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8.302025
【連載シリーズ:感情と法のはざまで】 第2話 大家族というインフラ──『サマーウォーズ』と夏の記憶

『サマーウォーズ』と夏の記憶
映画サマーウォーズは2009年に細田守監督によって生み出された作品で、公開日は2009年8月1日。まさに真夏に公開された作品です。今では宮崎駿作品と共に、夏を彩る作品としてテレビでも度々放映されています。本作品は長野県上田市の大家族の中で起きる小さな出来事が世界を巻き込む大事件に発展していきます。そして家族のつながりで世界の危機を回避するという大家族で挑む冒険物語です。
今回は、大家族=多世代共生という今では目にすることが少なくなった伝統的な家族の体系と、現在の小規模化する家族のはざまについて書いてみたいと思います。
映画「サマーウォーズ」の内容について
映画『サマーウォーズ』は、仮想空間〈OZ〉の暴走と、それに立ち向かう人々の物語ですが、私が心を動かされたのは、**大家族という“感情の基盤”**が描かれていたことでした。
舞台となる陣内家には、親戚が20人以上集まり、ひとつ屋根の下で過ごします。そこには、血縁や制度を超えた信頼と役割が自然に息づいており、まるで地域社会の縮図のような空気が流れていました。
その中心にいるのが、陣内栄というおばあちゃんです。彼女の「ひとりになってはいけない」「お腹を空かせてはいけない」という言葉は、家族の秩序を守るルールというよりも、人が人として生きるための最低限の約束のように感じられました。
印象的だったのは、映像の美しさです。縁側に差し込む光、朝顔が咲く時間帯、食卓に並ぶ料理の色彩。どれも、季節と人の営みが静かに共鳴するような描写で、観ている私の記憶の中にある“夏の匂い”が呼び起こされるようでした。
大家族の多世代が集うということ
子どもたちが走り回る家の中では、誰かが料理をし、誰かが洗濯をし、誰かが叱り、誰かが笑う。子どもがいることで、大人たちの時間にリズムと目的が生まれる。それは、家族という共同体が自然に機能するための触媒のような存在なのかもしれません。
ふと考えることがあります。もし子どもがいなかったら、大人だけで数日間、なんの用事もなく一緒に過ごすことはできるでしょうか。夫婦や親密な関係でなければ、ただ“いる”ことは案外難しいものです。無為な時間を共有するには、関係性の成熟が必要なのだと感じます。
現代の小規模化する家族
現代では、単独世帯が増え、家族のかたちは多様化しています。家族は両親と二人の子供が標準家庭と言われ、テレビCMで登場する家族も四人家族が多いですが、既に子供がいる家庭の割合は全体の2割強です。今一番多い世帯は単独世帯で、2040年には単独世帯が全体の4割を超えると想定されています。また、三世代同居に関しては、内閣府の令和2年高齢白書では、1980年代では三世代同居が5割を超えていましたが、現在では10%前後で推移しています。この40年で三世代同居は急激に減少しているのがわかります。
65歳以上の者がいる世帯数及び構成割合(世帯別構造)と全世帯に占める65歳以上のいる者が占める割合
私の夏休み
私自身も、かつての夏休みに甥や姪と過ごした記憶があります。特別な予定がなくても、子どもがいるだけで一日があっという間に過ぎていきました。あの頃は、いつもの静かで自分ですべてを決められていた時間が、子どもたちの遊び声や喜怒哀楽にあっという間に占領され、いつも振り回されてばかりでした。誰かが泣いて、誰かが笑って、誰かが怒られて——私は大量の食器を洗いながら、そのざわめきの中に身を置いていました。
不機嫌でも、楽しくなくても、思い出すのはいつも、あのざわめきの中にあった食卓の風景です。誰かと一緒にいた時間が、確かにそこにあったということ。
以前『万引き家族』についてブログで書いたとき、「家族とは何か、血縁なのか共に過ごした時間なのか」と問いかけたことがあります。
「食事を共にすることと無為な時間を共有すること」——それも、家族の大事な構成要素なのかもしれません。
世帯が小規模化する現象はこれからも続いていくと予想されます。個人が自分の尊厳を保障され、自分の意思で自由に人生を選択できることは素晴らしいことですが、同時に単独世帯が増えていくと、陣内栄さんが手紙で残した「ひとりにならにこと」、「お腹を空かせない事」とは逆にひとりでいることが増える可能性があります。つながりと自由のバランスをとるのが、一段と難しい時代に入りました。家族である必要はありませんが、誰かとつながることが自分自身のセーフティーネットになります。誰とどのようにつながるのか、今後大きな課題になるかもしれません。
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