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3.102026
**法律はどこへ向かうのか ―― デジタル化とともに変わる行政手続と、行政書士の新しい使命 ――**

はじめに:いま、法律が大きく動いている
近年、戸籍法、公証制度、民法、行政手続法、そして行政書士法に至るまで、
これほど多くの法律が短期間に改正される時代は、かつてありませんでした。
その背景には、社会全体が「デジタル社会」へと大きく舵を切ったことがあります。
しかし、デジタル化は若い世代だけのものではありません。
むしろ、終活・相続・介護・遺言といった人生の大切な局面に向き合う世代にこそ、
その影響は大きく、時に不安を伴うものでもあります。
私は、制度が整う前の時代に、私自身も含め
生活者の方々がどれほどの負担を抱えていたかを間近で見てきました。
だからこそ、今回の法改正が「生活者のための変化」であることを、
丁寧にお伝えしたいと思います。
近年の戸籍法改正は、**「デジタル化」「利便性向上」「行政手続の効率化」**が大きなテーマです。
| 年 | 主な改正内容 |
|---|---|
| 1994 | 戸籍のコンピュータ化 |
| 2019(法成立) | デジタル化を中心とした大規模改正 |
| 2024 | 広域交付制度開始、戸籍証明書添付の原則不要化 |
| 2024〜2025 | オンライン請求、氏名フリガナ義務化 |
| 2025 | 条文整理・振り仮名変更手続の新設 |
第1章 デジタル化の本質は“生活者の負担を減らすこと”
マイナンバー制度の整備、行政機関の情報連携、オンライン申請の拡大。
これらはすべて、生活者が抱えてきた「見えない負担」を減らすための取り組みです。
- 役所を何度も回る負担
- 紙の書類を集める負担
- 遠方の自治体とのやり取り
- 郵送費や時間のロス
特に高齢者や遠方の家族にとって、これらは大きな壁でした。
デジタルと言えば、0.1の世界でアナログに比べ冷たいイメージがあるかもしれません。
しかしデジタル化は、冷たい仕組みではありません。
人の負担を減らすための道具です。
第2章 戸籍法改正:広域交付が救う“見えない苦労”
● 広域交付がなかった時代の現実
相続手続で必要な「出生から死亡までの戸籍」を集める作業は、
制度が整う前は本当に大変でした。
あるご相談者のご両親は、転居のたびに本籍地を移していました。
その結果、複数の都道府県に戸籍が点在し、
すべての自治体に郵送で請求する必要がありました。
当時は小為替を同封し、お釣りも小為替で返ってきます。
戸籍が思いのほか厚く、郵便代が不足して自治体から電話が来ることもありました。
小為替の有効期限、返信封筒の料金、書類の漏れ……
一つでも間違えるとやり直しで、
途中で集中力が切れそうになるほどの負担でした。
● 広域交付制度の意義
2024年に始まった広域交付制度は、
こうした負担を根本から解消するためのものです。
- 全国どこでも戸籍が取得できる
- 郵送費・日数・労力が大幅に軽減
- 実務家にとっても依頼者にとっても大きな助け
制度が変わることで、生活者の負担は確実に軽くなっています。
● 氏名のフリガナ義務化
戸籍に正式な読み仮名が記載されることで、
行政・医療・金融などでの読み違いが減り、
生活の小さなストレスが解消されていきます。
第3章 公正証書遺言のデジタル化:人生の“もしも”に備えるために
● コロナ禍で痛感した「オンラインの必要性」
白寿に近い方の公正証書遺言を作成したときのことです。
コロナ禍で公証人が施設へ出張し、公正証書遺言を作成しました。
入館人数の制限、体温測定、検査キット、陰性証明……
通常の何倍もの時間と費用と手間がかかりました。
人生には、予想できない事態が起こります。
そのとき、オンラインで遺言を作成できる選択肢があることは、
本人にとっても家族にとっても大きな助けになります。
● 遺言がないことで起こる“現実の痛み”
長年お父様の介護を続けた方が、
亡くなった後に兄弟から「自分の相続分を欲しい」と言われたケースがありました。
遺産は不動産のみ。
現預金など他の資産がないため、家を売る以外に方法がありませんでした。
介護を担った方が、住み慣れた家を手放すことになる――
これは決して珍しい話ではありません。
もし遺言があれば、
遺留分は1/2ではなく1/4になり、
別の選択肢が生まれた可能性がありました。
遺言は「争いを避けるための道具」であり、
デジタル化はそのハードルを下げるためのものです。
第4章 民法改正(共同親権)と家族の多様化
2026年4月から始まる共同親権制度は、
デジタル化とは別軸の改正ですが、
**「家族の形が変わる社会に合わせた法改正」**という大きな流れの一部です。
戸籍法の改正とも連動し、
家族情報の扱いがより柔軟に、より現実に即したものへと変わっていきます。
生活者にとって大切なのは、
制度がどう変わるかよりも、
**「自分の生活にどう影響するのか」**という視点です。
第5章 行政書士法改正:デジタル社会における行政書士の新しい使命
2026年1月施行の行政書士法改正では、
行政書士の使命として次のように明記されました。
行政書士は、デジタル社会の進展を踏まえ、
情報通信技術の活用その他の取組を通じて、
国民の利便の向上及び業務の改善進歩を図るよう努めなければならない。
これは、行政書士が
「紙の手続の専門家」から
**“デジタル手続の橋渡し役”**へと役割を広げることを意味します。
デジタル化が進むほど、
不安を抱える人は増えていきます。
- ログインパスワードが覚えられない
- 専門用語が難しい
- 電話での対応が減り、融通がきかない
- デジタル化が人生の後半で始まった世代には特に負担が大きい
こうした不安を抱える方に寄り添い、
「何をしたいのか」「何に困っているのか」を丁寧に聞き取り、
最善の方法を一緒に考えること。
それが、これからの行政書士の使命です。
おわりに:生活者のためのデジタル化、そして行政書士の役割
法律は時代に合わせて変わります。
しかし、その変化の中心にあるのはいつも「人」です。
広域交付も、デジタル遺言も、共同親権も、
すべては生活者の負担を減らし、
人生の選択肢を広げるためのものです。
制度が変わるとき、
その変化をわかりやすく伝え、
必要な支援を必要な人に届けること。
それが、行政書士としての私の使命だと感じています。
本ブログでもデジタル化について触れているブログがあります。よければお読みください。
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