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【変わりゆく敬老の日】統計からみた我が国の高齢者-総務省のデータから変わりゆく65歳以上の高齢者の姿について考えてみよう【データから考えてみよう⑱】

【変わりゆく敬老の日】統計からみた我が国の高齢者-総務省のデータから変わりゆく65歳以上の高齢者の姿について考えてみよう【データから考えてみよう⑱】

 

2023年9月18日は敬老の日の祝日でした。以前であれば敬老の日は離れて暮らす祖父母に電話をしたりプレゼントを贈ったり、長生きを労り、尊敬と敬愛の念を表す日でした。私も幼いころ、敬老の日になると両親と一緒に遠方の祖父母に電話で話した記憶があります。

しかし昨今、敬老の日の意味合いが薄れてきている印象を受けます。今回は総務省の人口データと共に、変わりゆく高齢者の姿について考えてみましょう。

 

  • 敬老の日の始まりと意味を知っていますか。日本人の平均寿命と共に考えてみよう
  • 2023年は75歳以上人口が初めて2000万人を超え、10人に一人が80歳人口となりました
  • 敬老の日の高齢者へのお祝い金が近年廃止、削減されています(宮崎日日新聞から)
  • もはや「老後」ではない??

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

敬老の日の始まりと意味を知っていますか。日本人の平均寿命と共に考えてみよう

 

兵庫県多可郡野間谷村(後に八千代町を経て現在の多可町八千代区)で、1947年(昭和22年)9月15日に村主催の「敬老会」を開催したのが「敬老の日」の始まりであるとされる。これは、野間谷村の村長であった門脇政夫(1911年 – 2010年)が「老人を大切にし、年寄りの知恵を借りて村作りをしよう」という趣旨から開いたもので9月15日という日取りは、農閑期にあたり気候も良い9月中旬ということで決められた。また9月15日を兵庫県は「としよりの日」とし、55歳以上の人を対象に敬老会を開催した。

また、中央社会福祉協議会(現全国社会福祉協議会)が1951年に9月15日を「としよりの日」と定め、1963年に老人福祉法で9月15日を「老人の日」と改めて制定された(出所)Wikipediaから抜粋

以上より、敬老の日はもともと兵庫県の村主催の「敬老会」が発端となり、それが老人福祉法で9月15日を「老人の日」と制定されました。

また初めて「敬老会」が開催された1950年前後は戦後間もないこともあり、日本人の平均寿命は、1950年当時、男性が59.57歳、女性が62.97歳でした。今の平均寿命と比べて男女とも25年以上も短いことがわかります。女性の平均寿命が80歳を初めて超えたのは1985年、男性の平均寿命が75歳を初めて超えたのは、1990年でした。

(出所)令和2年厚生労働白書

 

 

2023年は75歳以上人口が初めて2000万人を超え、10人に一人が80歳人口となりました

 

本資料の中で75歳以 上人口は2005万人で、前年に比べ72万人増、80歳以上人口は1259万人で、前年に比べ27万人増となっています(資料から一部抜粋)団塊の世代(1947年~1949年生まれ)が2022年から75歳に達し、2025年には全員が後期高齢者に入ります。その影響もあり、75歳以上の高齢者が増えています。また80歳以上の人は、全人口の約10%を占めます。10人に1人と言えば、80歳以上の高齢者はもはや少数派ではなくなっています。65歳以上の高齢者の割合は全人口の29.1%となり、過去最高を記録しています。日本の人口の約3割が高齢者であれば、敬老の日の成り立ちの「老人を敬い大切にする」という敬老の精神は大事にすべきかとは思いますが、人口のボリューム的には、今まで支えてもらう側という考え方から現役世代と共に現代社会を支えていけるボリュームゾーンと言えます。

(出所)総務省 高齢者の人口(人口推計、World Population Prospects)(PDF:504KB)

 

 

敬老の日の高齢者へのお祝い金が近年廃止、削減されています(宮崎日日新聞から)

 

宮崎日日新聞のニュースで、進む高齢化の影響で、宮崎市では高齢者へのお祝い金の給付が市の財政を圧迫し、負担している現状から、敬老の日のお祝い金給付の条例が全員一致で改正され、一部廃止されたり、金額が削減されることが決まったそうです。敬老の日のお祝い金給付の削減、廃止の動きは、宮崎市だけではなく、調べたみたところ日本全国の自治体で生じているようです。高齢者人口が増加し、前段でも80歳以上の高齢者が10人に1人になり、今までの人口形態とは明らかに異なる現状では、今まで通りの給付金を支給するのが厳しいと判断している市町村がたくさんあるようで、条例を改正した自治体も多いようです。私の両親も二人とも80代の後期高齢者ですが、以前は敬老の日には、「敬老会」からお弁当が支給されたり、記念品やお祝い金給付などもありました。最近話を聞かないと調べてみたところ、コロナ禍などあり、市の財源の負担になるため、一部廃止、削減されているようでした。自治体としても対応に苦慮しているようです。一方で高齢者の方からしてみれば、お祝い金の給付を楽しみに年齢を重ねられてきた方もいて、数十年にわたる慣行を変更する際には、丁寧な説明も求められています。

 

 

もはや「老後」ではない??

 

「もはや「戦後」ではない」というかく有名なフレーズを、一度は耳にしたこともある人は多いのではないでしょうか。1956年度の『経済白書』の序文に書かれた一節で戦後復興の終了を宣言した象徴的な言葉として流行語にもなりました(出所)コトバンク 日本経済の急激な回復と、これから始まる高度成長経済時代を見据えての自負を感じる言葉でもあります。定年制度が55歳から60歳へ、そして現在では高年齢者雇用安定法により、働きたい人は65歳まで働くことができるようになりました。そして高年齢者雇用安定法の更なる改正で、企業側には70歳まで働く機会の確保を努力義務としています。1950年代から現在まで25年の平均寿命が延びましたが、それに伴い定年制度も55歳から65歳、そして70歳への15年延びてきているのが現状です。労働力調査「就業構造基本調査」でも高齢就業者数は、19年連続で増加し、912万人と過去最多となっています。2012年が596万人であったことと比較すれば、この10年で316万人も増え、2012年より1.5倍も増えたことになります。これからますます、就業する高齢者は増えるのでなないかと予想されます。

(出所)労働力調査「就業構造基本調査」

 

以上、敬老の日にちなんで、総務省の高齢者の統計をみてきました。少子高齢化、平均寿命の続伸、年金受給のタイミングなど、敬老の日が制定された時と今では大きく時代が異なります。戸惑う人もまだまだ多いと思いますが、これからの日本には高齢者のみなさんの力が必要です。社会のシステムも現状に見合った変更が必要ですし、私たち一人一人の意識も変えていく必要があるのかもしれません。

 

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