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認知症に関する初の法律「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が国会で可決【気になる記事ブログ⑭】

認知症に関する初の法律「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が6月14日、参院本会議にて全会一致で可決 朝日新聞デジタルの記事から考えてみよう【気になる記事ブログ⑭】

 

  • 認知症への施策、過去30年の歩み
  • 認知症施策の歩みから考える「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の社会的意義
  • 認知症基本法の基本理念7つ
  • 2025年問題を見据えた認知症対策は、着々と施策が整ってきた印象

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

認知症への施策、過去30年の歩み

 

1986(昭和61)年    厚生省は、痴呆性老人対策本部を設置。

1989(平成元)年     老人性痴呆疾患センターの創設

1997(平成9)年     認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の制度化

2001(平成13)年    認知症介護研究・研修センターの開設。

2003(平成15)年  高齢者介護研究会が、「2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~」という報告書をまとめる

2004(平成16)年  「痴呆」という用語が侮蔑的な意味合いを含んでいることで「痴呆」から「認知症」へと呼称変更。

2008(平成20)年  「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」が組まれる

2012(平成24)年  「今後の認知症施策の方向性について」をとりまとめ、公表

2012(平成24)年 厚生労働省は、「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」(平成25年度から29年度までの計画)を策定し、公表

2014(平成26)11月、「認知症サミット日本後継イベント」が開催

2015(平成27)年 オレンジプランを修正してできたのが「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)

2023年(令和5年)「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が参院本会議で可決

(参考資料・引用資料)厚生労働省HPWAMNET

 

認知症施策の歩みから考える「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の社会的意義

 

今から30年ほど前までは、認知症という言葉ではなく、今でいう認知症の症状が出ている状態を「痴ほう」と呼ばれていました。私が青年期の頃は、「〇〇さんちのおばあさん、痴呆症になっちゃったんだって。」と耳にすることも多かったです。しかし、「痴ほう」という言葉が差別的であり、不快感を伴う言葉であるとして、また症状を的確に説明できていないという状況もあり、厚生労働省が「痴ほう」から「認知症」に呼称を変更しました。

2021年にMS&ADインターリスク総研株式会社が認知症をテーマにアンケート調査を行ったところ、「最もかかりたくない病気」や「身の回りのことができずに施設に入る」などのマイナスのイメージが高く、2025年には認知症患者が700万人に、65歳以上の5人に1人が発症する、誰もがなる可能性の病気であるにも関わらず長く、差別的な状況に置かれてきました。そのような歩みを経て、2023年6月に「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が参院本会議で可決され、認知症患者の「認知症の人が尊厳を保持しつつ社会の一員として尊重される社会の実現を図る」と認知症基本法の目的に明示されたのは、社会的意義のとても大きい事と推察されます。

 

認知症基本法の基本理念7つ

 

認知症基本法の理念は、認知症の人が尊厳を保持しつつ、希望を持って暮らすことができるよう、施策を総合的に推進するというものです。具体的には、以下の7項目が挙げられます。

 

  1. 全ての認知症の人が自らの意思によって日常生活や社会生活を営めるようにする
  2. 国民が、認知症や認知症の人に関する正しい知識や理解を深めることができるようにする
  3. 認知症の人が意見を表明したり、活動に参画したりする機会を確保する
  4. 認知症の人だけでなく、その家族らへの支援も適切に行われる
  5. 認知症の人に対する差別や偏見をなくす
  6. 認知症の人に対する暴力や虐待を防止し、被害から守る
  7. 認知症の人に適切な保健医療サービスや介護サービスが提供される

このような理念に基づいて、政府は認知症施策推進本部を設置し、関係者会議の意見を聞きながら、施策を推進するための基本計画を策定することになっています13。

(参考資料)NHKニュースなかまぁる、

 

 

2025年問題を見据えた認知症対策は、着々と施策が整ってきた印象

 

以前の記事にも書きましたが、2025年に団塊の世代が全員75歳の後期高齢者に入ります。少子高齢化で日本の人口は緩やかに減少を続け、今から20年後の2043年に65歳以上の「高齢者の人口」が約3953万人でピークを迎えると予測されています。このような状況下で、いびつな人口構造を迎えた日本では、認知症の患者の支援が喫緊の課題となるでしょう。少子化により生産年齢人口が増えない状態では、行政・医療・福祉・介護の業界で人手不足が予想されています。オレンジプランの目的にも、「高齢者の方々が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・介護予防・住まい・生活支援が包括的に確保される「地域包括ケアシスム」の実現を目指す中で、認知症について社会を挙げた取組のモデルを示していくもの」とされています。「痴ほう」という言葉から「認知症」に呼称変更した2004年から40年後に訪れる高齢者人口のピークに備えていたことを考えると、着々と施策が整ってきた印象を受けます。

認知症・成年後見制度に関しては、他にも記事があります。よければこちらまでご覧ください。

 

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