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【身元保証】前編:政府、高齢者身元保証のガイドライン提示 福祉新聞の記事から、総務省の身元保証等高齢者サポート事業の調査の問題提起と比較して考えてみよう【気になる記事ブログ29】

【身元保証】政府、高齢者身元保証のガイドライン提示 福祉新聞の記事から、総務省の身元保証等高齢者サポート事業の調査の問題提起と比較して考えてみよう【気になる記事ブログ29】

 

総務省は、「身元保証等高齢者サポート事業における 消費者保護の推進に関する調査」結果を令和5年8月に発表しました。加速する少子高齢化により、身寄りのない、もしくは親族と疎遠な高齢者が増え、身元保証サービスのニーズが高まっていますが、現時点で本事業の基幹となる法律、管轄する省庁などはありません。身元保証サービスの事業者と利用者の間で契約トラブルなどが発生するケースもあり、総務省が昨年身元保証等高齢者サポート事業を調査し、現状を発表しました。身元保証等高齢者サポート事業に対する事業者、自治体に対する指針は急務といくつかの問題提起があり、令和6年6月に政府により、身元保証のガイドライン案が提示されました。

今回は、本ガイドラインの意味付けと、昨年の調査結果から出された問題提起について、どの問題提起についてガイドラインが示されたのか、具体的にみていきたいと思います。

また今回、前編では今回の記事の概要と、本事業の前提条件、用語などの整理、総務省の調査結果から提起された問題点の振り返り、後編では総務省の調査結果から提起された問題点について、具体的に今回のガイドラインで明示された内容についてみていきたいと思います。

 

以下参考までに、私が考察しました昨年の総務省の調査結果に関する記事、また身元保証に関する記事となります。良ければお読みください。

【前編:身元保証等高齢者サポート事業】総務省の初の実態調査の結果からサービス内容と問題点についてそれぞれ考えてみよう【データから考えてみよう⑯】

【後編:身元保証等高齢者サポート事業】総務省の初の実態調査の結果からサービス内容と問題点についてそれぞれ考えてみよう【データから考えてみよう⑰】

【身元保証】サポート 全国初の事業者認証制度導入へ 静岡市の NHKニュース記事から考えてみよう【気になる記事ブログ27】

 

  • 記事の概要をみてみよう
  • 高齢者等終身サポート事業の前提条件となる大きな2つのルールとは
  • 高齢者等終身サポート事業のサービス提供にあたっての基本的な考え方とは
  • 総務省実施の「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」で報告された、現状の具体的な問題点をみてみよう

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

記事の概要についてみてみよう

 

政府は令和6年6月19日に孤独・孤立対策推進本部の初会合を開き、初めて、(※注1)高齢者等終身サポート事業に関するガイドライン案を提示しました。政府が本件についてガイドライン案を提示したのは初めてです。少子高齢化が加速し、一人暮らしの高齢者が増える中、入退院の身元保証や死後の財産管理など、高齢者向け身元等保証サービスの需要が増えていますが、法律や所轄省庁などがなく、事業者と利用者の間のトラブルも報告されています。本ガイドラインは消費者が安心して利用できるよう、また事業会社には事業運営の適正化のためのガイドライン案となっています

具体的には①ガイドライン案では契約書や重要事項説明書を交付することや、②寄付、遺贈を契約条件としないことが重要だとしました。③提供したサービス内容、費用などを記録して保存することや④利用者から前払い金を預かる場合は運営資金と明確に分けて管理することを求めました。

また、⑤利用者から契約解除を求められた場合の手順の説明を努力義務とし、⑥利用者の判断能力が不十分となった場合は成年後見制度の活用が必要だとしました。⑦ホームページなどによる情報開示や相談窓口の設置も促しました。(※注2)

(出所:福祉新聞から一部そのまま抜粋)

※注1 昨年の総務省の身元保証事業者の実態調査時では、「身元保証等高齢者サポート事業」と呼称していましたが、本ガイドラインではこれまでの「身元保証等高齢者サポート事業」という呼称を「高齢者等終身サポート事業」と呼称することとしているそうです。

※注2 ①から⑤については後編ブログで詳細を説明する予定です。

 

 

高齢者等終身サポート事業の前提条件となる大きな2つのルールとは

 

高齢者等終身サポート事業では、根拠となる法律も管轄省庁もまだ明確ではありませんでしたが、今回のガイドラインでは、民法消費者契約法前提条件にあるとの記述があります。

