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映画「お墓がない!」から1990年代のお墓の意識と2023年のお墓の意識の違いと永代使用料ついて考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ⑲】

映画「お墓がない!」から1990年代のお墓の意識と2023年のお墓の意識の違いと永代使用料ついて考えてみよう【話題の映画・ドラマ・アニメから考えるブログ⑲】

 

  • 「お墓がない!」の映画概要とあらすじについて
  • 1997年作成の映画の中で、お墓はどのように描かれているでしょうか
  • 2023年のお墓の意識について、プラネット<お墓参りに関する意識調査>からみてみよう
  • お墓の使用料「永代使用料」はお墓の所有権ではなく、お墓の使用権です

 

それぞれ一つずつみていきたいと思います。

 

 

「お墓がない!」の映画概要とあらすじについて

 

『お墓がない!』は、1998年2月7日公開の日本映画です。監督は原隆仁です。本作品では死や葬式といった社会派的題材も扱ったコメディ映画です。「お墓がない!」は、押しも押されもせぬ日本を代表する大女優、岩下志麻が主演。脇を固めるのは今も現役で活躍している、安達祐実、袴田吉彦、高橋ひとみ、橋爪功など実力派俳優です。

あらすじは、岩下志麻演じる大女優「杉咲節子」が主演映画の役作りのため、大学病院で検査を受け、勝手に自分の余命が半年だと思い込み、自分が亡くなるまでにお墓を購入することを決意し、袴田吉彦演じる、霊園会社の新入社員と共に、大女優にふさわしい自分のお墓探しに奮闘する映画です。歴史のある寺院、郊外の墓地、霊園、芝生墓地など様々な墓地を巡り、当初は「どうしても自分にふさわしい墓地が欲しい」と思っていた杉咲節子ですが、お墓や戒名に関する様々なしきたりやしがらみを知るうちに、お墓という形ではなく、送る人と送られる人との心が通い合うことだと、自分の信念や大事にしてきた考え方、思いに気づいていきます。お墓探しと並行して、劇中で、自ら娘の余命を見守る母親役を演じていますが、自らお墓探しをする中で、クライマックスのシーンをリアリティーのある杉咲節子が理解する死の形に昇華させ、と当初の脚本を変更して作品の中での母親役を演じ切ります。

映画の当時の評価はあまり高くはなかったようでしたが、世相を反映し、お墓に関する描写も多く勉強になります。また岩下志麻の映画女優の立ち振る舞いも圧倒的で、個人的には楽しめましたし、劇中の映画撮影のクライマックスの娘に向き合うシーンには感動しました。今から四半世紀以上前の映画ですが、死やお墓の本質に迫っていて、今の時代に観ても楽しめる映画です。

(出所)Wikipedia映画com

 

 

1997年作成の映画の中で、お墓はどのように描かれているでしょうか

 

本作品は1997年に作成されました。作中、お墓に対するコメントで、その時代を反映した会話がいくつかありますので、取り上げてみたいと思います。

「お墓がないなんて、惨めよね。」

「お墓がない人は、あの世でホームレスってことじゃない。」

「ご先祖様がいて、今の自分たちがいる。」

「いくらお金があっても、墓守をする家族や親族が居ない人には、お墓は売れない。」

「美空ひばりや、石原裕次郎は、お墓があるからみんなから忘れられないのよ。死ぬほどお墓が欲しい。」

「この嘘は絶対墓場まで持っていきます。」

今から四半世紀前ですが、今より、お墓イコール死後の家と考えられていたのかもしれません。

また杉咲節子がお墓の購入を意識するきっかけは、夏に怒涛のペースで進んでいた映画の撮影が、お墓参りのため、一日休みになったことがきっかけです。映画撮影よりお墓参りを優先する映画関係者の上記の言葉で、お墓参りが自分以外の人にとって、大事な年中行事として認識されていたことにショックを受け、一層お墓を購入したいと強く思うようになります。

 

 

2023年のお墓の意識について、プラネット<お墓参りに関する意識調査>からみてみよう

 

以前、ブログでも書きましたが、株式会社プラネットの2023年の調査で、お墓参りの予定のない人は、36%という結果がでました。またこの調査では、年代ごとでお墓参りに行く頻度が異なっており、30代から40代の現役世代で特にお墓参りに行く割合が下がっています。また墓じまいに関する質問でも、全体で22%、特に50代60代の女性の約3割が墓じまいを検討していることがわかりました。自身の両親の死を経験し、自分たちが墓守世代になり、遠方でお金も時間もかかるお墓参りを、自分の代で終わりにし、子世代に負担をかけたくないと思う人が増えてくるのでしょう。また自分の死後の遺骨の弔い方についても約半数が「特に希望なし」を選択しています。

「墓じまい」という言葉がここ10年で耳にするようになってきました。1997年にはあまり聞かなかった言葉です。映画の中でもお墓や戒名に関することで前例を踏襲しないと、「ばちあたり、たたられる」というやりとりがありました。死のケガレに対する畏怖の念が表れていたシーンだと思いました。墓じまいも四半世紀前であれば「ばちあたり、たたられる」という行為であったでしょう。しかし2024年現在、お墓は購入するものでもありますが、しまうものでもあるという認識です。

(出所)株式会社プラネット お墓参りに関する意識調査

 

お墓の使用料「永代使用料」はお墓の所有権ではなく、お墓の使用権です

 

映画の中で、お墓販売中の霊園会社の課長が、「住宅に賃借権があるように、お墓も、定期使用権にしてニーズがあるかどうか今回のツアー客の中でみてみたい。」というシーンがあります。現在無縁仏、無縁墓が社会問題化していますが、四半世紀前から、承継されず、無縁仏の予防策とし、お墓の回転率を速めたいという考え方が垣間見えたのも勉強になりました。

お墓の使用料の場合、「永代使用料」という言葉が割と一般的です。これはあくまでお墓の使用権であって所有権ではありません。民法の中でもお墓の「永代使用料」という言葉はありません。お墓の使用料については、厚生労働省の「墓地経営・管理の指針等について」というページの中で【墓地の使用権を「永代使用料」という形で徴収されることも多いようである】と述べている記述があります。

ただし、祭祀財産(お墓)は民法897条で、相続人と承継すべき人が規定されています。

 

(祭祀に関する権利の承継)

第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

(出所)G-GOV

 

以上、「お墓がない!」の考察と、当時と現在のお墓事情の違いについてみてきました。1997年当時と現在で一番大きく異なるのは、家族の形、少子化と高齢化という社会構造の変化でしょう。自分らしく生きることと、社会の一員としての終わり方が問われています。お墓が遺された人たちの心の拠り所であることも多いでしょう。家族親族を含めた丁寧な話し合いが最も大切ではないでしょうか。

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