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【墓地行政に関する調査】総務省の公営墓地における無縁墳墓を中心とした実態調査の結果から現状の課題について考えてみよう【データから考えてみよう⑰】

【墓地行政に関する調査】総務省の公営墓地における無縁墳墓を中心とした実態調査の結果から現状の課題について考えてみよう【データから考えてみよう⑰】

 

最近、「墓じまい」、「無縁仏」、「無縁墳墓」などの言葉を耳にし、目にすることが増えたような気がします。現在日本社会は、少子高齢化から多死社会と移行している最中です。生まれる人口より亡くなる人口が多く、年間の死者数が最大になるのは、2040年で年間の死者数は168万人と予測されています。先日、「火葬待ち」の記事を記載し、主に首都圏で火葬場が不足しているとお伝えしましたが、今回は総務省が発表した、【墓地行政に関する調査】から、現在の無縁墳墓の現状と、無縁墳墓問題を解決するために欠くことができない、「縁故者」、「墓石の取り扱いに」に関する現状について整理したいと思います。

 

また「無縁墳墓」とは本資料の定義にならい、市町村 が自ら経営許可を受けた墓地・納骨堂 (以下「公営墓地・納骨堂」という。)における死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂(以下「無縁墳墓等」 という。)と定義します。

 

  • 無縁墳墓は、公営墓地の中でどのぐらいの割合を占めるのでしょうか
  • 問題点① 無縁墳墓の「縁故者」を見つける労力、難易度について考えてみよう
  • 問題点② 無縁墳墓の「墓石」の取り扱いに関する法律がない点について考えてみよう
  • 無縁墳墓と空き家の類似する問題点について考えてみよう

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

無縁墳墓は、公営墓地の中でどのぐらいの割合を占めるのでしょうか

 

調査の概要を簡単に説明しますと、全国で約88万か所ある墓地・納骨堂の中で、地方公共団体が運営を経営している施設は30,963か所(全体の3.5%)あります。公営墓地・納骨堂における無縁墳墓等の発生状況や支障等を把握するため、全 1,718 市町村を対象に基礎調査を実施し、1,231 市町村から回答を得ました(回答率 71.7%)。その調査結果をまとめたのが本報告書となっています。

無縁墳墓の発生状況は人口30万人以上の市町村で、全体の78%という高い水準で発生しています。人口規模が大きいほど高い傾向にあり、全体では 58.2%(445/765 市町村)です(報告書からそのまま抜粋)

 

(出所)総務省 墓地行政に関する調査 -公営墓地における無縁墳墓を中心として- 結 果 報 告 書

 

 

問題点① 無縁墳墓の「縁故者」を見つける労力、難易度について考えてみよう

 

お墓(墳墓)は、相続財産ではなく、祭祀財産として取り扱われます。祭祀財産は主に、民法では系譜、祭具、墳墓の総称として用いられています。継承者に関しては、法定相続人などが決まっているわけではなく、慣習に従う、相続人が指定する、慣習が定かではないときは家庭裁判所が定めるなど、民法897条で定義されています。実際、公営墓地にお墓の申し込み手続きを行う場合の申込書類には、使用者情報の記載、戸籍謄本や、住民票の添付などが義務付けられているところもありますが、継承者や縁故者(関係者)情報に関しては義務ではなく任意であるところも多いようです。今回の調査では、88の市町村において、使用者以外の縁故者情報を把握しているかの調査では、71の市町村において、把握度20%未満という結果になっています。使用者が申し込み時に添付する戸籍情報から縁故者が推測されるケースもありますが、電話番号などの記載がないため、戸籍謄本から連絡先などを追跡する必要がありその事務に時間も手間もかかります。お墓の管理料も5年、10年間隔で徴収していたところ、次の徴収時に連絡がつかなくなり、無縁墳墓になっていったケースもあるようです。

自治体によっては、墓地使用許可申請書等に縁故者に係る情報の記載欄を追加し、事務手続きの負担を軽減するよう変更した自治体もあるようですが、現状縁故者情報記載に関しては、統一した決まりもなく、個々の自治体の判断に任されているようです。

(出所)総務省 墓地行政に関する調査 -公営墓地における無縁墳墓を中心として- 結 果 報 告 書

 

 

問題点② 無縁墳墓の「墓石」の取り扱いに関する法律がない点について考えてみよう

 

今回の総務省の調査の中で無縁墳墓の増加の原因の一つに挙げられているのが、無縁改葬後の墓石の取扱いです。無縁墳墓の墓石の取り扱いについては明確な規定されておりません。「墓地、埋葬等に関する法律の施行に関する件」(昭和 23 年 9 月 13 日付 厚生省発衛第 9 号厚生次官通達)に基づいて私法権等の権利変更等を行う場合は「それ等の規定」によることとされている。(報告書からそのまま抜粋)。今回の調査でも無縁墳墓等を解消するための事務手続を確認できた 41 市町村の中で、無縁墳墓の墓石を「即時処分」した市町村は19.5%(8/41 市町村)と、即時処分を躊躇する市町村は多く、墓石の保管期間を設けて一時保管する自治体もあります。また対応未定の市町村も17市町村(41.5%)と祭祀財産である墓石を市町村が勝手に処理できないと対応に苦慮する現実が浮かび上がっています。

(出所)総務省 墓地行政に関する調査 -公営墓地における無縁墳墓を中心として- 結 果 報 告 書

 

 

無縁墳墓と空き家の類似する問題点について考えてみよう

 

無縁墳墓の問題として本資料の中であげられているのは、無縁墳墓の長期間放置による、雑草や樹木の繁茂、墓石の倒伏、ブロック塀の倒壊などの荒廃による周辺環境の悪化や近隣の使用者とのトラブルになりかねない等の報告がありました。また実際荒廃した墓地に不法投棄がされてしまったケースや、近年の大規模災害での豪雨による崩落や土砂崩れなども確認されています。このような無縁墳墓の周辺環境の悪化や地域防犯への影響は、近年の空き家問題と同様の問題を抱えています。

空き家の場合、特定空き家と認定され、行政代執行の要件を満たせば、行政代執行による除却が、空家等対策の推進に関する特別措置法の中で定められています。空き家対策特別措置法は国土交通省管轄となりますが、墳墓に関する法律は厚生労働省の「墓地、埋葬等に関する法律」が根拠法律となっており、管轄省庁が異なります。

 

以上、無縁墳墓の現状と問題をみてきましたが、報告書類にもありましたが、墓地、埋葬等に関する法律も昭和23年に施行され、今から76年前の法律です。施行当時と今では様々な状況が大きく異なります。特に多死社会、家族観の多様化は今の墳墓を代々継承するという考え方では一層難しくなっていくでしょう。墓じまいなどが近年増えている状況などもあわせて、今の時代に合うよう国が指針を出していく必要性を強く感じました。

 

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