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10.202024
【高齢社会】高齢社会対策大綱から、安心して高齢期に一人暮らしができる環境整備について考えてみよう。【わかりやすく解説!2】
【高齢社会】高齢社会対策大綱から、安心して高齢期に一人暮らしができる環境整備について考えてみよう。【わかりやすく解説!2】
- 高齢社会対策大綱とはなんでしょうか
- 居住支援の充実対策についてみてみよう
- 高齢期における身寄りのない人への支援の充実対策についてみてみよう
- 難聴等感覚器機能の低下への対応対策についてみてみよう
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
高齢社会対策大綱とはなんでしょうか
令和6年9月13日に高齢社会対策大綱が6年ぶりに改訂され、閣議決定されました。
加速する少子高齢社会に備え、今までは高齢者は支えられる側でしたが、2023年には高齢化率29.1%に及び、今や約3人に一人が65歳以上の高齢者です。このような社会の中では、支える側、支えられる側の立場を固定することなく、持続可能な社会を築くための取り組みが必要です。
また、年齢によって分け隔てられることなく、若年世代から高齢世代までの全ての人が、それぞれの状況に応じて「支える側」にも「支えられる側」に もなれる社会を目指し、全世代の人々が「超高齢社会」を構成する一員として、希望が持てる未来を切り拓いていくことが必要です。
高齢社会対策大綱は、上記二つの目的のために大綱が作られました。
今回の大綱の中では、以下大きく分けて3つの環境の整備が必要と提言されています。
1.生涯を通じて活躍できる環境の整備
2.一人暮らしの高齢者の増加等に対応できる環境の整備
3・機能・認知機能の変化に配慮した環境の整備
(出所)【概要】高齢社会対策大綱(令和6年9月13日閣議決定)
今回の記事では1から65歳以上の高齢者の居住支援の充実と、2から高齢期における身寄りのない人への支援の充実と難聴等感覚器機能の低下への対応についてみていきたいと思います。
居住支援の充実対策についてみてみよう
以前本ブログでも書きましたが、(部屋借りづらい人の支援、国が議論 家主の「拒否感」どう取り除く?【気になる記事ブログ⑰】)、65歳以上で賃貸住宅を探すのは、とてもハードルが高いです。株式会社R65不動産不動産の調査では、高齢者の4人に1人以上が、年齢を理由とした賃貸住宅への入居拒否を経験しているというデータがあります。賃貸住宅への入居拒否は、年収による差はほとんどありませんでした。年収よりも年齢の方が、賃貸住宅の仲介を行っている不動産会社にとっては大きな決め手となります。不動産管理会社にとっては、65歳以上の高齢者の入居には「賃貸物件内での孤独死」リスクと切り離せないもの考えられます。
(出所)株式会社R65【高齢者向け賃貸に関する実態調査】プレスリリース資料
このような状況下ではありますが、高齢者対策大綱では、「居住支援協議会や居住支援法人に対する支援を行うとともに、 行政と民間事業者の間で、住宅だけでなく福祉、相続等の相談内容に応じて支援をコーディネートする体制を構築し、住まいに関する相談窓口から 入居前・入居中・退居時の支援まで、住宅、福祉等の関係者が連携した地域における総合的・包括的な居住支援体制の整備等を図る。」と書かれていました。
高齢社会対策大綱の策定のための検討会(第8回)での報告書では、「近年、持ち家率は、20~50 代で低下傾向にあり、高齢期に一人暮らしの人 が増加する中で、高齢期における住宅の確保に対するニーズが高まることが想定されるところ、高齢期の人の入居については、賃貸人の約7割が拒否感を有している。」という記述もあり、居住支援対策は喫緊の対策と言えるでしょう。
高齢期における身寄りのない人への支援の充実対策についてみてみよう
本ブログでも何度か高齢者向け身元保証サービスや単身世帯の増加(【2050 年には単独世帯が 44.3%】2030年前半には平均世帯人員は初めて2人を割り込む未来へ)など記事を書きました。日本の世帯構造や家族に対する価値観が大きく変化しています。地縁・血縁で結ばれた共同体への帰属意識が希薄化し、個人化が加速しています。
(出所)国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)-令和 6(2024)年推計-」
このような状況も背景に、高齢期における身寄りのない人は今後ますます増加すると考えられます。
このような状況下の中、高齢社会対策大綱では、高齢期における身寄りのない人への支援の充実として、以下の取り組みが記載されています。
