増えることが予想されています。頼れる家族や親族がいない高齢者の方は、後見センターや専門職の団体などが運営している任意後見制度などを検討されてみてはいかがでしょうか。

 

(出典)成年後見関係事件の概況 ―令和4年1月~12月― 最高裁判所事務総局家庭局

 

 

成年後見制度の開始原因は認知症が63、2%。加齢と認知症の関係

 

認知症と成年後見を紐づける根拠となるのが、成年後見制度の開始原因は63,2%が認知症というデータです。

高齢になり認知症が発症する確率が高まる原因は、脳の神経細胞がゆっくり死んでいく「変性疾患」と呼ばれる病気のためです。認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのは、「変性疾患」と呼ばれる病気です。アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症、レビー型小体病などがこの「変性疾患」にあたります。

続いて多いのが、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などのために、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、その結果その部分の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまう脳血管性認知症です。(引用)厚生労働省 政策レポート(認知症を理解する)

 

(出典)成年後見関係事件の概況 ―令和4年1月~12月― 最高裁判所事務総局家庭局

 

 

成年後見制度への申立理由は「財産管理ができなくなったこと」が最多の31%

 

成年後見制度への申立理由は「預貯金口座の管理・解約」ができなくなったことが最多の31%、また不動産の処分・相続手続・保険金の受取など財産管理に含まれる項目を足すと25,9%となり、財産管理のための申立が約60%弱となります。成年後見制度を利用した際に財産管理をスムーズに行う事が成年後見制度普及への喫緊の課題であると推察されます。認知症の方が相続人になると、後見人をつけないと遺産分割協議など意思表示が必要な法律行為ができず、相続手続きが止まってしまうなど時間がかかるケースもあり、ご家族への負担も大きくなります。長寿化の社会であれば誰もが認知症になる可能性があります。まずは気になったら調べるところから始めてみてはいかがでしょうか。

(出典)成年後見関係事件の概況 ―令和4年1月~12月― 最高裁判所事務総局家庭局

 

【参考ホームページ・資料】

厚生労働省:成年後見はやわかり

裁判所:後見ポータルサイト

裁判所パンフレット:成年後見制度 利用をお考えのあなたに

認知症・成年後見制度に関しては、他にも記事があります。よければこちらまでご覧ください。

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