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3.302026
公証役場へ行かなくても遺言が作れる?「デジタル公正証書」で変わるこれからの終活

はじめに:法律が「生活者のための道具」に変わる時
前回の記事では、法律のデジタル化が「生活者の負担を減らすためのもの」であることをお伝えしました。その具体的な一歩として、今まさに大きな注目を集めているのが**「公正証書のデジタル化(リモート方式)」**です。
これまで、最も証拠力が高いとされる「公正証書遺言」を作るには、本人が公証役場へ行くか、公証人に自宅や病院へ来てもらう必要がありました。しかし、ビデオ通話などを通じて、役場へ行かずに公正証書を作成できる道が開かれようとしています。
今回は、この「デジタル公正証書」の仕組みと、私たちが受けるメリット、そして実務上の注意点を深掘りします。
第1章 デジタル公正証書の仕組み(オンライン作成の流れ)
デジタル公正証書とは、公証人と対面することなく、インターネットを通じて公正証書を作成する手続です。
ここが変わる!新旧手続の比較
ビデオ通話を使って公証人が本人の意思を確認し、電子署名を行うことで、法的な効力を持つ「電子の原本」が作成されます。
第2章 デジタル公正証書が「救い」になるのはどんな人?
この制度の改正により、これまで公正証書を諦めていた方々に新しい選択肢が生まれます。
身体的不自由や健康不安がある方 役場への移動が困難な高齢者や、外出が難しい病気療養中の方。住み慣れた場所で手続が可能です。
遠方に住んでいる方 最寄りの公証役場まで距離がある、あるいは海外や離島に住んでいる方。
多忙で時間の確保が難しい方 仕事などで平日の日中に役場へ行く時間が取れない現役世代。
ペーパーレス管理を希望する方 紙の紛失や劣化のリスクを避け、電子データ(PDF等)でスマートに保管・共有したい方。
第3章 リモート作成における「厳格な条件」
利便性が高まる一方で、日本公証人連合会のガイドラインには、正確な作成を担保するための極めて厳しいハードルが設けられています。
嘱託人(ご本人)に求められるIT環境
以下の条件を一つでも欠くと、リモート方式は利用できません。
機材: タッチパネル式のパソコンとタッチペンが必須です(スマホ不可)。
ソフト: Microsoft Teamsがインストールされ、即座にメール受信ができること。
環境: バーチャル背景不可の「個室」であり、カメラで室内全体を映して周囲に誰もいないことを証明できること。
時間制限と公証人の判断
リモート作成には予定時間が定められており、操作の遅れなどで時間内に終了できない場合は手続が打ち切られることもあります。また、最終的にリモート方式を認めるかどうかは公証人の判断に委ねられており、相当の理由がある場合に限られる点にも注意が必要です。
(出所、参考)日本公証人連合会HP、日本公証人連合会HPリモート方式に関する説明、法務省資料
第4章 行政書士が「操作のサポーター」として同席する意義
連合会の注意事項を読むと、ご本人がお一人ですべての操作をこなし、公証人の指示に応えるのは非常に難易度が高いことがわかります。そこで重要になるのが、「証人」として同席する行政書士によるサポートです。
● 行政書士による操作補助
実務上、欠格事由のない証人(行政書士)が嘱託人と同じ部屋にいて、パソコン操作をサポートすることは可能です。
操作の橋渡し: Teamsの操作やカメラワーク、メール受信などを行政書士が補助します。
本人の意思に基づいた進行: あくまで操作の補助であり、遺言の内容についてはご本人の意思に基づいて進むよう、中立な立場で立ち会います。
● これからの行政書士に求められる「技量」
これからの行政書士には、法律の知識だけでなく、こうしたデジタル手続を円滑に進めるための技量が不可欠です。 慣れない機材に緊張されるご本人に寄り添い、公証人とのやり取りが止まらないよう環境を整える。それこそが、前回のブログで書いた「デジタル社会における新しい使命」の具体的な形です。
おわりに:専門家と共に踏み出すデジタル終活
デジタル公正証書は、終活のハードルを下げる素晴らしい道具です。しかし、大切なのは「どう作るか」ではなく、**「何を残し、どう家族を守るか」**です。
オンラインでの作成に不安を感じる方にこそ、私たちのようなデジタルに強い行政書士を頼っていただきたいと思います。利便性と安全性を両立し、確実な遺言を残すための新しい選択肢を、一緒に活用していきましょう。
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