ブログ
9.72023
【訪問介護220カ所休廃止】市町村の社会福祉協議会、5年で、~地域共生社会と介護サービスの全体像について考えてみよう【気になる記事ブログ20】
【訪問介護220カ所休廃止】市町村の社会福祉協議会、5年で、~地域共生社会と介護サービスの全体像について考えてみよう【気になる記事ブログ20】共同通信ニュース
- 記事の概要についてみてみよう
- 社会福祉法人と地域包括センターの関係とは
- 介護サービスの全体像をみてみよう
- 日本が目指す「地域共生社会」ってどんな社会なの
それぞれ一つずつみていきたいと思います。
記事の概要についてみてみよう
社会福祉法に基づき全市区町村にある社会福祉協議会(社協)で、運営する訪問介護事業所が過去5年間に少なくとも約220カ所、廃止や休止されたことが2日、共同通信の全国調査で分かった。5年間で約13%減り、現在は約1300カ所。都市部で一般の民間事業者との競合を理由に撤退するケースもあるが、多くはヘルパーの高齢化や人手不足、事業の収支悪化などが響いている。減少率が最も高いのは鳥取県で、53・3%。大分県が38・5%、千葉県が30・4%などと続いた(静岡新聞の記事よりそのまま一部抜粋)
社協は公的な性格を持っており、民間サービスとは異なります。そのため、公的な社協が訪問介護事業から撤退すると、サービスを受けられる高齢者が減る恐れもあります。地方では大都市圏と比べ一日に訪問できる件数も少ないため、効率的に事業が展開できないという悩みもあるようです。後ほど触れますが、「地域共生社会」の実現を掲げる理念と、実際の福祉の現状には残念ながら大きな開きがあるようです。
社会福祉法人と地域包括センターの関係とは
メディアやニュースなどで、「地域包括センターは介護の要」、「介護で困ったことがあれば、まずは地域包括センターに連絡」という、「介護で困ったら地域包括センターにまずは相談を!」というフレーズを聞いたことはありますか。
地域包括センターが地域社会の中で果たす役割は大きく、その地域包括センターは直営と委託で行われており、約8割が委託となっています。またその委託先の72%が社会福祉協議か及び、社会福祉法人となっています。地域包括センターと社会福祉協議会、社会福祉法人には密接な関係があります。しかし相違点もあり、地域包括センターは介護保険が根拠法律となっており、社会福祉協議会は社会福祉法が根拠法となっています。
※地域包括センターとは
市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、地域の住民を包括的に支援することを目的とする施設。(介護保険法第115条の46第1項)(引用)厚生労働省資料
※社会福祉協議会とは
社会福祉協議会は、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした営利を目的としない民間組織です。昭和26年(1951年)に制定された社会福祉事業法(現在の「社会福祉法」)に基づき、設置されています。
社会福祉協議会は、それぞれの都道府県、市区町村で、地域に暮らす皆様のほか、民生委員・児童委員、社会福祉施設・社会福祉法人等の社会福祉関係者、保健・医療・教育など関係機関の参加・協力のもと、地域の人びとが住み慣れたまちで安心して生活することのできる「福祉のまちづくり」の実現をめざしたさまざまな活動をおこなっています。(引用)全国社会福祉協議会
(出所)厚生労働省資料
介護サービスの全体像をみてみよう
介護保険サービスには主に2種類のサービスがあります
- 施設系・居宅系サービス
介護保険施設等の施設に入所し、サービスを受けます。
例)特別養護老人ホーム 、老人保健施設、認知症高齢者グループホーム
- 在宅系サービス
自宅にいながら、介護保険のサービス を受けることができます。
例)通所介護(デイサービス)、訪問介護(ホームヘルパー)、 訪問看護、 通所・訪問リハビリテーション、 訪問入浴 、福祉用具貸与 小規模多機能型居宅介護
<訪問介護(ホームヘルパー)の事業所数/利用者数>
事業所数:約33,000箇所 / 利用者数:約145万人
<特色>
訪問介護職員(ホームヘルパー)が利用者のお宅に訪問し、食事や着替えなどの身体介護、 あるいは調理、洗濯などの生活援助を行う。
今回ニュースとなっているのは、この在宅系サービスの中の訪問介護(ホームヘルパー)事業です。
厚生労働省の令和3年 介護サービス施設・事業所調査の概況の統計では、訪問介護サービス事業は35,612か所となっています。また訪問介護事業者の中で、社会福祉法人及び社会福祉協議会が運営する事業者の割合は合わせて15.7%です。令和3年度の社会福祉法人及び社会福祉協議会の訪問介護事業者はおよそ5600か所となるでしょう。事業者数が33000~35000か所と少し幅がありますが、およそ社会福祉協議会の運営する訪問介護サービス事業者数は全体の4%前後になるのではないかと予想されます。
(出所)厚生労働省の令和3年 介護サービス施設・事業所調査の概況
日本が目指す「地域共生社会」ってどんな社会なの
以前認知症基本法の記事でも少し触れましたが、地域共生社会とは「制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が 『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」と定義されています。平成29年2月7日 厚生労働省 「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部決定。
以前は家族や地域社会、職場が支えあいの機能を持っていました。家族の中、地域の中、職場で困っている人がいれば、誰かが気づいて互いに支えあうことが日常的にありました。私も小さい時は「子供会」のイベントで夏にはバスを貸し切ってテーマパークに遊びに行ったり、地域別ソフトボール大会、盆踊り大会、お祭りも頻繁に開催されていました。お正月は核家族の小さい単位で集まるより、祖父母を中心に伯父叔母従姉妹たちなど、親戚一同が集う一大イベントでした。職場ではボーリング大会やバーベキュー大会など、住所録が配られ、年賀状を出し合う文化もありました。平成を通してこのような文化はずいぶん様変わりしてきました。少子高齢化や単独世帯も増加し、家族・地域・職場の関係が希薄となり、以前家族・地域・職場が担ってきた役割を別の形で賄う必要がでてきました。それが地域共生社会です。医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築が必要とされています。
しかし、今回の社会福祉協議会の訪問介護事業撤退は、この地域共生社会の実現とは逆の動きではないかという論説もあります。
医療や介護現場での人手不足のニュースも最近よく目にします。生産年齢人口が減少する中、どうやって医療や介護の人材を確保するのか、難しい問題ではありますが、みんなで我が事、丸ごとで取り組めるよう、私自身も何かしら行動に移していきたいと思っています。
介護に関する記事はこちらにもあります。【介護職員 2040年度57万人不足】厚生労働省の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」から介護の現状を考えてみよう【データから考えてみよう㉔】良ければご覧ください。