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【介護休暇・介護休業制度の利用進まず】介護離職発生企業の5割が介護休業制度不使用 【気になる記事ブログ21】

【介護休暇・介護休業制度の利用進まず】介護離職発生企業の5割が介護休業制度不使用

東京商工リサーチの「介護離職に関するアンケート」調査について考えてみよう【気になる記事ブログ21】

 

以前から発生していた介護離職を減らすため、昨今介護休暇、介護休業の取得促進を促す動きが近年強まっています。しかし実際、介護離職者のうち5割が介護休業制度を不使用だったことがわかりました。

団塊の世代が全員75歳以上を迎える2025年まであと一年と数か月です。

なぜ介護休業制度の利用が進まないのか、どうしたら介護を抱えた人たちが仕事と両立できるのか、今回の調査結果から考えてみたいと思います。

 

  • 今回の記事の概要をみてみよう
  • 介護休暇・介護休業の取得が進まない企業側が考える3大問題とは
  • 介護の「終わり」の予測が難しい、という切実な問題
  • 介護に関わらず「休暇がとりにくい」と感じる日本人が多い??

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

記事の概要についてみてみよう

 

東京商工リサーチ(TSR)は企業を対象に、2023年10月に介護離職についてアンケート調査を実施しました。過去1年間(2022年9月~2023年8月)に介護を理由とした退職者(以下、介護離職者)の発生状況、実際の人数、離職者の性別、雇用形態などの対象者の属性の調査。また介護休暇・休業の利用度、介護休暇推進のための企業側の取り組み、取り組みが不十分と感じる企業側の理由、介護休暇・休業制度の93日という期間への捉え方やその理由などが、離職者、企業側の立場から調査内容となっています。調査結果によると今年2023年8月までの1年間に介護離職者が発生した企業は10.1%で、このうち正社員が65.3%を占めました。仕事と介護の両立支援をマニュアルなどで明文化している企業は50.2%と半数でした。しかし、介護離職者の54.5%は、過去1年間に介護休業や休暇などの制度を利用しませんでした。(引用)東京商工リサーチHPから

 

 

介護休暇・介護休業の取得が進まない企業側が考える3大問題とは

 

東京商工リサーチの調査結果から、介護休暇・介護休業の取得が進まない原因と考える上位3つの理由は以下となります。

  • 代替要員を確保しにくい 4%(1,913社中、1,194社)
  • 自社に前例が少ない 9%(994社)
  • 介護休業制度が社員に浸透していない 1%(596社)

以前も介護休業が企業側の周知義務になったという記事を書きましたが、実態としては、なかなかか支援制度を整備しても社員の利用が低く、仕組みなどの周知徹底が遅れている可能性もあります。(東京商工リサーチのHPから引用)2,3の理由に関しては、「前例がない」や「社員に浸透していない」というのは、日本の企業文化に影響を受けている可能性もありますが、「代替要員を確保しにくい」というのは今の人手不足の産業構造上の問題で、特に切実です。トラック運転手の長時間労働を是正する規制が2024年4月から適用され、物流に大きな人手不足が生じるのではないかと物流の2024年問題が以前より懸念されています。また建設業の現場でも同様の人手不足が予測されています。

このような状況下で、経験もスキルも高い中堅以上の社員が介護休暇、介護休業を申請するのはハードルが高いのかもしれません。

 

※2024年問題とは

2019年4月(中小企業は2020年4月)、働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定された。一方、「適用猶予事業・業務」については長時間労働の背景および業務の特性や取引慣行の課題により、時間外労働の上限について適用が5年間猶予され、一部特例つきで適用されている。この猶予期間が2024年3月に終了することから、「2024年問題」と呼ばれる。

主に「2024年問題」として報じられるのは自動車運転の業務を伴う運輸業(特に物流業界、路線バス、タクシー)建設業界、医療関係(病院の勤務医)である。

(出所)Wikipedia

 

 

介護の「終わり」の予測が難しい、という切実な問題

 

介護休暇、介護休業を取得しづらい理由の一つに、介護の「終わり」の予測が難しいという問題があります。育児にも介護にももちろん個人差・個体差があることは承知していますが、育児に比べ、介護は人により数か月から数十年と非常に幅が広く、終わりが予測できないため、「いつ使うか」、「いつまでこの状態が続くのか」という心理的負担が強く、離職せざるを得ない状況に追い詰められてしまうケースもあると推察されます。

公益社団法人生命保険文化センターが行った調査では、介護の平均期間は5年1か月だったそうです。4年を超えて介護した人は全体の約5割です。また10年以上の介護を要した方も17.6%で、介護が長期間に及ぶ可能性も全体の2割弱で、介護期間に個人差が大きいことがわかります。

介護休暇、介護休業の最長が現状93日ですが、この日数についても調査質問があり、「長い」、「ちょうど良い」、「短い」の中では、どの回答も3割強で、「短い」が35%と他の回答より数%高くなっています。

(出所)公益社団法人生命保険文化センター

 

 

介護に関わらず「休暇がとりにくい」と感じる日本人が多い??

 

今回の調査で、「介護に関わらず、休暇が取りにくい」が15.6%(299社)、「職場の雰囲気(上司・同僚の意向)」が9.7%(187社)など、休暇をとりづらいと感じている割合も一定数あります。日本では2007年12月に、「ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議」において、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び 「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定されました。ワーク・ライフ・バランスが提唱されてから16年目を迎え、その間働き方もずいぶん変化してきましたが、仕事に優先して休みを取ることの難しさは未だにあります。特に組織の中でチームで仕事を分担している場合、自分の仕事を誰に割り振るかは、割り振る方、割り振られる方双方に大きな問題となります。

またそれだけではなく、日本人は外国人に比べ有給消化率が低いという客観的なデータもあります。

(出所)Expedia

 

2020年のコロナ禍を経、日本人の働き方も大きく変わった印象がありますが、若い世代ではなく40代以降の中高年の意識、企業文化などが変わるには、もう少し時間がかかりそうです。ここ数年で男性の育児休暇、休業取得の数値が上がっています。育児と介護は異なるものですが、不本意な介護離職が少しでも減るよう、今後も介護休暇、休業制度について中注視していきたいと思います。

 

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