・自治会や町会、スポーツ団体や NPO 等のボランティア団体等、地域の多様な団体が連携して支援する環境整備に 取り組み、日常生活での緩やかなつながりづくりや居場所づくりを推進する。
・身寄りのない高齢者等の相談を受け止め、地域の社会資源を組み合わせた 包括的支援のマネジメント等を行うコーディネーターを配置した窓口の整備を図る取組や、十分な資力がないなど民間事業者による支援を受けられない人等を対象とした総合的な支援パッケージを提供する取組の試行的な実 施を通じて課題を整理し、身寄りのない高齢者等への必要な支援の在り方について検討を進める。
高齢社会対策大綱の策定のための検討会(第8回)での報告書では、「65歳以上の一人暮らしの人の数は、更なる高齢化と未婚化、単身世帯化の進行により、2040年には 2020 年と比べて 370 万人増加し、約 1,041 万人(65 歳以上の男性の約 24.2%、女性の 28.3%)となる見込みである。日常生活上のサポートなどについて家族に頼ることが難しい人の増加も懸念されることから、これまで家族等が担ってきた役割を地域や社会においてどのように担っていくかについて検討が必要である。」と書かれています。
家族の形や価値観が変わっていく中で、家族がいない人も家族に頼れない人も安心して高齢期を迎えられることが大切だと思います。2050年には44%が単独世帯になる世帯予測が出ています。必ず日本に訪れる未来です。家族が担ってきた役割を自治体や民間サービスに移管できるよう、法律の整備や仕組みなどを整えていく必要があると考えられます。
難聴等感覚器機能の低下への対応対策についてみてみよう
難聴についても以前本ブログ(耳の遠くなった高齢の親に補聴器を贈った、オリラジ藤森さんの記事から考えてみよう【気になる記事ブログ⑬】)で記載しましたが、認知症と難聴に関係があるとされています。ランセットというイギリスの医学誌によると、認知症の40%は修正可能な危険因子によるものであり、それら12の危険因子を改善することで理論上は認知症のおよそ40%が予防可能だという発表がありました。
<ランセット委員会発表の12の危険因子>
- 幼少期教育
- 高血圧
- 聴力低下
- 喫煙
- 肥満
- うつ病
- 運動不足
- 糖尿病
- 社会的孤立
- アルコール摂取
- 頭部外傷
- 大気汚染
この中に聴力の低下含まれています。高齢社会対策大綱では「補聴器等の聴覚機能に関する技術の研究開発を推進するなど高齢者向け医療機器の実用化を目指し、臨床研究等を支援する。」と書かれています。
高齢社会対策大綱の策定のための検討会(第8回)での報告書では難聴等感覚器機能の低下への影響については非常に詳細に触れています。聴力の低下に気づき困っていても、補聴器が高額で、雑音がひどく、補聴器がストレスになったり、購入をためらう人も多いと想定されます。
先日、地域の大きなスーパーで、聴力テストを無料で自治体が行っていました。買い物帰りに気楽に寄れますし、抵抗感なく行え、とても良い取り組みだと思いました。
(4)難聴等感覚器機能の低下への対応
日常生活や社会生活の維持において感覚器機能の果たす役割は大きく、特に、聴覚や視覚の機能の低下は、コミュニケーションが取りづらくなることで高齢期における社会参加や就労の障壁となり、それが更にフレイルや認知症のリスク要因となる場合があるといった指摘がある。 そのため、特に加齢性難聴については、適切な施策の検討に資するよう、調査を含め実態把握を強化するとともに、地域において加齢性難聴を早期発見し、 適切な介入につなげるための取組の充実や、難聴が高齢期の就労や社会参加の障壁とならないよう、地域や職場など社会全体における正しい知識の普及・理解促進など、当事者が生活しやすい環境を整備するべきである。また、難聴に限らず、加齢に伴う感覚器機能の低下の早期スクリーニングや定期的ケアが重要である。 補聴器については、その価格の高さに加え、雑音が多い、周囲の環境に合わせた調整が難しいなどの課題があり、活用が進んでいない。そのため、ノイズキャンセリング等機能面の向上や、内耳に直接音を届けることができる骨伝導の技術を含む新たな技術の研究開発を推進し、補聴器の活用を促進するべきである。あわせて、補聴器の購入時の消費者トラブルも報告されており、販売者の知識や技能、サービス体制の充実や、難聴当事者による購入時のサポートなど、相談体制を充実させるべきである。(高齢社会対策大綱の策定のための検討会(第8回)での報告書から一部そのまま抜粋)
高齢社会対策大綱では、何度も「自分事として」というフレーズが出てきます。公助や互助、共助の大切さも述べておりますが、「自助」が全ての前提であると解釈しました。高齢社会は来るべき未来ではありますが、まずはそれぞれが今できることから備えていきませんか。
当ブログにも以下の記事があります。よろしければお目通しください。