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【相続放棄】過去最多26万件 空き家増え、対策課題 共同通信のニュース記事から考えてみよう【気になる記事ブログ26】

【相続放棄】過去最多26万件 空き家増え、対策課題 共同通信のニュース記事から考えてみよう【気になる記事ブログ26】

 

  • 記事の概要をみてみよう
  • 相続放棄とはなんでしょうか
  • 空き家を相続放棄したら、管理責任はどうなるのでしょうか
  • 相続放棄だけではなく、空き家を利活用する選択肢もあります

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

記事の概要についてみてみよう

 

最高裁判所の司法統計から、2022年は全国の家庭裁判所で過去最多の26万497件の相続放棄の申立が受理されたことがわかりました。相続放棄とは、相続人が金融資産や不動産などのプラスの財産、同時に債権や借入金などのマイナスの財産の両方を放棄することです。専門家によると、空き家となった実家を固定資産是や維持費の負担で手放したり、縁遠い親族の財産を受け取らなかったりする例が目立つと指摘しています。

(出所)共同通信ニュース

司法統計の相続放棄のデータは昭和24年(西暦1949年)からのデータが集積されています。今回司法統計から、昭和24年(1949年)から2022年までの相続放棄の件数を約10年単位でグラフ化し、あわせて直近2015年から2022年までの8年分のグラフを作成しました。

72年間の推移をみてみると、相続放棄の件数は1949年から1985年にかけて件数が減っており、1985年が底となり、その後、徐々に件数が増え、直近の2022年が最多の相続放棄の件数となっています。また1995年から2005年の10年間で、相続放棄の件数が倍増しており、この時期はバブル経済崩壊で日本が長く景気低迷期に入った時期と重なります。

2023年には相続土地国庫帰属制度が2023年4月27日から始まり、相続登記の義務化が2024年4月から始まりました。少子高齢化による相続時のスムーズな空き家対策の一環です。またこれらの制度が始まることにより、相続放棄の件数は、今後もっと右肩あがりとなることが予測されます。

(出所)裁判所 司法統計

 

 

相続放棄とはなんでしょうか

 

相続放棄とは、相続人が、被相続人の権利義務の承継を拒否する意思表示のことをいいます。

相続放棄は、相続が開始したことを知ってから3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出し、それが受理されることによって認められます。

相続放棄すると、その者は最初から相続人でなかったことになります。放棄者の直系卑属(子、孫など)について代襲相続が起きることもありません(法テラスのHPから一部抜粋)

民法で定められている条文は主に以下となります。

■民法915条

(相続の承認又は放棄をすべき期間)

第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

 

■民法938条

第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

 

■民法939条

(相続の放棄の効力)

第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

(出所) G-GOV

 

 

空き家を相続放棄したら、管理責任はどうなるのでしょうか

 

空き家の相続放棄をする場合、固定資産税の支払いや維持費など、相続人の精神的、経済的負担を理由として相続放棄を選択することが多いでしょう。しかし相続放棄をすれば、すぐに相続人の義務がなくなるわけではありません。民法940条に「相続の放棄をした者による管理」という条項があります。

 

■民法941条

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

従前より、相続放棄をしても相続人に引き渡されるまでは、相続財産を管理する義務がありました。民法等改正(2023年4月1日施行)により、「現に占有しているとき」という一文が加えられ、管理という言葉から保存という言葉が使われるようになりました。

また「現に占有しているとき」という一文が加えられたことにより、空き家と離れた遠い地域で世帯を完全分離して生活をしている相続人であれば、空き家の保存義務がないと解釈されます。

これに対して国土交通省住宅局住宅総合整備課が各都道府県・指定都市空き家対策担当部局にあてた事務連絡には、占有者判断は個別事案ごとに判断が必要としたうえで、

例えば 対象の家屋に占有者自身の家財や荷物等を保管している場合や、対象となる家屋の鍵を保有している場合には、占有者に当たる可能性があります。」と見解を示しています。

占有者かどうかは、事案ごとに異なりますので、空き家を相続放棄する場合は、ご自身で判断する前に、弁護士や司法書士などの専門家に相談するのが良いでしょう。

(出所)G-GOV

相続放棄者の空き家の管理責任の考え方について(情報提供)(国土交通省)

令和3年民法・不動産登記法改正、 相続土地国庫帰属法のポイント(法務省民事局)

 

 

相続放棄だけではなく、空き家を利活用する選択肢もあります

 

相続人が既に持ち家で相続する空き家が遠方にある場合、金融資産などプラスの財産が多く、空き家を相続して生じる様々な経済的、精神的負担より手にする財産が大きい場合は、相続する道を選ぶ人も多いでしょう。しかし、空き家に関しては、様子見していたところ、既に何年も何十年も手つかずで残り、世代交代もあり、事情を知らない子孫の世代に問題が顕在化し、行政代執行で空き家の保全費用が相続人に請求されるケースもあります。

このような未来の世代に問題を先送りする前に、まずは専門家に相談してみましょう。

今では空き家バンクに登録したり、空き家の利活用をすることも可能です。また中古販売や、リフォームして賃貸など、空き家の活用方法も様々です。しかしながら、全ての空き家がこのように利活用できるわけではありませんので、まずはどのような方法があるのか専門家に相談するのが良いでしょう。

国土交通省のホームページにも空き家の特設サイトがあります。

また、東京都行政書士会でも空き家問題の取り組んでおり、空き家問題相談員などの認定制度もあります。

空き家問題でお困りの方はお気軽に、こちらまでご相談ください。

空き家問題に関する当事務所のブログのページはこちらです。よければご参照ください。

(出所)国土交通省 空き家特設サイト東京都行政書士会HP

 

日本では少子高齢化が進み、2040年にかけて年間160万が亡くなる多死社会が予想されています。空き家問題も喫緊の課題です。自分が当事者になった際は、問題を先送りせず、まずは専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

 

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