高齢者等終身サポート事業については、将来にわたる身元保証等サービスであることや死後事務サービスを含むものであり、契約が長期にわたること、 サービス提供に先行して一部費用が前払いされるなどのため契約内容の適正な履行を確認しにくいこと、判断能力の低下が懸念される高齢者を主な対象としているため、契約者の意思能力の有無等をめぐって事後的に争いが生じる可能性があること等の課題があることから、一般的な契約に比べ利用者保護の必要性が高いなど、民法(明治 29 年法律第 89 号)、消費者契約法(平成 12 年法律第 61 号)等の民事法の規律等も踏まえ、適正に事業が営まれることが重要といえます。(ガイドラインより一部抜粋)

 

■民法とは

民法は、私人間の日常の生活関係において一般的に適用される法律で、契約や相続、親族などに関するルールを定めています。日本の民法は、私法の一般法を規律する法律であり、総則、物権、債権、親族、相続などの分野をカバーしており、法務省の民事局が主務官庁です。

 

■消費者契約法

消費者契約法は、消費者と事業者の間で締結される契約において、情報や交渉力で劣る消費者を保護するための法律です。具体的には、以下の3つの規制が設けられています。

 

1.不当な勧誘による契約の取り消し:事業者による不当な勧誘が行われ、その結果として消費者契約が締結された場合、取り消しの対象となります。

2.不当条項の無効:消費者にとって一方的に不利益な消費者契約の条項は、無効となります。

3.適格消費者団体による差止請求:適格消費者団体が不当な勧誘や不当条項に対して、行為の停止などを求めることができる制度です。

 

本ガイドラインで、民法と消費者契約法の条文が参考資料に記載されています。また高齢者等終身サポート事業は判断能力が低下した際には、後見制度への速やかな移行も必要となるので、任意後見制度を律した法律の条文も参考資料に記載されています。民法と消費者契約法が、高齢者等終身サポート事業を規定する法律と言えるでしょう。

(出所)高齢者等終身サポート事業者ガイドライン 令和6年6月 内閣官房(身元保証等高齢者サポート調整チーム) 内閣府 孤独・孤立対策推進室 金融庁 消費者庁 総務省 法務省 厚生労働省 経済産業省 国土交通省

 

 

高齢者等終身サポート事業のサービス提供にあたっての基本的な考え方とは

 

ガイドラインの内容を集約すると高齢者等終身サポート事業のサービス提供にあたり、下記3点が重要な考え方と言えるでしょう。

 

1.利用者本人の尊厳を守り、自己決定を尊重することが重要である

2.利用者本人の価値観や選好に基づく意思決定を行えるよう配慮することが重要である。

3.関連する各種制度やサービスを提供する事業者等との連携・役割分担を図りながら、利用者の視点に立った支援が行われることが望ましい。

 

これらは権利擁護、意思決定支援の考え方になります。意思決定支援とは、個々の意思や選好を尊重し、第三者の意見や判断を押し付けないことが大切だという考え方です。意思決定支援は、誰もが心の中にしっかりとした意思を持っていることを理解し、その人らしい生き方をサポートする重要な考え方になります。高齢者等終身サポート事業のサービス提供にあたり、利用者の方々の尊厳と自己決定権の尊重が求められます。

(出所)高齢者等終身サポート事業者ガイドライン 令和6年6月 内閣官房(身元保証等高齢者サポート調整チーム) 内閣府 孤独・孤立対策推進室 金融庁 消費者庁 総務省 法務省 厚生労働省 経済産業省 国土交通省

 

 

総務省実施の「身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査」で報告された、現状の具体的な問題点をみてみよう

 

調査結果の報告書からは、主に7点の課題提起が行われています。

 

1.契約手続、手順

2.預託金の管理状況

3.判断能力が不十分になった場合の財産管理の取り扱い

4.契約履行の確認、担保

5.契約の解約と返金ルール

6.寄附・遺贈の取扱い

7.地方公共団体等における住民への情報提供(事業者やサービス内容を選ぶ上で注意すべきポイント)※の管理状況

(出所)「身元保証等高齢者サポート事業における 消費者保護の推進に関する調査」

後編では、この上記6点も問題提起について、ガイドラインでどのような回答になっているのか、細かくみていきたいと思います。

また、ガイドライン全体を通じて今後一人暮らしの高齢者が増えてくる中で必要となってくる仕組みなどについても触れていきたいと思います。

 

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