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12.312024
【介護職員 2040年度57万人不足】訪問介護 基本報酬の引き下げと地域包括ケアシステムの目指す姿から介護の現状を考えてみよう【後編】【データから考えてみよう㉕】
【介護職員 2040年度57万人不足】訪問介護 基本報酬の引き下げと地域包括ケアシステムの目指す姿から介護の現状を考えてみよう【後編】【データから考えてみよう㉕】
2024年7月に厚生労働省から【介護職員 2040年度57万人不足】というショッキングな数字が発表され、ニュースをご覧になった方も多いと思います。
また当ブログで以前書かせていただきましたが、【訪問介護220カ所休廃止】など、介護の現場で大きな動きが出てきています。2025年には団塊の世代の方が全員75歳を迎え、後期高齢者となり、介護の問題は喫緊の課題です。
今回、介護の現状を総務省発表のデータから紐解き、次回は介護事業者の倒産数の増加、現在何が起きているのかみてきたいと思います。介護の問題は、いつか、必ず誰もが直面する問題です。自分事として現在の日本の介護の状況をみていきたいと思います。
前編では、介護職員の不足数の現状をみてきました。そして介護職員の不足数は都道府県で大きな差があることがわかりました。特に北海道と青森では介護職員が将来的にも足りないと推察されます。今年は訪問介護の事業者の倒産が過去最高を記録するニュースなどもありました。後編では令和6年度介護報酬改定から訪問介護の基本報酬が引き下げられたこと、また同改訂で謳われていた「地域包括ケアシステムの深化・推進」について、考えていきたいと思います。
- 「介護事業者」の倒産145件、1‐10月で年間最多を更新 「訪問介護」が過去最多、人手不足と物価高が重荷に 東京商工リサーチの記事の概要をみてみよう
- 訪問介護 基本報酬の引き下げについて令和6年度介護報酬改定の概要をみてみよう
- 地域包括ケアシステムの目指す形を考えてみよう
- 地域包括ケアシステムの実現に向けて一緒に考えてみよう
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
「介護事業者」の倒産145件、1‐10月で年間最多を更新 「訪問介護」が過去最多、人手不足と物価高が重荷に 東京商工リサーチの記事の概要をみてみよう
介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が、2024年1-10月で145件発生しました。これまで年間最多だった2022年の143件を上回り、2カ月残して過去最多を記録しました。ヘルパー不足が深刻な訪問介護は、年間最多の72件に達し、デイサービスなどを通所・短期入所も高水準で推移しています。2024年は介護事業者の倒産が年間170件を超えるペースで推移しており、社会的にも介護事業者の淘汰が深刻さを増しています。
すでに2023年の67件を抜いて年間最多を更新中の訪問介護は、ヘルパー不足や燃料代などの運営コスト上昇に加え、2024年の介護報酬マイナス改定の影響が出ている可能性があります。
破産が143件中137件(同94.4%)と、先行きの見通しが立たず破産を選択した事業者が多くありました。事業規模は、個人企業他を含め資本金1,000万円未満が125件(同86.2%)、従業員10人未満が121件(同83.4%)、負債1億円未満が114件(同78.6%)と、小・零細事業者を中心としている。2022年以降は人手不足、物価高(ガソリン高)が重なり、倒産の増勢が強まっています。(商工リサーチの記事から一部そのまま抜粋)
体力があり、効率化が進む大手事業者と、過小資本で体力のない小・零細事業者は格差が広がっており、体力のない小・零細事業者から、破綻している状況が垣間見えています。
訪問介護 基本報酬の引き下げについて令和6年度介護報酬改定の概要をみてみよう
今回の訪問介護事業者の倒産が、令和6年度介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が2%引き下げられたことに影響を与えているのではないかと言われています。前章の東京商工リサーとの記事、またNHKニュース「増える介護事業者の倒産 苦境の訪問介護」などもあります。
前回の記事でも介護職員の就業環境向上のため、賃金は上昇しています。しかし事業者の基本報酬が引き下げられると、体力のない小・零細事業者はこの引き下げが体力的に受け止められず倒産に至るケースもあります。
しかし、なぜ訪問介護の基本報酬が引き下げられることになったのでしょうか。
それは「令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要」で訪問介護の令和4年度の決算の税引前収支差率が7.8%と訪問系のサービスが、他のサービスに比べて良好で、訪問介護を経営する介護事業所の経営状態が良いと考えられたため、他のサービス事業者との整合性をはかるために基本報酬が引き下げられたと考えられています。
しかし、大手の事業者と小・零細事業者ではそもそも規模が違い、大手の数字に引きずられて実態を伴わない小・零細事業者が基本報酬の引き下げの影響を受けているようです。また加算点を向上させるためには、介護職員のスキルアップや地域の機関との連携など、介護事業者として求められるレベルが上がってきています。
石破首相も介護の現状を「尋常ならざる事態」と表現していますが、国が今の現状をどのように理解し、どのような施策を令和7年度に行うのか、状況をしっかり見極めることが大事になってくるでしょう。
(出所)厚生労働省、令和6年度介護報酬改定、令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要
地域包括ケアシステムの目指す形を考えてみよう
令和6年度介護報酬改定でも、地域包括ケアシステムの深化・推進が大きなテーマとして取り上げられています。
地域包括ケアシステムとは、高齢化が進む社会において、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援の5つの要素を一体的に提供する仕組みこのシステムは、特に高齢者が要介護や要支援状態になった場合でも、自立した生活をできる限り続けられることを目指しています。地域を基盤とし、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるよう、地域に広がる支援が行われます。 特に「日常生活圏域」(おおむね30分以内でアクセス可能な範囲)が重視されます。
地域包括ケアシステムの実現に向けて一緒に考えてみよう
現在、団塊の世代が全員75歳の後期高齢者になる2025年に向けて地域包括ケアシステムを地域ごとで構築している最中です。各自治たちで懸命に地域包括ケア実現のため、様々な施策や住民を巻き込んでの研修会などが実施されています。しかし血縁地縁の希薄化により、地域コミュニティは大きく力を失ってしまいました。今では自治会に入る人も少なくなり、民生委員の担い手も減っているという報告もあります。
介護の問題、生老病死の問題は必ず誰もがいつかは向き合う問題です。訪問介護の事業者は地域包括ケアに不可欠な存在です。私たちひとりひとりが当事者意識をもって、今起きている問題を国や行政に任せ過ぎず、自分たちがどの地域で、どんな介護を受けたいのか、地域包括ケアシステムの実現に向けて一緒に真剣に考えてみませんか。